テレビCMと融和を図り始めたモバイルの巨人・Facebook:クリエイティブの再資源化を推奨

消費者はさまざまなデバイスでメディアに接触する。デバイスの断片化(フラグメンテーション)。テレビの到達の鈍りがみられる米国では、多様なデバイスを横断する(クロスデバイス)マーケティングが喫緊の課題になっている。一方、日本の消費財メーカーにとっては、テレビCMと店頭営業の組み合わせが依然として有力だ。しかし、モバイルネイティブの若年層が年齢を重ねるにつれて、米国と状況が似てくる可能性がある。

Facebookが20日に開いた広告主、広告代理店向けのイベント「Mobile Moves People」。Facebookジャパンの代表取締役、長谷川晋氏は消費者の行動において、モバイルが極めて重要になっていると説明し、クロスデバイスマーケティングにおける重要な役割を同社の広告商品が果たせると訴えた。

長谷川氏が強調したのは、広告主、代理店から見てFacebookが「モバイルメディア」である点だ。Facebookのモバイルからのアクセスは全体の92%を占め、インスタグラムはモバイルのみの展開だ、と説明した。ユーザーの属性データに基づいたセグメンテーションにより、テレビ広告がリーチしない層をターゲティングできる、という趣旨を含んでいた。

スマホを好む若者にどうアプローチするか

博報堂DYメディアパートナーズ の「メディア定点調査」総務省の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、高齢者層でテレビへのロイヤリティが高く、若年層に下れば下るほどスマートフォン接触が拡大し、10〜20代で逆転する傾向がある。アプリ事業者がブランド認知を広げるテレビ広告を打つのは、テレビ視聴の際にもスマホを同時に利用している傾向を想定しているからだ。

長谷川氏は10~20代が消費への入り口を迎える時期(ポイント・オブ・マーケット・エントリー)であり、常にマーケティングが重視する層だ、と語った。「マスを含めて最適なマーケティング予算の配分をしてほしい。ベストなメディアの選択をしてほしい」。

テレビCMとデジタルの最適な組み合わせとは

Facebook/インスタグラム・マーケティング・サイエンスリードの小関悠氏は、ニールセンの調査結果などを引用し、Facebookとインスタグラムがテレビ広告と比較して投資利益率(ROI)、パフォーマンスの点で優れていると説明。両プラットフォームの広告を組み合わせる方法がもっとも効果を引き出せると話した。

テレビCMのクリエイティブを「Facebook化」することも提案。Facebook/インスタグラム・クリエイティブストラテジストの田中徹氏は、モバイルの性質上、プラットフォームの利用方法が異なテレビ広告とは必要なクリエイティブが異なると説明した。多額の制作費を費やしたテレビCMをFacebook用に再資源化することを奨めた。

こちらの記事で触れたとおり、米国ではクロスデバイスのキャンペーンは必要不可欠だ。ケーブルカットと言われる、解約に頭を悩ませるテレビ事業者は今秋から、取引を自動化し、オーディエンスデータとともに在庫を販売する「プログラマティックTV」に足を踏み入れようとしている。これにより、テレビとデジタルのキャンペーンが馴染みやすくなる。デジタル広告の出稿先としてモバイルは最重要。そのモバイル広告市場で存在感が大きいのが、GoogleとFacebookだ。特に二社はモバイル広告では他社を大きく突き放しており、デジタル広告全体よりも強い寡占傾向を示している(これは将来的によりデジタル広告の寡占傾向が強まる予兆かもしれない)。

音部氏「モバイルでの情報収集は重要」

イベントには日本を代表する消費財メーカー、資生堂ジャパン執行役員・マーケティング本部長(CMO)の音部大輔氏も登場。音部氏はデジタル施策のトライアンドエラーが続く環境下で、「デジタル施策を採用する」という手段が、「とにかく何かデジタル施策をやっておかなくてはいけない」という形で目的化することに警鐘をならした(詳しくはこちらの音部氏のDIGIDAYへの寄稿を参照してほしい)。

音部氏はモバイルが直接的に購買に繋がるか、には自信を示さなかったが、消費者がモバイルでの商品に関して情報収集することは、ブランドにとり極めて重要なものになっていると指摘した。企業、メディアではなく、ユーザーが生んだ情報が態度変容を促す可能性があることに言及し、モバイルというデバイスの特性や消費者の状況に沿ったメッセージが大事だと話した。

消費財ブランドにとってテレビCMと店頭営業の合わせ技が結果を生む限りは、必ずしも方法を変える必要はないと語ったが、一方で、消費者のおぼろげな欲求にフィットするメッセージを送ることのできる、デジタルメディアがあればいいとも語り、「たぶん新しいことが来ているので実験するのも手だ」と話した。

米国では、Facebookはテレビと類似した指標でバイイング(買い付け)できる仕組みを立ち上げている。クロスデバイスキャンペーンの出稿先として、デジタルデバイス側での地位を固めることが、デジタル広告市場の重要な競争のポイントになっていることのしるしだ。

Written by 吉田拓史
Photo by Thinkstock