動画配信能力が揃ったいま重要なのはコンテンツ:今週のデジタルサマリー

今週のトピックはNetflixがコミック出版社「ミラーワールド(Millarworld)」を5000万ドル〜1億ドル(報道ベース:約55億〜110億ドル)で買収したことだ。ミラーワールドは『キックアス(Kick-Ass)』などの人気シリーズで知られており、Netflixは今後ミラーワールドのコンテンツを動画化していくはずだ。

ミラーワールドの創業者が8年所属したマーブルコミック社からは各コミックのヒーローが集結する「アベンジャーズ」が生まれ、シリーズは全世界で莫大な興行収入を生んでいる。ヒーロー物は言語の壁がなく明快であり世界市場を狙えるコンテンツになるため投資をしやすい。ハリウッドスターに対して1作品あたり数十億円を投資するよりもヒーローは明快な効果を出しうるのだ。こうした背景から、その大元のコンテンツを生み出すコミック出版社はコンテンツ産業において極めて価値が高い。

Netflixのコンテンツ投資は今年60億ドル(約6600億円)に達するとCEOのリード・ヘイスティングス氏は語っている。Amazonの投資額も今年45億ドル(約5000億円)程度と予測されている。これらはNBC、FOXなどのテレビネットワークよりは少ないものの、無視できない大きさになっている。Netflixは映画製作時などで起きがちな制作スタジオの多層構造化を避けたコンテンツ制作を目指している。

chartoftheday_8908_video_content_budget_amazon_netflix_n2013〜2017年のコンテンツ制作の投資額の比較。投資を積み上げていくNetflixとAmazon Via Statista

今回の買収から分かるのは、Netflixが動画コンテンツの権利、制作、配信などのバリューをすべて囲い込もうとしていることだ。このモデルはユーザーベースが拡大すればするほど投資とリターンのバランスが向上し、収益性が増していくだろう。第2四半期のアーニングコールでは有料会員が1億人を突破しており、今後は米国外への拡大が焦点になりそうだ。

Facebookも今週Facebook内のビデオ番組「ウォッチ(Watch)」を米国で開始した。同社は米メジャーリーグや欧州サッカーの一部の試合の動画ストリーム権を取得するほか、BuzzFeedなどのFacebookと親和性の高いパブリッシャーと動画番組制作の収益分配などで合意したと報じられていた。

Facebook最高製品責任者(CPO)クリス・コックス氏への筆者のインタビュー(6月)では、同氏は「動画を制作した人は誰でも、Facebook上にビジネスモデルをもち、オーディエンスに対してプロダクトエクスペリエンスを表現できるようにしたい。人々はニュース、エンターテインメント、友人へのシェアとさまざまなソースからもたらされる情報を動画で得ることができるだろう」と語っていた。

各プラットフォームに動画配信能力が揃ったいま、重要なのはコンテンツ。本来コンテンツ制作を手がけないプレイヤーが参入している。

以下、その他の今週のトピック。

▼Alexa搭載デバイスの販売数1億台を超える

2014年に市場投入以降、Amazon Alexa搭載デバイスの総販売は1億台を超した。昨年末のGoogle Homeの参入以降、競争が激化するが、マーケットシェア7割を確保しているといわれる。

▼ヤフージャパンと三井住友フィナンシャルグループが業務提携

リリースによると、主にフィンテック関連のノウハウ共有、サービス開発、アプリ、データ分析を目的とした業務提携という。基幹系システムをAPIで外に開くなど金融機関のデジタルトランスフォーメーションには工程表が多い。

▼米企業のテクノロジー労働者面接、46%減

移民や多文化に寛容ではないトランプ政権の成立以降、2017年の第2四半期で前年度比46%減。移民でテック産業を活性化してきた米テクノロジー企業の人材獲得にプレッシャーか。

▼ソフトバンク、米オンラインアパレルに10億ドル出資か

ソフトバンクグループは、スポーツ用品のオンライン販売会社、米ファナティクスへの10億ドル(約1100億円)の出資で合意に近づいていると報じられている。

Written by 吉田拓史 / Takushi Yoshida