インスタグラム共同ファウンダー、「通知」の乱用に懸念

インスタグラムの共同ファウンダー兼CEOを務めるケビン・シストロム氏が10月12日、ハーストデジタルメディア(Hearst Digital Media)のプレジデントを務めるトロイ・ヤング氏をハースト・タワーに訪れ、ロシアによる政治広告やシリコンバレーにおける男性優位、パブリッシャーの成功にソーシャルメディアが果たす役割など、さまざまなテーマについて語った。ディスカッションのハイライトを若干の編集を加えてご紹介する。

フォローモデルの選択について

「フォローモデルとフレンドモデルのどちらを選択するべきか、私たちは時間をかけて議論してきた。インスタグラムがフレンドモデルを用いていたなら、私たちは今日、こうしてここに座ってはいなかっただろう。フォローモデルは、創造力の幅を劇的に広げた。いまはそれが明白だが、かつては大いに議論の的になったものだ。果たしてユーザー同士の写真共有をできるようにするべきかどうか。かつてFlickr(フリッカー)やFacebookにはプライベートモードしかなく、写真の共有もできなかった。世界ではじめて、ユーザーが写真を広く公開できるようにしたのがインスタグラムだ。したがってインスタグラムはフォローモデルだと言ってもいいと思うが、ユーザーがフレンドモデルに切り替えるためのオプションも必要だ。このオプションがあるからこそ、私たちは成功できた。現在、アカウントの40~50%はプライベートモードで利用している。インスタグラムはメディアだが、個々のユーザーのフィーリングもおろそかにしたくない」。

シリコンバレーにおける男性優位

「インスタグラムがその種の問題を抱えていないと言ったらウソになる。どこにでもある問題だ。セクハラ、男女間の報酬格差、同僚へのいやがらせ、あらゆるところにそうした問題が存在する。とはいえインスタグラムでは、より寛容な企業文化、違いを受け入れる文化を作り上げようと努めてきたつもりだ。スタッフは全員、先入観や偏見を捨てるためのバイアストレーニングを受けるし、何かあったときには各種のサポートグループに参加できる。だから、社内には開放的な文化が醸成されていると思う。競争主義や上昇志向の人間が、他者に優しくするのは非常に難しい」。

ソーシャルメディアが社会に及ぼす影響について

「企業がひとつの指標のみでビジネスの最適化をめざせば、必ず悪い方向に進むことになる。たとえば利益の最大化がそうだ。あるいは海外市場での成功を追い求め、賄賂をよしとする会社がそうだ。ソーシャルメディア業界でいえば、好ましくないコンテンツでエンゲージメントを狙う会社がそうだ。そのようなソーシャルメディアは、本来ならばユーザーが持っていてしかるべき選択肢を与えないことで、ビジネスを最適化し、株価を上げようとする」。

通知の多用について

「通知は乱用につながる危険性がある。自社製品の利用を促すために通知を多用した場合に、本来のユーザー層ではない人たち、たとえば子どもなどが、誤った使い方をしてしまう恐れがある。とはいえインスタグラムでは、通知をやり過ぎないという原則があるから心配はいらない。アプリのアイコンにはバッジの通知が付くが、やたらと数字が表示されると、うんざりするだろう? だからインスタグラムでは、ごく少数の例外を除いて、基本的にアイコンのバッジは未読のダイレクトメッセージの数だけにしている」。

ロシアからの干渉について

「アメリカ全体にとって、極めて大きな問題だ。私たちがひとつの国として団結することに、他国が干渉してくる。これは、単にソーシャルメディア業界の問題ではなく、テクノロジーとメディア全体にとっての問題だと思う。インスタグラムでも、ロシアの政治広告の一部を掲載する羽目になった。同じ広告プラットフォームを利用しているのが原因だ。幸いなのは、この問題に対応できる最高に優秀なスタッフが我が社にいることだろう。だからこの問題については楽観視しているよ」。

Snapchatの脅威について

「Snapchatが登場したとき、インスタグラムはすでに多くのモバイルユーザーをつかんでいた。だがSnapchatの登場を機に、ユーザーがフィードせずにコンテンツを共有する機能を求めていることがわかった。ユーザーのニーズに応えられていないことを、Snapchatが教えてくれた。自分たちよりも市場の成長ペースのほうが速ければ当然シェアを失うことになると、気づかせてくれたんだ。そこで、ユーザーが自由に判断してコンテンツが共有できるよう、ただしインスタ離れが起きないよう、問題解決に臨んだ。ひとつの賭けだったが、2つのゴールを同時に達成できたと思う」。

メディアブランドについて

「雑誌や新聞はこれからもなくならないだろうし、ジェフ・ベゾスも多額の投資を行ってワシントン・ポスト紙を救ったばかりだ。雑誌や新聞はなくてはならない。だが一方では、個人がプレイリストを作って世界に発信し、大勢の人とつながることができる、いわゆるキュレーションメディアにも力はあり、インスタグラムはいまのところそちらの方向性で進んでいる。どちらにも魅力はあるということだね」。

ソーシャルはメディアにどんな変化をもたらしているか?

「ソーシャルはいま、ストーリーテリングの新たなアプローチを編み出しつつある。業界にとっての最大の課題は、どんなビジネスモデルを選択するか。ストーリーを投稿するだけでは利益につながらないからだ。既存のメディアにとってもこれは大きな課題だと思う。新たな次元にシフトしたときに、どんなビジネスモデルを採用するべきか。インスタグラムやFacebookは、メディア企業が自分たちのエコシステムにとって極めて重要であることをちゃんとわかっているし、メディア企業にもともに繁栄してほしいと願っているんだ」。

インスタで有名になるということ

「インスタグラムの有名人に会うのは実におもしろい。エージェンシーやブランドは彼らを利用して、インスタグラムでの認知度を高めるための家内工業を作り上げてしまった。インスタグラムを開発した当の私たちでさえ知らないような複雑なところまで理解しているのだから、彼らには驚かされるね」。

Lucia Moses(原文 / 訳:SI Japan)