「AbemaTVは、出稿が楽しいと思えるメディアを目指す」:サイバーエージェント常務取締役 小池政秀氏

サイバーエージェントとテレビ朝日が仕掛けるインターネットテレビ局「AbemaTV(アベマティーヴィー)」。2016年4月11日の本開局からわずか6カ月弱で、スマートフォン用アプリが900万ダウンロードを突破するなど、急速にユーザー数を伸ばしている。

「受け身の視聴スタイル」「プロが制作する一流のコンテンツ」「24時間365日配信の完全編成型」「約30の多チャンネル展開」「複数デバイス対応」という、既存のネット動画サービスにはない特徴を強調することで、まるで従来のテレビに近い、ネット動画の新しい視聴スタイルの確立を目指す。同時に、テレビとネットの長所を合わせもつことで、広告の新境地も切り拓こうとしているという。

去る7月4日に、インターネットテレビ局としての機能も有する、サイバーエージェントのクリエイティブ拠点オフィスとして開設された「Chateau Ameba(シャトーアメーバ:TOP画像はそのエントランスにて撮影)」。そのテレビ局然としたオフィスにて、株式会社サイバーエージェントの常務取締役であり、株式会社AbemaTVの取締役でもある小池政秀氏に、同サービスが目指すコンテンツと広告の可能性について伺った。

◆ ◆ ◆

――AbemaTVと従来型テレビ、かなり近しい印象ですが一番の違いは?

特徴のひとつに「複数デバイス対応」を謳っているのですが、そのメインとなる視聴デバイスがPCやスマートフォンである点です。特にスマホでの視聴が中心になると想定しており、オリジナルコンテンツでは「寄り」の映像を多めにしたり、テロップの入れ方を見やすく工夫したり、スマホ上でのユーザー体験を意識しています。

従来型テレビとの差別化は特に意識していませんが、メディアとしては24時間配信の完全編成と常設が約30存在する多チャンネル展開が基本です。そのなかでも軸にしていきたいのが、完全に内製しているニュース。そして、約50番組ほどレギュラーで放送しているバラエティ番組も内製で、残りの20数チャンネルはパートナーからの提供コンテンツとなります。

多チャンネル展開で狙っているのは、さまざまな趣味嗜好をもつユーザー。何かひとつでも興味のある番組に巡り合ってほしいと思い、スポーツ、ドラマ、音楽、アニメ、釣り、麻雀など幅広いテーマを抑えています。編成の観点としては、テレビなどのマスでは放映されないけれど、熱狂度が高いコアなファンが存在するジャンルを選びました。

「Chateau Ameba」

神宮前の「Chateau Ameba」の編集室

――専用のスタジオまで用意した狙いはなんでしょう?

AbemaTVという事業と、その内製コンテンツに対する、我々の覚悟や気合を示すためです。「ネットメディアだから、この程度でいいだろう」という意識は皆無で、テレビで放映されても遜色ないコンテンツであることがAbemaTVの方針ですから。

そのため、撮影、編集、制作施設についても、圧倒的に良い環境を作るため、原宿、神宮前、六本木に3つのスタジオを用意しました。実際、自前のスタジオがあるとセットを作り込めるなど、制作面のメリットは大きいです。

ネットメディアを成功させるにあたって、将来的に必ず必要となるのがオリジナル(内製)コンテンツのヒットです。現状、アニメやドラマなど、既存のヒットコンテンツを仕入れてきて、サービス全体の魅力は作り出せているのではという手応えはあります。しかし、本当の成功は、自ら手掛けたコンテンツがヒットし、それを目的にユーザーが集まってくれる状態だと考えています。

「HARAJUKU Abema Studio」

原宿駅前の「HARAJUKU Abema Studio」

――スマホと多チャンネルの組み合わせで狙うターゲット層は?

AbemaTVでは、1000万人規模のユーザーを目標にしています。ただし、その1000万人が同一の視聴習慣をもつようになるかというと、いまの時代では有り得ないでしょう。アニメ好きの視聴習慣、麻雀好きの視聴習慣がありますし、昼間に帯で観たり、平日の夜に集中して観たりと、それぞれの生活スタイルに合わせた視聴習慣を確立してほしいと考えています。

AbemaTVでは、パーソナライズされたテレビ型のメディアを目指しているので、自室にテレビがない人や、特にスマホが生活の中心となっている若者にとって、その代わりになれるといいですね。

また、利用環境としては、Wi-Fiを使っているAbemaTVユーザーが7割です。スマホユーザーは携帯電話ユーザー全体の6割と言われるので、Wi-Fiを利用できる環境が広がれば、もっとこのサービスのユーザーは伸びると考えています。

――AbemaTVの広告の特徴について教えてください。

AbemaTVの広告は、番組ごとにCMが入るタイミングを編成し、ヨコ型の大画面にビューアブル100%で表示される動画広告です。

CMが入るタイミングや尺は、番組ごとに調整

CMが入るタイミングや尺は、番組ごとに調整

広告枠の設計は、一般的な動画広告に見られるプレロール広告(本編再生前に流れる動画広告)のように、配信タイミングを一律で設定するのではなく、すべて、番組ごとにユーザーの視聴傾向に応じてタイミングや尺を調整しています。それにより、ユーザーが広告を受け入れやすくする工夫をしています。

現在、AbemaTVでは、1日5000枠以上の配信枠があるのですが、次の4つのSTEPで目的に応じて配信枠をプランニングすることが可能です。

    1.配信パターン
    2.時間×曜日
    3.ターゲットにあわせたコンテンツ
    4.クリエイティブ最適

たとえば、新商品の女性向けの商材であれば、発売のタイミングにあわせ、2週間の前半に配信量を多くし、ドラマチャンネルなどターゲットの多いチャンネルに配信を寄せることで、ターゲット認知率を高めることが可能となります。

プランニング4つのSTEP。上記のパターンは一部

プランニング4つのSTEP。上記のパターンは一部(拡大図はこちら

――テレビ同様の広告展開は競合サービスに対する差別化ですか?

