映画業界でインスタグラムの宣伝利用が流行の兆し:インスタグラマー活用がポイント

インスタグラム上で映画のプロモーションを行う業界のマーケターが急増している。

映画配給会社、ライオンズゲート(Lionsgate)の子会社であるコードブラックフィルム(Codeblack Films)は、2016年3月11日に公開したロマンティックコメディ映画『パーフェクトマッチ(The Perfect Match)』の宣伝のため、映画公開前に著名なインスタグラマーたちを出演させたゲーム番組を製作・配信した。映画同様に「パーフェクトマッチ」と題されたこのインスタグラム向けコンテンツ。複数の新婚カップルがベストカップルであることを競う、80年代に人気を博したテレビ番組「ニューリーウェド・ゲーム(The Newlywed Game)」を模して作られている。

この15秒の番組は、エピソードが合計で8つ。それぞれ、ドラヤ・ミシェル氏(フォロワー数450万人)リラ・メルサー氏(フォロワー数250万人)など、有名なインスタグラムのタレントたちを出演させている。

これらのエピソードは、各エピソードに出演した6人のインフルエンサーたちのアカウントから、映画公開前の3月5日の土曜日に投稿された。インスタグラムでは、すでに10万6000件以上のいいね!を獲得。また、コードブラックフィルムによると、3750万回以上のインプレッションも得たという。

汎用性のあるアカウントも運用

通常、映画製作会社は、公開する映画それぞれにソーシャルアカウントを作成し、数百万ドルもの費用を投じて宣伝を行う。「私にはそうする意味がわからない」と、コードブラック・エンターテインメント(Codeblack Entertainment)のCEO兼社長のジェフ・クラナガン氏は話す。ちなみに、コードブラック・エンターテインメントはアフリカ系アメリカ人市場をターゲットとしている映画製作会社だ。

「映画公開後には破棄してしまうアカウントに、製作会社は毎回多額の費用を投じている。しかし、我々が専念しているのはニッチな市場だ。そのため、汎用性のあるアカウントをインスタグラムやFacebookに作り、コミュニティを育てることが重要だと思っている」。

クラナガン氏は、「コードブラック・ライフ(Codeblack Life)」(フォロワー数150万人)や「コードブラック・コメディー(Codeblack Comedy)」(フォロワー数360万人)など、Facebook上にも多くのアカウントを作っているだけでなく、200万人以上のフォロワーがいるインスタグラマーたちとのネットワークも構築している。

「我々には活発なオーディエンスがいるので、(宣伝するのに)ソーシャルアカウントの切り替えボタンを押すだけで良くなった」と、クラナガン氏はコメントした(余談だがクラナガン氏は、米コメディアンであるケビン・ハート氏のプロデュースも担っている。そのため、同氏のスタンダップコメディー「ケビン・ハート:説明させてくれ[Kevin Hart: Let Me Explain]」の舞台もコードブラックが支援しているのだ)。

投資効果の高いインスタグラム

このようなソーシャルを重視した手法は、コードブラックのようなレーベルにとって、特に重要な意味をもつ。大手映画制作企業とは違い、コードブラックの『パーフェクトマッチ』には大規模な宣伝予算がないためだ。その少ない予算のため、よりターゲットを絞ったマーケティング戦略の方が理にかなっている。

過去に実施したターゲットマーケティングで得たデータや気づきを用いた結果、ソーシャルプラットフォームなどで狙ったセグメントのオーディエンスへ的確にリーチできたこともある。2014年の夏に公開された映画『アディクテッド(Addicted)』もこの方法によって、公開週末だけで760万ドル(約8億6000万円)もの興行収入を稼いでいる。公開された劇場数は846軒だったにもかかわらずだ

しかし、インスタグラムを中核としたマーケティングキャンペーンは今回がはじめてだった。コンテンツの制作費は1万ドル(約113万円)以下だが、クラナガン氏は、マーケティング価値として、すでにそれ以上のものを獲得できたと考えている。

大手配給会社もインスタに注目

インスタグラムをマーケティング目的で利用しているのは、コードブラック・エンターテインメントだけではない。米映画制作配給会社パラマウント(Paramount)が製作した、ファッション業界を舞台とするコメディー映画『ズーランダー2(Zoolander 2)』の製作チームも、インスタグラムをさまざまな方法で活用している。

俳優でありコメディアンでもあるカイル・ムーニー氏が扮するドン・アタリというキャラクターは、実際のインスタグラムアカウントまで開設された。ファッションデザイナーの退屈な日常を垣間見せてくれるという。下の投稿は、ファッションブログ「マンリペラ(Man Repeller)」の創設者であるレアンドラ・メディーン氏と、インスタグラムのファッションパートナーシップ部門を統括するエヴァ・チェン氏、そしてムーニー氏が「インスタブランチ」している様子だ。

全体的に見ても、インフルエンサーたちを中心としたマーケティングキャンペーンのために、エンターテインメント業界のマーケターたちによるインスタグラム利用は増えている。インスタグラムやSnapchatなどのインフルエンサーに特化したエージェンシー、ザ・アンプリファイ(The Amplify)のCEO、ジャスティン・レズヴァニ氏によると、同社が2015年で契約した100以上の仕事のうち、半数以上が映画製作会社によるインスタグラムを使用したマーケティングだったという。

「YouTubeやFacebookで公開される映画の予告編の視聴回数は、映画製作企業にとってはとても重要なものだ。しかし、インフルエンサーだけに関していえば、インスタグラムがもっとも重要なプラットフォームだ」と、レズヴァニ氏。「YouTubeやFacebookでは、自分のチャンネルならば、いろいろなことができるが、インスタグラムはいまだに多くの企業にとって未開拓なままの部分が多い」。

しかし、クラナガン氏はインスタグラムを使ったマーケティング戦略を信じている。「このようなオリジナルコンテンツをこれからもたくさん製作していく」と、同氏は話す。「いま現在、我々が製作している映画においては、脚本家たちにインスタグラム用の前日譚を書くように要求している。我々が前進するうえで、インスタグラムは欠かせないものになる」と、最後にコメントした。

Sahil Patel(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image via Movieclips Trailers