Netflixの「データ活用術」。動画プロバイダーは、いかに生き残るべきか?

このコラムの著者アラン・ウォーク氏は、コンサル企業ブレイブベンチャーズ(BRaVe Ventures)のコンサルタントであり、『オーバーザトップ。いかにインターネットはテレビ業界を(遅まきながら確実に)変革しているか[原題:Over The Top. How The Internet Is (Slowly But Surely) Changing The Television Industry.]』の著者である。

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動画配信サービスのプロバイダーにとって、データの話は積極的にしたくないトピックかもしれない。特に根拠はないのだが、データで何かやらなければと思っても、どうすれば良いかわからないと思う担当者は少なくないはずだ。

これは死活問題といえるだろう。この埋もれているデータを活用すれば、オーディエンスの獲得につながり、データプログラミングにも活かすことができる。さらに、効果的な広告キャンペーンを制作することもできるのだ。

たとえば、無数にある動画コンテンツと、数多く存在する競合のなかで、視聴者に存在感を示すには、自社のコンテンツを知ってもらうことが最重要課題だ。しかし、うまく認知させることができても、おそらく視聴者は1つや2つのコンテンツしか知ることはなく、それも自社の代表作ではない可能性が高い。

コンテンツを分析する、Netflixのターゲティング広告

そんななか、Netflixはデータの使用において高いハードルを設置している。この基準によって、データ分析やトラッキングに巨額の資金を投入し、業界内での明確なリードを作っているのだ。その投資額は、1年間で約1億5000万ドルにも上ると言われている。

この事実において、もっとも重要なことは、Netflixがデータを上手く活用しているということだ。同社はデータをマーケティングに利用し、オーディエンスのさらなる増加を狙っている。

現在アメリカ国内のみで約5000万人の登録者がいるNetflix。視聴者が興味をもっている映画や番組をターゲティングし、そのデータで類似している映画・番組を提案できるのだ。

映画『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(原題:『Raiders of the Lost Ark』)が好きな視聴者は映画『愛と哀しみの果て』(原題:『Out of Africa』)も好きかもしれない。この2つの映画を合わせて提案することで、Netflixは顧客を増やし、ロイヤリティを高めた。

ユーザーの嗜好を分析し、新作コンテンツとして還元

一方、ドラマなどのオリジナルコンテンツ事業は、かなり高額な投資になる。そこで、Netflixは膨大なデータを利用して、リスクをできる限り排除した。ユーザーの反応が良い番組の種類を絞り、「いわゆるヒットしやすい、投資をすべき番組は何か?」を十分に検討し、新しいコンテンツの制作に当たったのだ。

ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(原題:『House of Cards』)が、その良い例だ。Netflixは政治的ドラマがヒットすると判断し、同作をオリジナルコンテンツの足がかりとしている。

パーソナライズで、個々のオススメを提示

Netflixがデータを利用する最後の分野は、サイトのパーソナライズだ。ユーザーが何を観たかを計測することによって、類似する番組や映画などをレコメンドすることができ、すべてのユーザーにユニークかつ極めてパーソナルなエクスペリエンスを届けている。

多くの場合、すでに触れたことがある番組や映画であっても、Netflixでそれらのコンテンツを観られることをユーザーは知らないことが多い。そんなとき、パーソナライズされたNetflixのサイトは、ユーザーの興味に合う新しいコンテンツを紹介してくれるのだ。これは、とても人気の高い機能で、ユーザーにはNetflixのコンテンツの幅広さを知る機会にもなっている。

いまや、オーバー・ザ・トップ(以下、OTT)と呼ばれるサイトを新たにローンチするのであれば、Netflixのスタンダードについていく覚悟が必要になる。もはや、どのユーザーも、Netflixレベルのパーソナライズを期待するからである。

新規参入が立ち向かうべき壁とは

しかし新規加入する企業は、1億5千万ドルもの大金をデータに投じることはできない。そこで解決策として登場するのがジニー(Jinni)などのサードパーティーベンダーだ。同社は、もともとレコメンドエンジン開発に特化した企業である。新規参入のOTTサイトに対して、同じ映画が好きなユーザーたちをペアリングすることで、サイトのパーソナライズを図るサービスを提供できる。

また、ジニーが保有するデータベースの情報を、データを十分に持っていないOTTサイトへ共有することもできる。これにより、プロバイダーは自身の保持するコンテンツの底深くから番組・映画を掘り出し、それに興味をもつであろうユーザーに直接レコメンドすることができるのだ。さらに、プロバイダーはこのレコメンド機能を広告キャンペーンの一環として活用することもできるという。

「パーソナライズを図ることとは、ユーザーを中心に立たせ、どんな映画や番組の組み合わせを好むのかを知ることだ」と、ジニーの最高経営責任者ヨシ・グリック氏は、話す。対して、「ターゲット広告は、映画や番組を中心にして、それらコンテンツを好むユーザーを知ることが課題だ。パーソナライズとターゲット広告は、お互いのミラー・イメージといえるだろう」と、述べた。

個別化がストリーミング動画の合い言葉となりつつある現在、データはより重要なものになっている。多くのOTT新規参入企業が大金をコンテンツの獲得に使用しているが、データによって裏付けされていなければ、その戦略は失敗に終わる。コンテンツプロバイダーがより深く、自身のデータベースを知ることにより、そのデータをコンテンツに活用することができ、より費用対効果の高いコンテンツへと繋げられるということなのだろう。

Alan Wolk(原文 / 訳:小嶋太一郎)
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