Facebook ミッドロール広告 、収益性は「小遣い程度」?:CPMはいまのところ数十円

Facebookがライブ動画やオンデマンド動画内にミッドロール広告を挿入するテストを開始してから6カ月。パブリッシャーには、わずかな収益にしかなっていないようだ。

米DIGIDAYでは、この記事の執筆にあたり6社のパブリッシャーにインタビューを行った。いずれのパブリッシャーも、Facebookで毎月何億もの動画再生数を記録している。3月に開始したFacebookのミッドロール広告テストに参加しているパブリッシャー5社は、期待していたような収益は上げられていないと口を揃えて言う。

予想外に低いCPM

1社は、Facebook上の動画の平均CPMは15セント(約19円)だったと明かした。また別のパブリッシャーは、広告が流れるまで視聴された再生回数に基づいて広告レートを算出したところ、ミッドロール広告の平均CPMは75セント(約84円)だったと語った。(Facebookのミッドロール広告は動画開始から20秒以降に流れるため、3秒で終わるような大半の視聴は「収益としてカウントされない」)。

さらに、3社目のパブリッシャーは、9月に合計2000万を超える動画再生回数を獲得した際には、約500ドル(約6万円)の利益があったという(同社では、動画の合計再生回数にミッドロール広告で収益になっていない動画も含まれているため、CPMを計算していない)。4番目のパブリッシャーは詳細こそ語らなかったが、収益は低かったことを認めた(ちなみに最後の1社は、Facebookミッドロール広告のCPMについて訊ねると、フロー・ライダー[Flo Rida]の曲『Low』の歌詞をテキストで送ってきた)。

「Facebook動画のCPMは文字通り小銭程度にしかならない」と、1社目のパブリッシャーは述べる。「広告が流れるまでの20秒間視聴されて、はじめて広告料金が支払われる。だが、もしFacebookが最初の3秒時点での再生数をカウントしていたら、大半の動画再生数はあてにはならない。ひとつの動画が100万回視聴されたとしたら、おそらくそのうち10万はミッドロール広告まで到達しているだろう」。

一方、Facebook側は、同社の広告表示に対するCPMは業界競争力のある金額と主張しているという。この内容に関して、Facebookはコメントを拒否している。

データ不足もアダに

Facebookのミッドロール広告で実際に収益化している動画再生数を、正確に見積もるのは難しい。Facebookのインサイトでは、パブリッシャーが日、週、月単位でいくら収益を上げているのか、またそれぞれの動画の収益も見られるようになっている。だが個々の動画でミッドロール広告が流れる頻度が正確にはわからないため、実際にどれだけの動画再生が収益になっているのか不透明なのだ。その結果、パブリッシャーは自社でCPMを算出せざるえない。これがパブリッシャーによって算出されたCPMと、FacebookのCPMとで差が生じる原因となっている。いずれにしても、「収益が低い」という事実はくつがえせないのだが。

Facebookは、パブリッシャーに対してDropboxのスプレッドシートで、ミッドロール広告テストの生データを提供している。パブリッシャーによると、データにはいくつの動画が収益化できたかその総数などが含まれているという。米DIGIDAYが確認したレポートでは、実際にどれだけの収益を上げたか、また収益化できた動画再生数は公開されていなかった。その点、ライバルのYouTubeはこれらのデータも提供している。

「実際に収益を上げている動画は数十本あるが、どの動画で広告が再生されたのかを特定し、提供されたデータの実態を把握するのは難しい」と、3番目のパブリッシャーは述べている。

Facebookの計画に詳しい情報筋によると、Facebookは今後数週間から数カ月のうちにCPM指標を提供する予定であり、少しはパブリッシャーの苛立ちも改善されるかもしれない。

パブリッシャーの不満

Facebookのミッドロール広告自体はまだテスト段階にあり、パブリッシャーが得られる情報が少ないのもうなずける。とあるパブリッシャーによると、Facebookは対象となる動画すべてで少数のユーザー向けにミッドロール広告のテストを実施しているという。このテストでは、ユーザーの70%に広告も通して視聴してもらうことに成功した動画のみがより収益化されるという。つまり、ほとんどの動画は収益化できないということだ。Facebookはこのテストについては否定している。

問題のひとつは、Facebookのニュースフィードの動画はミッドロール広告には適していないということだ。ユーザーは大抵フィードをスクロールしつづけるため、広告が流れるまで動画を視聴することは滅多にない。たとえ広告まで動画を再生したとしても、広告を邪魔に感じて次の投稿へとスクロールしてしまう。パブリッシャーにとっては当然不満でしかない。

「ニュースフィード上の動画はひどいフォーマットだ。広告になったら、みな動画から離れてしまう。最悪のユーザー体験だ」と、インタビューした1社目のパブリッシャーは語った。

パブリッシャーのミッドロール広告に対する不満の一部は、最初にFacebookが提示したパブリッシャーの動画をライセンスする際の収益分配条件にある。パブリッシャーは、月単位で最低限の動画を制作することで、Facebookよりライセンス料を受け取る契約だ。この契約の下、Facebookはミッドロール広告から得た広告収入のすべてをライセンス料を支払うまで手元に置いておき、追加の収益があるごとに1ドルあたり45セントを徴収する。動画タブ「Watch」へのオリジナル動画制作でも、Facebookは同様の方法を取っている。

これまで見てきたように、Facebookのミッドロール広告で低いCPMしか得られていないのなら、パブリッシャーはいま以上の収益を上げることを期待できないだろう。

Watchは救いとなるか

一方、すべてのパブリッシャーがミッドロール広告テストを批判しているわけではない。DIGIDAYが以前掲載したように、Facebook上で幅を利かせている分散型メディアのパブリッシャーは、より多くの収益を得ている。その記事のなかで、あるパブリッシャーはFacebookの分配45%を差し引いても、2400万(3秒間)の動画再生数を記録し、1万1000ドル(約120万円)の収益がもたらされたとしている。それでもCPMのネット単価は46セント(約52円)に過ぎない。

6社目のパブリッシャーも、ミッドロール広告のテストを開始して数カ月後に、CPMに「著しい下落」があったことを認めた一方で、昨月あたりから収益が回復しはじめたという。「好ましい方向に修正されてきているようだ」。

さらに、一部のパブリッシャーは、Watchにおけるミッドロール広告の可能性に希望を見出している。Facebookはパブリッシャーに対して長尺動画の制作を促しており、Watch向けの長尺番組の制作費も提供している。まだ駆け出したばかりのWatchがミッドロール広告に適した環境になることを期待しているわけだ。

Facebookが8月にWatchを発表したとき、同社は限定したパートナーとWatch内でミッドロール広告を試してみると述べている。その後、徐々にパートナー数、番組数を増やしていくという計画だ。

この1年が勝負

「Facebookがすべきことは、ミッドロール、プレロールまたはライセンス料であるかにかかわらず、十分な視聴率を獲得することだ。そうすれば、Facebookにもパブリッシャー側にも十分な収益が生まれる」と、2社目のパブリッシャーは語る。「その点で、Watchは意図的に希少性を作りだそうとしており、正しい方向に向かっていると思う」。

しかし、Watchでさえ、Facebookはコンテンツ自体に資金を供給するのではなく、最終的には広告収益分配モデルに移行することを望んでいる。そうなれば確実に収益が減るため、パブリッシャーには嬉しくない話だ。2社目のパブリッシャーが言うには、「Facebookがパブリッシャーの立場を考えた対策をとらなかった場合、どれだけのパブリッシャーがFacebook動画に見切りをつけるか。この1年が見ものだ」。

Sahil Patel (原文/訳:Conyac)