米アドテク企業を買い漁る 中国企業たちの事情:「国際市場の方が競争は激しくない」

プログラマティック広告への関わりを強めたい中国のテクノロジー企業からすると、海外市場は地元市場よりも競争が激しくない。そのため、多くの中国企業が海外に活躍の場を求めて、外国の――とりわけ米国の――アドテク新興企業を買収している。

最近では、北京を拠点とする北京華誼嘉信整合営銷顧問グループ(Spearhead Integrated Marketing Communication Group)がモバイルアドエクスチェンジを手がける米国のスマアト(Smaato)を1億4800万ドル(約153億円)で買収している。

また、中国のモバイルアドプラットフォームであるモブビスタ(Mobvista)は、アプリ収益化企業のネイティブX(NativeX)を2016年2月に約2500万ドル(約25億円)で買収。同月、中国のモバイルゲーム企業クンルン(Kunlun)とセキュリティソフトウェア企業であるチーフー360(Qihoo360)も、ブラウザを開発するオペラ・ソフトウェア(Opera Software)を現金12億ドル(約1246億円)で買収した。

タフすぎる中国市場

中国のアドテク企業買収は止まらないようだ。北京に本社を置く評価額22億元(約346億円)のモバイルテクノロジー企業、パパイヤモバイル(PapayaMobile)の場合、同社の最高経営責任者(CEO)であるシー・シェン(Si Shen)氏によると、プログラマティック企業2社を2016年末までに買収する計画で、少なくとも1社は米国を拠点とする企業だという。

こうした中国企業が積極的に米国のアドテク企業を買収しているのは、中国の広告トラフィック――とりわけモバイルのトラフィック――の大半が、「BAT」と称されるバイドゥ(Baidu)、 アリババ(Alibaba)、テンセント(Tencent)の大手テクノロジー企業3社やチーフー360の寡占状態にあるためだ。シェン氏によると、これらの中国企業はGoogleやFacebookと違ってAPIを公開していないため、広告主はサードパーティのプラットフォームでプログラマティックの取り引きができないのだという。

シェン氏は次のように説明する。「独立系の会社が中国の国内市場を生き抜くのは非常に難しい。たとえばドゥモブ(Domob)は、モバイルのプログラマティック分野で成長が期待されていた。しかし、2015年にブルーフォーカス・コミュニケーション・グループ(BlueFocus Communication Group)によって買収され、現在はむしろエージェンシーのような事業をしている。国際市場の方が競争は激しくない」。

中国投資家には割安な米企業

シェン氏はさらに、もうひとつの理由は、少なくともアドテク市場における最近の乱高下を除けば、米国のテクノロジー企業が高くないからだと語った。

「中国の投資家の視点から見ると、彼らは中国国外に出るのが難しいため、米国のテクノロジー企業は割安なのだ。そのような企業は、中国の資本市場でプライベート・エクイティ・ファンドからはるかに大きな資金を調達できる。そのため、(買収)価格は非常に手ごろだ」と、シェン氏は言う。

米国を拠点とするプログラマティックのクリエイティブ管理プラットフォーム「サンダー(Thunder)」のCEO、ビクター・ウォン氏は、米国のアドテクについて、「アジアのアドテクより1世代進んでおり」、そのため、規模とターゲティングの両方を求める広告主からの売上を増やすために、中国企業が米国企業とその技術を積極的に買収しているのは驚くに値しないと考えている。

中国独自のデジタル広告事情

吸収合併とは別に、一部の中国企業のDSP(デマンドサイドプラットフォーム)も、Google、Facebook、Twitterなどに代わって、ほかの国々の広告トラフィックにアクセスしている。このテクノロジー大手3社はそれぞれ独自の広告ネットワーク―― 「Google Display Network」「Facebook Audience Network」「Twitter Audience Platform」――を築いているため、中国のアプリパブリッシャーやモバイルウェブパブリッシャーは、Google、Facebook、またはTwitterが所有、運営するネットワークの外部で広告を配信したいグローバルな広告主と結びつくことができるのだ。

ある中国のアドテク幹部は、次のように語った。「Facebookは中国でブロックされているが、たくさんの中国企業が海外の広告トラフィックを求めていることから、中国に大きな広告事業を抱えている。Facebookはシンガポールと香港にそれぞれチームがある。Facebookは、我々が同社のために広告を売るとリベートなど多くの利益を与えてくれ、また、APIについてもかなりサポートしてくれる。Googleも同じような状況だ」。

Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)
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