Facebookが勝敗を分けた、史上初の米大統領選挙:トランプ勝利を生んだ大きな欠点

従来型のメディアは、人々からの信頼を徐々に失い、オーディエンスと広告売上を減らしつつある。そのうえ、今回の米大統領選挙でトランプ氏の勝利を予測できなかったことから、記事の妥当性にも疑問を持たれるようになった。その一方、ソーシャルメディア、なかでもFacebookは、人々にニュースを届けるという点でかつてないほど大きな力を獲得している。

Facebookは今回の選挙において、オーディエンスを対象としたマイクロターゲティングが実施できる点で、政治活動に役立った。また、パブリッシャーのトラフィック供給源としての力が強まり、いまやその40%を占めるまでになっている

史上初となった選挙戦

「Facebookの影響を受けた、史上初の選挙戦が展開されていたと言ってもいいと思う」と語るのは、ネイティブ広告のプログラマティックプラットフォームを手がけるゼマンタ(Zemanta)の最高経営責任者(CEO)で、パブリッシャーに勤めた経験もあるトッド・サウィッキ氏だ。「ほとんどのニュースサイトがFacebook上で多くのトラフィックを獲得した、はじめての選挙だった」とサウィッキ氏は付け加えた。

Facebookがニュース配信プラットフォームとしての影響力を高めている原因のひとつは、社会運動だ。「ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter:警察による黒人の殺害に抗議する反差別運動)」や「アイスバケツチャレンジ」といった社会運動は、Facebookのおかげで広まった。だが、これには別の側面もある。

いまや人々の半数近くがFacebookでニュースを読んでいる。ところが、Facebookは自社をメディア企業とは考えていない。同社のビジネスの目標は、ユーザーが自社のプラットフォームで過ごす時間を少しでも長くすることであり、民主主義に貢献することではないのだ。しかも、ニュース配信プラットフォームとしてのFacebookには大きな欠点がある。

Facebookの大きな欠点

ユーザーの滞在時間を長くするため、ユーザーのフィードには、そのユーザーが賛同し、シェアしたくなるようなニュースが表示される。そのため、リベラルな人たちには保守的な記事が表示されなくなるし、その逆もしかりだ。リベラル派のジャーナリストが、トランプ氏の勢いに気づかなかった理由はここにある。先ごろ実施されたある調査では、(小規模かもしれないが)Facebookでフィルターバブル(アルゴリズムによる思想の偏向)が起こっていることが示された。実際、左寄りのパブリッシャーも右寄りのパブリッシャーも、この現象を自分たちの都合のいいように利用している。また、こうした「エコーチェンバー現象」が起こる可能性をよりいっそう高める出来事が夏にあった。Facebookが、パブリッシャーの投稿より友人や家族の投稿を優先すると発表したのだ。

その一方で、Facebookは、事実無根のニュースが掲載されるという問題に見舞われ続けている。この問題が特に拡大したのは、「トレンド(Trending)」セクションに表示されるニュースを管理していた人間の編集者を解雇してからだ(Twitterも責任を逃れることはできない。選挙期間中、Twitterの荒らし投稿は流れ放題だった)。

 

今回の選挙について家族と話をすれば、Facebookに流れるでたらめなニュースが、どれほど問題なのかがよくわかる。

 

ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグは、近代史上おそらくもっとも組織的に行われたヘイトスピーチやデマの拡散に気づきながら、それを許した。

 

ソーシャルメディアの台頭について広まっている話のひとつに、パブリッシャーは被害者だというものがある。Facebookは、自社のプラットフォームにユーザーを長く引き留めるために、パブリッシャーのコンテンツを必要としている。そこで、メディア企業に対し、Facebookに直接動画や記事を投稿するよう仕向けている。パブリッシャーは、Facebookのオーディエンスにリーチする必要があるため、協力せざるを得ない。その結果、パブリッシャーはオーディエンスに対するコントロールを失い、十分なマネタイズができなくなっているというのだ。

ぎこちない関係は解消されない

だが、パブリッシャーにもメリットがないわけではない。Facebookのルールに従い、Facebookが求めるコンテンツを提供することで、パブリッシャーもある程度の力を得ているのだ。ただし、Facebookの命令どおりにふるまうことが、ジャーナリズムにとって最適な結果をもたらすとは限らない。その典型的な例が、的外れに終わった選挙予測に関する記事だ。とはいえ、ソーシャルメディア的には、こうした記事が大きなメリットをもたらした。

ジャーナリズム研究機関のポインター・インスティテュート(Poynter Institute)で倫理学を教えるケリー・マクブライド氏は、次のように述べている。「ニュースパブリッシャーとともにコンテンツ戦略の仕事に取り組んでいるとき、すぐに作成できる選挙予測記事のほうが、長期的な展望を解説した記事より短期間で注目を集めることがわかった。ニュースパブリッシャーは、選挙予測記事がすぐに成果をもたらすことを経験し、そうした記事にますます多くのリソースをつぎ込むようになった。誰もがトラフィックを調べて成果の高いトラフィックを見つけ出す義務を負っているため、彼らはこうした記事を増やしている。それに、選挙予想記事はすばやく簡単に作成できるのだ」。

また、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)やCNNのように、Facebookの力をうまく活用できるパブリッシャーも少数だが存在する。彼らは、Facebookが新しい戦略をテストするときに最初に声をかけたパブリッシャーで、Facebookが今年の戦略の中心に位置づけているライブ動画を、Facebookからお金をもらって制作している。おかげで、トップ20のパブリッシャーは月々のトラフィック量が比較的安定しているが、平均的なパブリッシャーは、参照トラフィックの量が毎月74%も変動していると、パブリッシャー分析を手がけるチャートビート(Chartbeat)のジョン・サロフCEOは述べ、「このような変動があるため、トラフィックを増やす戦略を構築することは非常に難しい」と説明した。

だが、このぎこちない関係が改善されることは当面ないだろう。そしてわずか2年後には、中間選挙が行われる。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)