メディアとの関係強化に励む、Facebook特命チームの実情

Facebookは6月、ニューヨークのオフィスに数十社のパブリッシャーを集め、花形政治記者であるデイビッド・ファーレンソールド氏との質疑応答の会を開催した。出席者はカクテルをすすり、カナッペをつまんだ。Facebookはこのところこうしたイベントを積極的に開いており、そこには「大切にしていますよ」というメッセージが込められている。

しかし、この人気取り作戦は部屋にいた全員を満足させたわけではない。あるパブリッシャー幹部は、「これはセミナーだ。やってくるジャーナリストたちに責任について話をさせている。我々には安全な環境があるというわけだ」と語った。

ユーザーが20億人を突破したと発表したFacebookは、世界中のメディア消費において先例のない役割を担っている。うなぎ上りの広告ビジネス、絶えず変化するアルゴリズム、プロパガンダ拡散で果たした議論の的となった役割、パブリッシャーとの収益分配の取り組みの不足などによって、多くのパブリッシャーにとってFacebookはかなり不快な存在になった。これに対しFacebookは、フェイクニュースの拡散に憤り、マネタイズが限定されていることに不満を募らせているパブリッシャーたちとの関係改善を模索している。その取り組みの多くを担当するのは、2010年に結成されたメディアパートナーシップチームだ。いまではこのチームが、メディア界と対峙する最前線の使者になっている。

Facebookは1月、NBCニュース(NBC News)のアンカーだったキャンベル・ブラウン氏を採用し、ニュースパートナーシップ責任者に就けた。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)、CNN、Business Insiderといったパブリッシャーと協力する、メディアパートナーシップチームでももっとも注目を浴びる部分だ。Facebookのチームのなかでニュースパブリッシャーともっとも密接に連絡を取り合うのがブラウン氏のチームであり、ブラウン氏の役目はニュースパブリッシャーたちとの関係を円滑にすることだった。ブラウン氏が加わった1週後、Facebookは製品とパートナーシップのさらなる一体化を目指した「Facebook ジャーナリズムプロジェクト」を発表。ほかに、プロジェクト円卓会議、作業グループ、トレーニングセッションなどを開催し、また、地方のニュースパブリッシャーへの対応を拡大した

「Facebookは、我々にお世辞を言うのにふさわしい人を雇っている」と、この人気取り作戦を悪く言う声がある一方で、改善が進んでいると見るパブリッシャーもいる。Facebookと直接の取引があるパブリッシャー幹部らの話によると、GoogleやApple Newsをはじめとするほかのプラットフォームのほうがもっと協力的で、Facebookは長いあいだ、パブリッシャーとは距離を取ってきた。Facebookのパートナーシップチームの役割は、実はFacebookの目標を推し進めることでしかないというのがパブリッシャーたちの見方だ。Facebookの新しい構想はニュース報道ではじめて知ることが多い(しかも、競合相手が採用されていて泣きっ面に蜂ということもある)のだと、パブリッシャー幹部らはこぼす。もちろん、これはユーザーが20億人を突破したFacebookならではの特権だ。

「このグループをパートナーシップグループと呼ぶこと自体が冗談だろう」と、ある大手パブリッシャーの幹部は言う。「完全な誤称だ。うちはYouTube、Google、Amazonとは本当に有意義な話をしている。こうした会社が民主的だとすれば、Facebookは高圧的な社会主義体制だ。並外れて革新的な企業にしては、信じられないほどの窮屈さだ」。

Facebookの複雑さ

こうした不満の一部は、パブリッシャー業界のエコシステムにおけるFacebookの役割の変化に由来している。Facebookがメディアパートナーシップチームを創設した7年前は、Facebookがもっとも重要な参照トラフィック元になろうとしているところで、Facebookへのアクセスはパブリッシャーにとって必要不可欠な道だった。Facebookのパートナーシップチームは、ニューヨーク・タイムズの元ジャーナリストでニューズウィーク(Newsweek)のバイスプレジデントも務めたニック・グルディン氏に率いられ、パブリッシャーの言葉を話すパブリッシャー業界出身者でごった返していた。テクノロジー企業であるFacebookとパブリッシャーとの急速に深まる関係を管理するには、それが不可欠だった。

一部のパブリッシャーはパートナーシップチームについて、絶大な力を有するFacebookの製品チームと自分たちとのあいだを取り持つ窓口だと見ていた。しかしパブリッシャーは、ニュースフィードで求められる内容についてアドバイスを得るのにも、パートナーシップチームの担当者を利用した。多くのパブリッシャーがこれを活用して大量のトラフィックを獲得した。

いまでは、それが様変わりした。パートナーシップチームの担当者がパブリッシャーにとってFacebookと連絡をする際の最初の接点である点は変わっていない。しかし、参照トラフィックはもはや最終目標ではなくなり、パートナーシップチームはいま、ひどく複雑化したFacebookという環境の一部だ。

パブリッシャーは自信を強め、広告とサブスクリプションを通じて、Facebookに出しているコンテンツのマネタイズをもっと支援するようFacebookに求めている。選挙期間中にフェイクニュースが蔓延したことで、Facebookは厳しい見方にさらされ、ニュースパブリッシャーは、Facebookにとって自分たちが有する価値への確信を強めたのだ。

あるパブリッシャー幹部はパートナーシップチームについて、「彼らの仕事は、2年前よりはるかに難しくなっている」と語った。

パブリッシャーの「支援者」

ブラウン氏はあるインタビューで、一貫してFacebookは報道機関ではないという公式見解を変えなかった。しかし、Facebookはニュースのエコシステムの重要な一部で、したがって、質の高いジャーナリズムを支える責任があり、パブリッシャーと製品チームのコラボレーションが不可欠だとも語った。

