テレビとネット、さらに境界が薄れたリオ五輪

技術面の進歩のおかげで、インターネットビデオ(動画)のコストが下がり、質が上昇している。ブロードキャスト(放送)とインターネットのどちらを経由していようが、利用者としては「ビデオコンテンツ」に変わりない。

個々が求めるものを、個々に提供する「パーソナライゼーション」がビデオコンテンツの新しいトレンドだ。

リオ五輪の視聴率は北米で落ち込んだ。アドエイジによると、視聴率はロンドン五輪比で約15%減。詳細はこのとおりだ。

▽ロンドン五輪:世帯視聴率17.5%、視聴者3110万人
▽リオ五輪:世帯視聴率14.9%、視聴者2600万人

特に「ミレニアル世代」と呼ばれる若年層の五輪離れは深刻だ。リオにおける18〜34歳の視聴率は5.3%。ロンドンの7.7%から31%も落ち込んだ。

ニューヨーク・タイムズによると、五輪を放映したNBCの視聴率は、リオ期間中のABC、CBS、Foxの視聴者の3倍に上っている。NBCのストリーミングの視聴者は1日あたり22万5000〜50万人。NBCはリオ五輪開催前に広告主1200億円の広告枠を売ったが、うち75%がプライムタイム。ストリーミングに割かれたのは10%に過ぎない。

同紙によると、初めてオリピックコンテンツのスポンサーになった米大手スポーツ量販店のマーケター、ライアン・エケル氏は「我々はそれをビデオ(動画)と捉えることにしている。ケーブルかインターネット、電波を通じて届けられるかについては考えていない」と語った。「1〜2年のうち、あるいはもっと早いうちにネットワーク(テレビ放送者)はビデオビュー(動画閲覧)を提供する存在になる。放送とストリーミングの双方でコマーシャルを流す。広告主にとっては素晴らしいことになるだろう」。

NBCはアナログ、デジタルの双方がもたらした広告効果に関する分析を発表する予定があるという。

五輪のネット視聴は拡大

五輪のインターネットによる視聴は拡大している。その多くはミレニアル世代がもたらしている。NBCのプレスリリースによると、以下のとおりだ。

  • 「NBC Olympics.com」「NBC Sports App(アプリ)」のストリーム時間は33億分に達した。ライブ、フルイベント、ハイライトの合算。
  • ライブストリームは27億1000万分に達した。これまでの大会のライブストリーム時間の合計14億8000万分の2倍。
  • 「NBC Olympics.com」はユニークユーザー数1億人。2012年のロンドン五輪から29%増。
  • ライブストリーミング利用者の50%は35歳以下。

若い人はデジタル空間で自分が欲しいものを欲しいタイミングで得られることを知っている。モバイルの普及でネット接続が常時となったいま、動画がさまざまなデバイス、場所、目的で利用されるようになった。

米国のテレビ業界では、Twitterは米国で人気のあるアメフトリーグNFLの木曜夜10試合のストリーミング権に対し、1000万ドル(約10億円)を払ったことが依然として話題の種という。超高額の大手テレビネットワークが支払う放映権料とは雲泥の差があるが。

NBCはオリンピック期間中にデジタル面でのコンテンツ流通を図るため、北米・欧州の一部で人気のSnapchat(スナップチャット)にコンテンツを提供した。自らコンテンツを用意する代わりに、BuzzFeedの動画ユニットから12人のプロデューサーで構成されるチームを出向させ、番組を制作。NBCのグループは2億ドル(約200億円)を投資するBuzzFeedの大株主だ。

VODはネットフリックスが抜けだした?

定額制動画配信の市場では、Netflix(ネットフリックス)が米国市場で抜けだしているとするサーベイが出た。ビジネスインサイダーが投資会社RBC キャピタル・マーケットのサーベイをまとめたものによると、米消費者54%が12カ月以内にNetflixでビデオを視聴した。YouTube (47%)とAmazon(30%)を上回ったとしている。同じサーベイを取り上げたブルームバーグによると、Netflixの英国では前年の30%から42%、ブラジルでも前年の60%から71%と好転しているという。

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ただし、第2四半期決算では、利用者増加が予測された250万人を下回る170万人に留まった。ライバルに対し、ある程度差をつけているが、成長が鈍っているか、単に短期的な停滞をしているにすぎないのか、見守る必要がある。

テレビはどこにでもある

北米ではインターネット接続した世帯の52%にあたる4900万世帯がテレビをネットに接続しているという(関連記事)。メディア環境研究所の「メディア定点調査・2016」によると、日本でも「テレビ」をインターネット回線に接続している比率は31.0%、はじめて3割を超えた。

テレビ関連事業者がもつテレビコンテンツの製作能力は素晴らしく、AbemaTVでも分かるようにテレビコンテンツは、流通が変わってもニーズがありそうだ。両者の境界がなくなっていることから、広告枠の自動取引とデジタル・アナログの共通指標は重要な論点。

Text by 吉田拓史
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