アリババ金融部門のゴールドマン・サックス超え:今週のデジタルマーケティングサマリー

今週のトピックはアリババグループの「金融部門」であるAnt Financialが9日に30億ドル(約3300億円)弱を債務で調達したことだ。Ant Financialは中国最大の決済サービス「Alipay(アリペイ)」の親会社。アリババCEOのジャック・マー氏が実質的に経営権を握っている。

1月末に米国の国際送金サービス大手マネーグラムを8億8000万ドルで買収した。マネーグラムは35万店の実店舗をもっており、デジタルトランザクションは収益の13%程度に過ぎない。

今回の30億ドル調達により決済、送金などのオンラインバンキングへの投資を厚くするとの見方がある。最終的な目標は、Amazon、PayPal、Square、オンラインバンキングを合体させたような、ECと決済をモバイルで完結させるビジネスモデルを「中国外」でも成立させ、新興国市場を制することだろう。

Ant Financialはインドの決済スタートアップPaytm、タイの現地財閥系決済企業Ascend Moneyに投資・提携してきた。アリババ本体はAmazonと東南アジア市場をめぐる競争をシンガポールで開始している。

Googleとテマセクの共同リサーチによると、東南アジアのネット経済は2025年に20兆円市場に向かい、その半分がEC。インドの13億人経済では、小売業がモバイルコマース中心で発達する兆候を示しており、先進国がたどるプロセスを省略して発達する「リープフロッグ」だ。

米投資会社はAnt Financialの時価総額を750億ドル(8兆4750億円)とし、2017年にIPOを控えていると言われる。一説では、10兆円水準の投資会社ゴールドマン・サックスの時価総額を近々追い抜くのではないか、と言われ、バズワード「フィンテック」の端的な例かもしれない。

日本でも各事業者が実店舗で活用できる決済プラットフォームを整備し、eコマースなどのインターネット事業と合体させ、MVNOなどのキャリア事業にも足を踏み入れているが、これらはアリババやテンセントをモデルにしている。ただし日本は「◯◯経済圏」という言葉に象徴されるようにプラットフォームの断片化が起きており、また規制の壁は厚く、「党がバックにあり、2極集中する中国」ほどの自由さとコストの低さを表現できていない。

モバイルビジネス先進国の中国勢は政治的・経済的観点から自国市場を強く確保しており、外の市場への拡大に集中している。

Ant Financialの出資者はオール中国な布陣で知られている。 China Investment Corp (CIC)、CCB Trust、China Life、China Post Group、China Development Bank Capital Primavera Capital Groupなど。

その他、今週のトピック。

■Snapchatのサーバー代が5年で20億ドル

Recodeのピーター・グアゲンティ記者がSnapchat運営会社のSnapの上場申請書などを参考にした記事によると、サーバー代を今後5年間で20億ドルをGoogle Cloudに支払う契約を交わしていることがわかった。

Recodeのカート・ウェグナー記者によると、Amazon web serviceとも10億ドルの契約を交わしている。多量の動画を扱う同社がサーバー代に苦慮している状況が伺える。

ユーザー数の伸びの停滞や、ブランドアカウントの3割以上が休眠していること、Facebookによる厳しいプレッシャーなど、250億ドルのIPOはそこまで甘くないか。

上場申請書に関しては柴田尚樹氏のブログで詳しく解説されている。

■ポストCookie時代、識別子をめぐる戦い

モバイル時代のいま、トラッキングはCookieだけではなく識別子(identifier)の重要性が増した。GoogleとFacebook(あとはAmazon)以外がクロスデバイストラッキングを可能にする、効果的なIDを作るチャンスは現状なさそうだ。モバイル広告の2者独占はかなり堅いものと見ていいはずだ。

■ディズニー「テレビ広告多すぎる」

米ウォルト・ディズニーのCEOボブ・アイガー氏は傘下のESPNとABCのコマーシャルが「多すぎる」と話した。アイガー氏はNetflixのような広告のないビデオオンデマンドと競争していることに触れた。

■NYT購読者はSpotify無料

ニューヨークタイムズ(NYT)が新規購読者に音楽ストリーミングアプリSpotify の広告なしの「Premium」を無料で使えるようにするキャンペーンを開始したと発表。週5ドルでNYTとSpotifyの双方が活用できる。

■Uberの「世界の交通データ」はスマートシティをどう変える?

2017年1月、Uberはライドシェアで収集した交通データを都市に提供する「Uber Movement」を開始した(Wired)。都市は政治的理由にとらわれなければ、都市計画、交通政策をより優れたものにする機械を手に入れた。Googleは2016年9月に都市交通情報ベンチャーのUrban Enginesを買収。GoogleマップやAndroidフォーンから得られる位置情報の活用や、自動走行車などによるスマートシティ構想をもっており、「誰が都市をデザインするか」は大きなテーマだ。

Written by Takushi Yoshida/吉田拓史
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