パブリッシャーのあいだには長年、パートナーシップチームは製品に対する発言権がなく、力が限られているとの見方がある。Facebook ジャーナリズムプロジェクトとは、要するに、Facebookの製品チームが以前から独自の世界のなかで動いており、製品の設計や公開にあたってパブリッシャーの意見を取り入れてこなかったことを認めたものだった。グルディン氏の指揮下にあるブラウン氏は、製品チームと定期的に話をしており、製品チームがパブリッシャーにとっての重要性に基づいて取り組みの優先順位を決めるのを手伝うのが自分の役割だと考えている。ブラウン氏は、チームのパートナーマネージャーを2人増やし、全部で6人にした(ニュースとメディアのパートナーシップチーム全体の規模については、Facebookは明かさなかった)。また、円卓会議と作業グループの会議によって、データツールであるクラウドタングル(CrowdTangle)へのアクセス拡大や、クリックベイトの削減を目指したニュースフィードのアップデートなど、パブリッシャーの利益になる具体的な変化がすでに生まれているとFacebookは主張した。

「Facebook ジャーナリズムプロジェクトの目標は、Facebookの製品チームをパブリッシャーとさらに連携させ、もっとうまく物事を運べるようにすることだ」とブラウン氏は語った。「パブリッシャーの支援者になるのが自分の役目だと認識している。いちばん難しいのは、万能のソリューションがない点だろう。多様性に富んだエコシステムだ。ストーリーの語り方は本当にさまざまある。マネタイズの方法はパブリッシャーごとに異なる」。

しかし、パブリッシャーにとって報道する価値のある動きは、パートナーシップの外で起きている。以前、Facebookがライブ動画を強力に推進したとき、先頭に立ったのは、Facebookのキングとして広く知られる、製品担当バイスプレジデントのフィジー・シモ氏だった。ニュース製品の初代責任者のアレックス・ハーディマン氏は、ブラウン氏と協力はしているが、シモ氏の指揮下にある。パートナーシップチームに所属しているのは、Facebookのグローバルクリエイティブ戦略の責任者、リッキー・バン・ビーン氏らだ。同氏は現在、最近の最大の構想であるオリジナル動画番組に、パブリッシャーから協力を引き出そうと取り組んでいる。

協力体制の拡充

協力体制の改善について、一部のパブリッシャーはFacebookを評価している。まず、パートナーシップチームの拡充により、スポーツ、ニュース、ライフスタイルといった話題ごとに担当者が付き、パブリッシャーは深い会話ができるようになった。また、製品チームと連絡を取り合うことが増えているという声もある。

「かつてはひとりの担当者がたくさんのブランドを担当していた」と言うのは、アトランティック(The Atlantic)でデジタル担当シニアバイスプレジデントとビジネス開発の責任者を務めるキム・ロー氏だ。以前はFacebookに批判的だった同氏は、「いま、うちについている人は担当する(パブリッシャーの)数が減っているみたいだし、そのほかにもサポートしてくれる人がいる。この半年は、これまでよりもたくさんFacebookの人と話をしている。パブリッシャーにもっと役立てるように、連絡を取りやすくしてくれているようだ」と語った。

Business Insiderも、Facebookの製品開発にあたり意見を求められたり、ミッドロール動画広告のテストに参加したりと、Facebookとの関係は強まったと語る。「オーディエンスの体験を損なわない動画のマネタイズ方法を中心に、Facebookの製品開発にあたって、何がうまくいって何がうまくいかないのか、我々は協力して探っている」と、Business Insiderのビジネス開発担当シニアバイスプレジデントを務めるリッチ・ケネディ氏は述べている。

しかし、ほかのパブリッシャーにとって、こうした協力は規模が小さすぎ、遅すぎるのかもしれない。Facebookの主な構想のひとつ「インスタント記事」は、ニューヨーク・タイムズ、ハースト(Hearst)、それにガーディアン(Guardian)が撤退するという打撃を受け、ほかにも見直しを進めているところがある。Facebookの動画シリーズへの取り組みや、ミッドロール動画広告がパブリッシャーを救う可能性に関しては、懐疑的な意見がある。Facebookによるさまざまなジャーナリズム構想や、製品チームの大物たちとのカクテルパーティは、金銭的なメリットを欲しがるパブリッシャーには虚しく響いているかもしれない。パブリッシャーたちが自社の体験から学んだように、エンジニアとパブリッシャーの人間とでは話す言葉が異なるため、Facebookの文化を変えるといっても、一朝一夕には実現しないだろう。

こうした問題の一部はFacebookの構造に帰着するとパブリッシャー側は指摘する。Facebookは組織が縦割りで、いろいろなことに答えを得るためにはグループからグループへと渡り歩くことになるのだ。

別のパブリッシャー幹部は、「GoogleやYouTubeほど順調にいかない。案内ができるような単一の窓口がない点が大変かもしれない」と語った。こうした不満のなかには、ブラウン氏とハーディマン氏が加わったことによるFacebookのニュースチームのスタッフの増加と、パートナーシップチームの戦略パートナーマネージャーが4人から6人に増えたことに起因するものもあるようだ。

「Facebookにとっては大きな賭けだ」と語ったのは、メディア幹部を歴任し、現在はメディア企業のコンサルタントを務めるビビアン・シラー氏だ。「Facebookで公開するものの規模を縮小することについて、パブリッシャーから話を聞くことが増えている感じがする。これと、規模重視の考え方に対する失望とがセットで進んでいる。これはFacebookにとっては大きなリスクだ」。

Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)