AI / IoTに全力で注力する孫正義氏:今週のデジタルサマリー

今週は日本のデジタルビジネスのなかで群を抜いた存在感を示しているソフトバンクグループについて。同グループは新たに70億ドル(約7800億円)を調達するためカナダや中東の投資家と交渉しているとブルームバーグが報じた。

ソフトバンクはすでに10兆円規模の「ビジョンファンド」を設立。サウジアラビアの政府系ファンド、アブダビ首長国のムバダラ開発公社、Apple、クアルコム、フォックスコンなどから調達していて、ここに70億ドルを積み増す。ビジョンファンドはソフトバンクが運用し、20%の成果報酬と0.5〜1%の運用手数料を徴収すると言われ、プレイベートエクイティなどより報酬・手数料が少しだけ押さえられている。

孫正義氏は通信の次のビジネスを築こうとしており、AI / IoT領域への集中投資と推測される。

例えば、ソフトバンク本体が40億ドル(約4400億円)相当の株式を保有すると先週報道されたNVIDIAは、人工知能特化型チップの供給者として有力で、特に自動運転車に注力する自動車メーカーや医療機器企業が直近で大きな顧客になりそうだ。

ビジョンファンドから50億ドル(約5500億円)投資が5月中頃に確定した滴滴出行(Didi Chuxing)も将来的には自動運転を目指している。滴滴出行は特にウーバーが浸透していない新興国市場に狙いを定めているようだ。

昨年末ソフトバンク本体が10億ドル(約1100億円)出資した英衛星ベンチャー、ワンウェブは約700個の人工衛星を高度1400キロメートル以下の低軌道に打ち上げ、地球を包み込むように電波を飛ばし、地上のどこからでも高速インターネット接続を可能にするという、野心的なプロジェクトを進めている。

5月3週のデジタルサマリーで解説した通り、Googleは「いつでもどこでもAIの力を引き出せる」ことを目指している。それを可能にするTPUというAI特化型の半導体を自社開発しており、これがNVIDIAの最大のライバルである。

NVIDIAのジェンセン・フアンCEOがMITテックレビューに対し「ソフトウェアは世界を食べている。しかし、AIはソフトウェアを食べている」と語っているのが印象的だ。

「ソフトウェアは世界を食べている」は、2011年にネットバブルの寵児として著名な投資家であるマーク・アンドリーセン氏が語った、時代を象徴する言葉だったが、それから6年でそのソフトウェアが「AIに食べられる」という言葉が生まれた。AIというトレンドにより、経済活動そのものが激変する直前のタイミングを迎えている可能性がある。孫氏の半導体設計ARMの買収から開始されたAI / IoT領域への大投資がどうなるのか、とても興味深い。

以下、今週のほかのトピック。

▼アンドロイドの生みの親、新ハードウェアリリース

モバイルOSのアンドロイドの生みの親であるアンディ・ルービン氏はGoogleのスマートフォン「ピクセル」やGoogle Homeと競合するスマートフォン「The Essential」をリリースした。このプロジェクトにも孫正義氏はビジョンファンドで投資しようとしたが、Appleとの利益相反で破談になったとルービン氏は語っている。

▼アドバタイジングウィークアジアが東京で開催

アドバタイジングウィークアジア(AWA)は5月29〜6日1日の間、港区六本木で開催された。国内外の広告関係者が集まり、アジア太平洋地域(APAC)、日本市場の状況に関して意見を交換した。

▼WPPのMECとマクサス合併へ

広告ホールディングス世界1位のWPPは傘下エージェンシーのMECとマクサス(Maxus)を合併する見込み。WSJが報じた。MECはロレアル、ボーダフォンなど、マクサスはNBCユニバーサル、バークレイズなどのアカウントを扱う。

▼中国人はコンテンツにお金を払う傾向がある

ベンチャーキャピタルGGVのジェニー・リー氏は「中国では、PCであろうがモバイルであろうが、我々は余り広告モデルについて話さない」と語った。「広告型で大きな規模まで成長したスタートアップはとても少ない。検索ではバイドゥ(Baidu)がいるが、中国の大型ネット企業は消費者への課金でマネタイズし成長した」。

▼メディア消費時間の成長、全世界で鈍化、モバイル化も

リサーチ会社Zenithは、全世界の個人はメディア消費に対して2016年には1日平均456.1分(7時間36分12秒)を割いたが、2017年には1日平均455.8分(約7時間35分48秒)と微減すると予測した。今後は微増傾向が続きそうだ。モバイルとデスクトップの利用時間を比較すると、2014年にモバイルがデスクトップを超し、今後は70〜80%のレンジに向かうと予測される。

▼アドブロック利用率25%以上は加、独、印など

米ページフェアの「アドブロックレポート」によると、ネットユーザーにおけるアドブロックの利用率が25%を上回ったのは、カナダ、ドイツ、ポーランドなどの欧米諸国のほか、アジアからは通信が整備途上であり、ユーザーが通信料に敏感なインド、インドネシアが入った。

▼KPCB「インターネットトレンド2017」が337スライドに達する

年々長くなっている定番トレンド文書。「インターネット」という括り方が苦しいか。

Written by 吉田拓史
Photograph by Danny Choo(Flicker)