日本の10代向けテレビCMは「FIVE」が取って代わる?:大人不在のスマホアプリを囲い込み

生活者のメディア接触行動でモバイルの存在感は増している。特に仕事・学校を離れた私的な時間では、モバイルでのネット接続が主となり、アプリ利用がメインになっていると言われる。この傾向は「スマホネイティブ」と呼ばれる10代で顕著だろう。

広告主はテレビCMとデジタルをかけあわせた、クロスデバイス、クロスプラットフォームのキャンペーンを展開する。このとき、「大人とは異なる場所に生息する」スマホネイティブへのアプローチがネックだ。この条件で力を発揮するのが動画プラットフォームFIVE(ファイブ)だ。

10代・モバイル・アプリ・動画広告

10代、モバイル、アプリ、動画広告でデジタル上の認知を提供する、とFIVE代表取締役の菅野圭介氏はDIGIDAY[日本版]の取材に対し語った。「テレビCMは、ヘビーな視聴者に対しフリクエンシー(頻度)が過剰になる。ターゲット効率が悪い。届かない層(特に10〜20代)にはスマートフォンへのアプローチが必要だ」。

FIVEの在庫は10代中高生向けなどの若年層に注力している。「動画共有『MixChannel(ミックスチャンネル)』、学習共有SNS『Studyplus(スタディプラス)』、音楽投稿コミュニティの『nana(ナナ)』で400万UUのティーンユーザーにリーチできる。視聴後アンケートをとると広告認知は大きく上がる。1回のキャンペーンで全国の中高生の約50%へリーチすることも可能だ。10代の中高生にアプローチするということは、ブランドの次の消費者を育てることになる」。今年7月からはLINE元社長の森川亮氏が起業した女性向けタテ型動画メディア「C Channel」とも提携し、在庫が多様化する。

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「MixChannel」に掲出されたロッテの広瀬すずを起用した「Fitz」の動画広告

FIVEがリーチを提供するオーディエンスは特定の関心事をもち、アプリを使用する瞬間に価値を認めているという。「MixChannel」のようなアプリへのエンゲージメントの高さはすでに各メディアで取り上げられている。いいね数やコメント数が圧倒的に多く、ユーザーたちは自身で製作したコンテンツでコミュニケーションする。「モバイルウェブのサービスは、ソーシャル、キュレーション経由などの流入で純粋想起ではない。FIVEが動画を配信するアプリにはとても熱狂的な利用者がいる」。

「ケーブルテレビ」ごとに異なるモード・状況

「テレビやデスクトップとの違いは物理的に触っているということだ。スクロールで逃げられる。コンテンツを気に入らないと思うと、拒否することができるという部分がある。アプリを利用する心理は、テレビのケーブルチャンネルを選択するようなもの」と菅野氏は説明する。

菅野氏はFIVEの配信技術の強みとして、「レイテンシー(遅延)がない」と主張する。「FIVEの動画広告配信技術には競争上優位な面があり『国内唯一の読み込みゼロ秒テクノロジー』を提供している」。昨年からアドブロックユーザーの拡大が注目され、ユーザー体験毀損の一因としてモバイル動画広告は挙げられた。FIVEは配信先をモバイルアプリに絞っており、上述のテクノロジーにより、この課題に左右されないと菅野氏は説明する。

「動画広告はトラフィックを食うし、そのコストはユーザーが負うことになるので、動画広告のサイズは軽いと言える0.2メガバイト程度に押さえている。アウトストリーム型の動画はユーザー体験が悪いので長続きしないと感じた。3G環境でも遅延なく配信される。そういう工夫がしてある」。

3G移行期の海外でテスト

今後はプログラマティックな買い付けへ門戸を広める。今年1月には動画広告DSPのチューブモーグルと提携。「オープンRTB(リアルタイム入札)ではなく、プログラマティックダイレクトを志向している」。自社のプラットフォームをさまざまなバイヤーに開いていく。

海外展開への布石もあるようだ。「ゼロ秒テクノロジー」を活かし、通信環境が2Gから3Gへと移行する国で動画配信のテストをしている、という。このテクノロジーがあるため、ある程度通信環境が発展途上の国で遅延なく動画広告を配信できることに価値が生まれるからだ。「ただ、われわれはスタートアップで国内に力を入れていく」。

国内市場にはLINE、Twitterという10代に強いアプリがあり、FIVEの提供するテクノロジーを必要とせず、プロプリエタリ(自社で独占された)に構築している。Twitterは日本国内で自社広告プラットフォームを育てており、LINEも開始を発表したばかり。彼らの抱えるオーディエンスはかなり大きい。これに対し、FIVEの提供するモバイル、アプリ、10代と輪郭のはっきりしたユニークさがどこまで力を発揮するか。

菅野氏は「最近、モバイルアプリでも広告主が買い付けしたくなる『メディア』っぽいものがでてきた。特定のアプリはユーザーの熱量がとても高い。アプリの環境に合うブランドは効果を出せる」と語っている。

Written by 吉田拓史
Image from ぱくたそ