なぜFacebookはアドネットワークモデルを採用したのか?:拡大するFANの脅威

プログラマティック広告の増加により、アドネットワークは終焉を迎えると思われていた。だが、Facebookは、その想定が間違っていることを証明しつつある。300万の広告主(企業数は非公開だが)とパブリッシャーが利用する10億ドル規模のアドネットワークを構築し、アドテク界が神聖視してきた考えの多くを拒絶。そうすることにより、自らのネットワークを拡大しているのだ。

まず、「Facebook オーディエンスネットワーク(Facebook Audience Network:以下、FAN)」は、リアルタイム入札を利用していない。それどころか、Facebookは、マーケターにリアルタイム入札と同じ意味と見なされることが多いため、FANが「プログラマティック」広告であるということを受け入れるのも躊躇している。そのうえ、FANはクッキーに依存せず、Facebook独自のデータをターゲティングに利用している。また、ほとんどのアドテクとは異なり、FANは、デスクトップPC向けのディスプレイ広告を掲載せず、モバイルにネイティブアドを配信している。

FANが成功を収めた理由

「何年も前から社内でアドネットワークについて話し合ってきたが、モバイルに移行するまで、どうやればいいのかきちんとわかっていなかった」とFacebookのアドテク担当バイスプレジデントであるブライアン・ボランド氏は言う。

FANの第1段階は、(Facebookのターゲティングデータによって階層化された)広告を、Facebook以外のモバイルアプリのコンテンツと調和させることだった。2016年1月、FANはさらに、サードパーティ製アプリでの広告提供からモバイルウェブへと手を広げた

匿名を条件に、あるアドテクのベテランは次のように述べた。「Googleのアドネットワーク事業はデスクトップ時代に始まったが、FANは、モバイルアプリのスタックでスタートした。旧来型の技術や考え方を持っていないのが、Facebookの大きな強みだ。多くのパブリッシャーは、すでにFacebookのソフトウェア開発キット(SDK)を持っているので、FANを受け入れやすい。スイッチを入れてインベントリー(在庫)をFANに追加するだけでいい」。

Facebookのすばらしい仕事

Facebookは、モバイルの汚れた秘密も暴いた。広告が視聴されるのはたいてい偶然だったのだ。「『iPhone』のホームボタンの真上でクリックされることが多いことがわかった。思っていたほど多くの価値を生み出していなかったので、一部のパブリッシャーにとっては、ごく最初の時点で、それが課題になっていた」とボランド氏は述べた。

アボカドの魅力を紹介するサイト「アボカドス・フロム・メキシコ(Avocados from Mexico)」のデジタル戦略およびイノベーション担当ディレクター、イボンヌ・キンザー氏は、次のように語る。「Facebookは賢明なアプローチを取り、広告のクリック可能な部分を狭めることで、偶然クリックされるという問題を解決した。一方、我々は、従来型のバナーをほぼ完全に排除していた。FANのインベントリーの約83%がネイティブ広告になろうとしていることを考えると、これは、我々の取り組みにぴったりと合う」

メディアエージェンシーであるマクサス(Maxus)の米国事業担当最高プランニング責任者デビッド・ゲインズ氏によると、FANは、急成長しているものの、登録しても広告がどこに表示されるかわからないので、広告主はどのような状況で広告が提供されるのか理解できないというデメリットがあるという。

「Facebookは、個人を理解し、無駄を限度以下に抑えることにかけては、すばらしい仕事をしてきた。だが、広告主がFacebookのデータに依存して、そのデータから広告予算の配分先を知るとなると、好ましい広告掲載場所とは言えない」とゲインズ氏。

「ブラックホール」のようなもの

エージェンシーのアイソバー(Isobar)で戦略担当のアソシエートディレクターを務めるジョージ・クリッチロー氏は、「広告がどこに表示されるかはFacebookが決める。パフォーマンスに関するデータを集めることはできるが、その広告が実際にどういった場所に表示されるのかはわからない」と述べている。

また、検索を重視するマーケターにとって、Facebookは「苛立たしいブラックホール」のようなものだ、とホテル予約アプリ「ホテル・トゥナイト(Hotel Tonight)」の最高マーケティング責任者(CMO)であるレイ・イライアス氏は言う。「本質的には、FacebookとGoogleは、あまりにも規模が大きいので、マーケターには必要な場だ。Facebookでは、関心に力点を置いてターゲティングが行われているのに対し、Googleでは、関心と意図がまだ一致していない」とイライアス氏は説明する。

Facebookはこれまで、アドテクと曖昧な関係にあった。2016年5月には、アドエクスチェンジ「Facebook Exchange」(FBX)を閉鎖した。また、オープンなエクスチェンジは詐欺が横行しすぎるとして、「ライブレイル(LiveRail)」も終了。Facebookが貴重なオーディエンスデータの利用を管理できるので、アドネットワークモデルのほうが魅力的だったのだ。

無視することができない

「我々は、クッキーや広告のIDなどに注目するアドテク界とは違う方向へ進化している。ライブレイルを終了したのは、成果を上げていない多くの供給を排除するためだ」とボランド氏は説明した。

ボランド氏のチームは8月に、FANでヘッダー入札のテストを開始した。これは、サードパーティのパブリッシャーのインベントリーを誰がいちばんマネタイズできるかという点で、FacebookがGoogleと闘うための戦術だ。というのも、この記事のためにインタビューした人々によると、これによって、Googleの管理下に置かれる一部のインベントリーではなく、パブリッシャーの全インベントリーをFANが見ることができるからだという。

パブリッシャーにとって、Facebookは規模が大きすぎて無視することができない。FANを通じて掲載される広告における自分たちの取り分はわからないかもしれないが、Facebookの規模が絶大なので、最良の取引が提示されるのかもしれない。

「パブリッシャーは、Facebookが広告主からの需要が大きいので、そうした需要を利用し、その対価をFacebookに支払っていることも自覚している」とある業界筋は語る。

Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)