LINE LIVEが切り開く「動画コミュニケーション」:LINE執行役員、佐々木氏

デジタル動画流通の制約要因は毎月のデータ通信量の制限が利用者に課せられていることだ。しかも諸外国のようにリッチなWi-Fi環境はいまのところない。もし、この制約が解ければ、リッチなコンテンツによるコミュニケーションが拡大すると考えられている。

ライブ動画プラットフォーム「LINE LIVE」を担当するLINE執行役員・エンタテイメント事業部の佐々木大輔氏はDIGIDAY[日本版]の取材に応じ、通信環境の向上、データ通信量上限の緩和、Wi-Fiの普及などがデジタル動画をめぐる環境を良化すると語った。

LINEがライブ動画に着手したのは2014年2月。タレント・アーティストや企業の公式アカウントを通じてライブ映像を配信する機能「LINE LIVE CAST」を展開した。それを2015年12月にLINE LIVEに発展させた。LINEのプッシュ通知機能などを追い風に、サービス規模を拡大している。

2015年ごろから、米国でモバイルライブストリーミングがトレンドになった。Twitter傘下のPeriscope(ペリスコープ)などが先行したが、今春Facebookがライブ動画を開始し、Twitterは米国のキラーコンテンツであるアメフトのライブ動画配信をスタート。たくさんプレイヤーがひしめく競争領域になった。

ライブ動画の環境は整った

佐々木氏は「デバイスやネットワークなどの周辺環境が整ったのが最近。モバイルライブストリーミングが多くの人に広がる土壌ができ、さまざまなサービスがはじまった」と分析する。佐々木氏はスマホのプロセッサの処理速度は向上を続けていること、データ通信量上限に関しても、キャリアが20GB、30GBとよりデータ通信量の大きいプランを開始しようとしていることを指摘。5G(第5世代移動体通信)が東京オリンピックに向けて実現が目指されていることにも触れた。

「確かに通信量上限はモバイルで動画を配信・視聴することの壁にはなっているが、将来的にこれらは『速く、安く』と改善する見通しで、我々を含む事業者にとっては期待がもてる」。ネットワークのコストが安くなれば、人々がネット上で行うコミュニケーションや情報消費が拡大するだろう。

「ライブ動画はその場でエンコードして、アップロードする。動画のエンコードが一番マシンパワーを使う。昔の端末はそれができないか、できても電池をあっという間に消費するかだった。それができるようになったのが大きい」

動画の画質はきれいな方がユーザーの反応がいい。「画質がいいとコストが上がる。だから画質を落として通信量を落とした方がいいのか、というと、そうでもなく、いまは画質が良い方にいい反応を頂いているので、引き続きこの方向で進めていきたい」。米国では低画質の動画でもバイラルしたが、日本では異なるユーザーの嗜好性が出ているかもしれない。

誰でもライブ動画を配信できる

10代がTwitterを好むことからも分かるように、若年層には「いま」という瞬間を楽しむ、情報消費の傾向がある。LINE LIVEは当初有名人に限定していた配信者を今年8月に利用者にも開放。誰でもライブ動画を配信できるようになった。これによりLINE LIVEのライブ動画数は増え、視聴者は少数のものに偏らず、さまざまなコンテンツに散っているようだ。公式チャンネルと一般配信で再生数に差はつきにくく、人と人のあいだで動画がコミュニケーションツールとして機能しはじめていることが分かる。

line live

タテ型フォーマットでライブストリーミングを楽しむ若者たち

「さまざまなコンテンツとの出会い方がある。例えばテレビでは、つけっぱなしでなんとなく番組と出会う。YouTubeなどでは目的の動画を検索して出会う。FacebookやInstagramでは、共通の趣味の友達を通じて動画と出会う。でもLINE LIVEでは、アプリからプッシュ通知されたものをリアルタイムで見る。このため、配信者とともに体験・コミュニケーションするコンテンツを求めるようになる」

ヒッチハイクの旅をする酒井治美さんのライブ動画「酒井治美ヒッチハイク日本一周中!」が、テレビ風コンテンツを上回る人気を得ている。ライブストリーミングは人々のニーズがばらばらであることを証明している。マーケティングコミュニケション室、PRチームの平田稲穂氏は「人工的にスターを作り上げるのではなく、そういう人を見つけて、頑張れる環境をつくっていきたい」と語った。

ライブ動画のミッドロールは「熱い」

佐々木氏はLINE LIVEの広告展開については「まずプラットフォームを盛り上げて、ユーザー数、再生数を増やすことに集中する」と語った。「技術的な話をすると、アーカイブ動画にプレロール(視聴前動画広告)を入れるのと、ライブ動画にミッドロール(視聴中動画広告)を入れるのは、似ているようでかなり違う。ライブ×ミッドロールという掛け合わせをしているところはあまりない」。

LINE執行役員・エンタテイメント事業部の佐々木大輔氏

ライブ動画への広告挿入はホットな分野だという。「ライブ×ミッドロールだと、アーカイブ動画の広告のようにスキップできない。しかも、ユーザーはコメントなどのリアクションをしながら広告ごと楽しんで視聴できる。これを運用型広告で利用できるというのは、これまでになかった広告商品になるだろう。FacebookやAbema TVなどのプレイヤーがトライしている。広告代理店含め皆がホットだと考えているはずだ」と語った。

「基本的に動画広告にはクリックして飛んでもらいたいという意図もあるだろう。しかし、集中して観ている人がほかに移ることは考えづらいため、純粋にブランドリフトを目的とした広告になるだろう。LINE LIVEは広告挿入について技術的な部分はクリアできるが、ユーザーがどう反応するかが未知数だ」。LINEは広告配信プラットフォーム「LINE Ads Platform」を6月に本格運用を開始しており、現在はLINEタイムラインとLINE NEWSの広告在庫を扱っている。

※【吉田・訂正】文中、佐々木氏のコメントで「インフィード」としたのを「インストリーム」に訂正します。誠に失礼しました。

Written by 吉田拓史
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