Googleが分析ツール一新へ:DMPから広告配信まで自社プラットフォーム直通

Googleは2016年3月16日、企業向け総合分析ツール「Googleアナリティクス360(さんろくまる)スイート」(以下:アナリティクス360)を発表した。現行のGoogleアナリティクスを拡張したアナリティクス360は、オラクル、Adobe、セールスフォースなどが競争する、B2Bの「マーケティングクラウド」領域に重なる部分がある。

このツール起点でマーケティング施策を検討する場合、Google内で完結する可能性がある。アナリティクス360が提供するDMPを起点とし、最大の自動広告配信網であるDoubleClick(ダブルクリック)、アドワーズを通じ、検索、YouTube、Gmailなどのユーザー10億人超えのプラットフォーム群などの掲出先を確保。下流のデバイスであるアンドロイド(出荷ベースで世界シェア8割超)まで「自前」で構成された極めて長い「サプライチェーン」を築いている。他社の場合は外部のデジタル広告配信網を提供する場合がほとんどだ。

Google Analytics公式ブログによると、アナリティクス360には以下の5つの機能が組み込まれている。

Google オーディエンス センター 360(ベータ版): マーケティング担当者のためのデータ管理プラットフォームです。既存顧客への理解を深め、各チャネル、デバイス、キャンペーンで類似のユーザーを呼び込むのに役立ちます。DoubleClick とのネイティブ統合により、Google 独自のデータに加え、サードパーティのデータ プロバイダやデマンドサイド プラットフォームなどの利用も可能です。

 

Google オプティマイズ 360(ベータ版): テストやカスタム機能によって、ウェブサイトのユーザー エクスペリエンスを向上させるプロダクトです。数パターンのサイト設計を用意し、ユーザーごとに最もパフォーマンスのよかったパターンを表示することで、パーソナル化を図ります。

 

Google データスタジオ 360(ベータ版): データの視覚化による分析のサポートを行う新しいプロダクトです。アナリティクス 360 スイート内の全プロダクトをはじめ、さまざまなデータ ソースからのデータを、実用的なレポートにまとめます。読みやすく、簡単に共有でき、カスタマイズの自由度が高いレポートにより、すばやく情報を把握できるようになります。

 

Google タグマネージャ 360:ウェブサイトやモバイルアプリの管理、運営の効率化を支援するタグ管理ツールをもとに設計されたプロダクトです。企業のマーケティング担当者の機動力と意思決定を支えます。手軽なデータ収集能力と API により、データの精度を高め、ワークフローを合理化することができます。

 

Google アナリティクス 360(旧 Google アナリティクス プレミアム): この先数ヶ月にわたって数種類の新機能をリリース予定です(詳細は近日公開)。引き続きデータ測定の要となるこのプロダクトは、あらゆるタッチポイントにおける顧客データを分析するとともに、Google の各広告プロダクトとの統合によってマーケティングの効果を高めます。

 

Google アトリビューション 360(旧 Adometry): 一(いち)から再構築されたスイート版です。さまざまなマーケティング活動が生み出した価値を明らかにし、根拠に基づく予算配分をサポートします。チャネル、デバイス、システムをまたいで成果を分析できるため、最も効果的なマーケティング ミックスを導き出すことができます。

アナリティクス360のベータ版は本日から利用可能。DMP基点で構築されたデータアナリシスが、マーケティング施策・インフラのGoogle アドワーズとダブルクリックまでつながる。

マルチスクリーンのジャーニーを捉える

Googleアナリティクス、ディスプレイ、ビデオプロダクト担当バイスプレジデント、ポール・マレット氏は「ビジネスインサイダー」の取材に対し、こう語っている。

  • デスクトップ時代には、大半のマーケターは技術を習得することが容易だった。技術とは基本的なセッションのトラッキングとコンバージョンへの簡単な道のりに注目することだ。
  • しかし、モバイルがすべてを変えた。オンライン上のセッション当たりの滞在時間が短くなる一方で、訪問回数が増加している。モバイルでのサイト訪問を測定すること、その測定結果と販売やブランドリフトなどの指標をリンクさせることは難しい。少なくともほとんどのユーザーがモバイルで最終的な購買をせず、多数のさまざまなタッチポイントがカスタマージャーニーの完璧な可視化をさまたげている。
  • デジタルマーケティングでフラクショナルアトリビューション(ラストクリックだけでなく、さまざまな接触点を評価し、資源配分を最適化する手法)が採用されている時代には、『マルチスクリーンの世界』に対応されて構築された測定プラットフォームが必要になっている。

Google提供のDMPを利用した顧客は異なるデータをまたいで、オーディエンスの成り立ちを理解できることを評価したという。ダブルクリックやアドワーズの競合であるアドテクベンダーやテレビ視聴データも、プラグインできるようになるようだ。

GA_suite_overviewpng_2Google Analytics 360 Suiteのダッシュボード(via Google Analytics Blog)

「マーケティングクラウド」のようなB2Bビジネスには、コンサルティングがセットになるケースが多い。デジタルに強いコンサル企業がそれを引き受ける場合が多いが、ベンダー自体がコンサルタントを抱え、フルサービスを目指すのがトレンド。Googleはこれまでインターネット証券会社のように、ツールとインフラを渡しコンサルティング部分は引き受けない業態だったが、今後どのような事業展開をするだろうか。

Googleは2015年夏にダブルクリックアドエクスチェンジでのサードパーティによるYouTube広告のバイイングを不可にしており、今回のアナリティクス360が包括的に多機能を取り込んでいる点からも、自社プラットフォーム内に囲い込まれたビジネスモデルが漂う。

Written by 吉田拓史