AIブームに湧くアドテク企業と、冷ややかな反応の広告主

アドテクが人工知能(AI)フィーバーに湧いている。

ロケットフューエル(Rocket Fuel)やハドルド・マシズ(Huddled Masses)といったプログラマティックプラットフォーム企業は、AIと機械学習の適用範囲を増やしている。その狙いは、金額に見合うインプレッションを獲得できそうにないケースを見極めて入札を回避し、インフラのコストを減らすことだ。7月17日には、アドテク大手のルビコンプロジェクト(Rubicon Project)がまさに同じ問題の解決を目指して、プログラマティックプラットフォームを手がけるエヌトグル(nToggle)を4000万ドル(約44億円)近い金額で買収することに合意した

マクサス(Maxus)などのメディアエージェンシーも、より効率的にデータを再編成するためにAIを利用。カフェメディア(CafeMedia)などのパブリッシャーも、インベントリー(在庫)のタグ付けと整理にAIを活用している。ただし、このようなAI人気の高まりにもかかわらず、広告におけるAIの利用はニッチな領域にとどまっているのが現状だ。

実用的なAI利用例

「いまのところ、市場は明らかに話題先行だ」と、広告エージェンシーのケプラー・グループ(Kepler Group)でCEOを務めるリック・グリーンバーグ氏は指摘する。同社が構築するプラットフォームは、AIツールを利用して、各種のデータベンダーにまたがるレポートを統合している。「だが私は、限定的ではあっても、実用的な用途でのAI利用がはじまりつつあると確信している」。

広告エージェンシーのデジタスLBi(DigitasLBi)のプログラマティックメディア担当バイスプレジデント、リアン・ナドー氏は、広告バイヤーにとっての実用的な用途とは、ターゲットユーザーに表示される広告ユニットをリアルタイムで変更することだと語る。こうしたテクノロジーに投資してきたのが、サイズミック(Sizmek)やザクシス(Xaxis)といった企業だ。

ターゲティングを利用すると広告主が適切なユーザーにリーチしやすくなるのと同じように、「動的なクリエイティブ」のプラットフォームでAIを利用すると、ユーザーがいるサイトに関するデータを集め、ユーザーの属性に加えて、ユーザーが訪問しているサイトにも合わせて広告ユニットを変更できるようになる。

AI普及を阻む要因

AI製品を活用するには、クライアントの特定のニーズに合わせた調整が必要になる。だが、販売の現場ではこのアドバイスがしばしば無視されており、自社の製品さえあればクライアントの問題を解決できると主張するサードパーティのAIベンダーが多いのが現状だ。たとえばカフェメディアの場合、IBMのAIシステム「ワトソン(Watson)」プラットフォームに独自のコードを追加して、コンテンツに適切なタグを付ける必要があった。

「IBMの明白な姿勢は、ワトソンはプラットフォームであり、顧客がワトソンをトレーニングしてデータセットを理解できるようにすべき、というものだ」と、カフェメディアの共同創設者ポール・バニスター氏は指摘する。「だが、ほかのベンダーは、システムが導入直後から稼働してしかるべきだと主張する。ここにうまくいかない理由がある」。

AI製品の別の限界は、広告詐欺を阻止するのが不得意なことだと、広告詐欺を研究するオーグスティン・フォウ氏は指摘する。AI製品に使われている技術がさらに進歩する可能性もあるが、AIは依然として詐欺の標準的なパターンを探しており、これは詐欺師から容易に回避されてしまうと、フォウ氏は語る。

需要がまだない現状も

広告において、AIには特定の用途がある。だが、マーケテイング部門が人々の関心を引くために使っているような、空虚なキャッチフレーズの域を出ていないAIが多いことは指摘しておくべきだろう。3人の広告バイヤーが米DIGIDAYに対し、AIについてクライアントから聞かれたことは一度もないと述べた。ブランドクライアントの多くは、プログラマティック広告についてようやく理解しはじめたところであり、AIは彼らにとって喫緊のテーマにはなっていない。

広告エージェンシーのリチャーズ・グループ(The Richards Group)でプログラマティックを率いるデビッド・リー氏は、AI対応製品の宣伝を定期的にチェックしていると語る。だが、それらの製品のAI機能はたいてい、「パフォーマンスに影響を与えるようには思えず、バズワードの域を出ていない」という。

Ross Benes(原文 / 訳:ガリレオ)