デジタルは、結局「テレビ業界」を殺さない。その生き残る理由を示す、5つのグラフ

2015年8月、ウォール街にて大手メディア企業の株が下落して以来、テレビの終わりが近いとウワサされている。しかし、テレビ業界が大規模な変革を遂げようとしているなか、世間がウワサするように、現実にテレビ業界が無くなることはないだろう。

事実、オンラインビデオにおいてテレビは、重要な役目を担い始めている。米有料テレビ放送局HBOが、新しい事業としてストリーミングアプリをローンチした後、多くの放送局やスタジオが同様のアプリを開発。また、老舗である大手メディア企業のNBCユニバーサルやハーストも、ビデオ事業も手掛ける新興デジタルメディア企業のBuzzFeed、Vox Media、Complexなどに投資をはじめた。有料テレビのプロバイダーであるディッシュやコムキャスト、ベライゾンなども、昔ながらの設置機器を使用しない、デジタル動画を提供する実験を行っている。

テレビは生き残る。よりデジタル化しているだけなのだ。そんな未来を予感させる、5つのグラフを見ていこう。

人々のテレビ視聴行動は、よりデジタル化している

一番最初に、少々ショッキングな数字について言及しよう。2015年の第2四半期にて、有料テレビビジネスは約56万6000人の登録者を失った。これは2014年の第2四半期の32万1000人と比べると76.3%の増加を示す。有料テレビにとって、第2四半期の結果は毎年悪いとされているが、50万人以上の解約者が出たとなれば、誰でも背筋が凍るだろう。

有料テレビの登録者数 VS. Netflix, Amazon, Huluの登録者数
TV-Digital-5-Charts-1青:有料テレビ/赤:Netflix、Amazon、Hulu

しかし、56万6000人という数字は、現存する1億人のユーザー数を考えれば、わずか1/200を占めるにすぎない。また、ウォール街のPacific Crest社によると、NetflixやAmazon、Huluといったストリーミングプロバイダーたちが、2013年以降の年平均成長率を30%と、順調に登録者を増やしていると発表している。彼らが提供する多くのコンテンツは、テレビ番組であるのを考えると、少し楽観的になれるかもしれない。

視聴者はどんなスクリーンにおいても長編動画を好む

従来の考え方では、スマートフォンは短めの動画を視聴するのに使用し、長編動画はテレビで視聴するものと考えられていた。しかし、動画配信プラットフォーム事業を展開するウーヤラ(Ooyala)が発見した新たな情報によると、この分かれ目はあまり明確ではないという。

各デバイスによる長編動画の視聴状況(2015)
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同社の2015年第2四半期における報告書「Global Video Index」によると、携帯電話で視聴されている動画の33%は、10分以上の動画だ。その割合は、タブレット端末になると、57%になる。これはOoyalaが「過去の四半期を比べてみても同様の結果となる」と述べた通り、信頼できる数字といえよう。

長編動画では収益化も行われている

米動画配信プラットフォームのフリーホイール(FreeWheel)の報告によると、2014年の第2四半期と比べて、2015年は広告の視聴率が32%上昇しているという。20分以上と定義される長編コンテンツや、スポーツイベントなどのライブコンテンツの増加が、この成長の主な起爆剤になった。

コンテンツの長さによってかわる広告視聴の成長率(2015)
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デジタルプラットフォームで視聴者が、より長い動画を見ることで、パブリッシャーにとって収益化が簡単になってきたことが分かる。そして、この現象は、従来のテレビ番組が、いままでとは異なる方法で配信されているにすぎないのだ。

やはりストリームの視聴者は、若い世代が中心

米マーケットリサーチ会社ミルワードブラウンデジタル(Milward Brown Digital)の研究結果によると、Netflixユーザーの51%は、ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭に生まれた若年層)だという。次にジェネレーションX世代(日本の団塊ジュニア世代)が34%となり、ベビーブーマー世代(日本の団塊の世代)が残りの15%となる。ケーブルテレビの視聴者の35%がミレニアル世代、40%がジェネレーションX世代、25%がベビーブーマー世代であるのを比べれば、世代ごとによるギャップは判断しやすいだろう。

世代間で異なる有料テレビとストリーム動画の試聴率の割合(2015)
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また人々は年配になるにつれ、複数のプラットフォームでテレビコンテンツを視聴することが、当たり前になっていくようだ。これにより、ケーブルテレビはより積極的にデジタル配信を行っていかなくてはならなくなるはずだ。

これらを踏まえた上で、テレビ業界は消滅しない

先述のミルワードブラウンデジタルの調査によると、2015年の上半期においてケーブルテレビの登録者のうち、NetflixやAmazon、Huluなどのストリーミングサービスにも登録しているのは、22%ほどにしかならなかった。

有料テレビ視聴者がストリーミングサービスにも登録している割合(2015)
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これまでのチャートを見る限り、テレビが完全にデジタルへ移行するまでには、少しばかり猶予がありそうだ。また、たとえデジタル化したとしても、現在のテレビコンテンツに大きな変化をもたらされることもないだろう。

Sahil Patel(原文 / 訳:小嶋太一郎)
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