ネット広告のトレンドであるプログラマティック広告の多くは、個々のユーザーにターゲティングしており、同じメディアのコンテンツを観ていても表示される広告は異なります。しかし、AbemaTVの場合は、テレビと同じように広告クリエイティブが固定されていて、同じチャンネルのコンテンツ視聴者には同じ広告が表示されます。

私たちは、「このコンテンツのこのタイミングだから、この広告」というところまで考えて広告を設計しています。ですので、いたずらにターゲティングの仕組みを導入して、視聴者ごとに変えてしまうと違和感が出てしまいます。コンテンツ、時間、広告の密度の組み合わせを考えてプランニングしているので、固定にする意味があるわけです。質の高いコンテンツと、それに合った広告を見せることが、当初からの狙いなんですね。

そうすることで、まだ興味のない広告も受け入れられやすくなり、マスメディアとしての効果が発揮できるのではと考えています。

「Chateau Ameba」の楽屋で語る小池氏

「Chateau Ameba」の楽屋で語る小池氏

――テレビ視聴が減っている若年層へのリーチ力は評価されそうですね。

まさにその通りで、テレビに広告を出している方々に受け入れられやすく、リピートしていただいている広告主も多いです。やはり、テレビ広告と考え方が近いのでわかりやすい点が評価されていると感じます。

また、CGM(一般ユーザーによる投稿)ではなく、プロが制作するコンテンツという点で、ご安心いただいているようです。CGMでも良い広告は実施できると思いますが、やはり入り口としてはテレビに近いAbemaTVの形がトライしていただきやすいのではないでしょうか。

よく、テレビは背もたれにもたれかかって受け身で観る、逆にネット動画は前のめりの姿勢で能動的に観るといわれます。AbemaTVは、アプリを起動していれば、編成に従って番組が次々と流れていくというテレビと同じ方式なので、ネットサービスでありながら、受け身で観ることになります。そこで表示される広告も、スキップせずに思わず眺めてしまうことが想定されるので、広告効果も期待できるというわけです。

実際、AbemaTVの広告視聴完了率は平均80%、高いもので90%出ることもあります。これはVODを含めた、ほかのメディアと比較しても高い結果になっています。

メディアごとの広告視聴完了率

AbemaTVユーザーの広告視聴完了率は、高いもので90%の高さ(直近の実績より算出)

――広告効果や評価指標は、どのように設定されていますか?

まず効果指標は、認知率と態度変容が中心です。現状、AbemaTVでは、フリークエンシー4回で認知率60%に到達するという実績が出ています。また、認知率のリフトアップについて、単発の広告出稿と、テレビと一緒に実施するときとでデータを取っていて、広告主の参考になるような数字が出はじめています。

AbemaTVの広告モデルは運用型ではありませんが、さまざまなデータを活用しています。どの番組を観ているか、どのくらいの頻度で観ているかなど、ユーザーごとの視聴傾向に加え、番組ごとのユーザー特性も見ています。それに基づいて、広告と適した枠を選んでいます。

ユーザーの性別や年代などのデモグラフィックも推定しており、そのユーザーに短期間でフリークエンシーをかけたり、毎週放映の番組の場合、フリークエンシーは抑えて3週間にかけて配信したり、データに基づいて効果の最大化を追求しています。

AbemaTVのフリークエンシーと視聴時間、認知率の関係

長い尺で多くフリークエンシーをかけた方が認知率は高まる。AbemaTVユーザーは、15秒、30秒を最後まで見てくれるユーザーが多い

――広告プランニングツールは、テレビ広告にはない一面ですね。

ええ、広告プランニングツールに対する広告主の反応はすごくいいです。広告担当者が自分でいろいろプランニングできて、結果が可視化される点を、すごく評価いただいています。

プランニングの画面では、広告の尺、予算、期間などを選ぶと、チャンネル、時間帯、曜日帯を細かく設定できます。ユニークでどれくらいリーチできるのかなど、各変数を調整するとそれに応じたプランニング結果が表示されます。コンバージョンやクリックの要素がない代わりに、インプレッションという指標で可能な限り可視化していこうと考えています。

将来的には、この広告プランニングツールで、在庫連携や配信結果のレポート連携、クリエイティブの一括管理までできるようにする予定です。広告を出した実感を、ネット上でどれだけ作り出せるか。広告主に、出稿が楽しいと感じてもらうことが目標です。

広告プランニングツールでは、出稿の設定から結果のレポートまで提供している

さまざまな変数を調整すると、プランニング結果が表示される

――今後どのような展開を考えていますか?

まず広告については、AbemaTVの特徴を最大限に活かしたユーザーとのタッチポイントを確立させていきたいです。

たとえば、テレビでアプリの広告を出すと、そのアプリが何件ダウンロードされるか、ある程度予測できるところまで来ています。AbemaTVでも、広告を出すとどれだけのリアクションが返ってくるか、それはサイト訪問や検索数かもしれませんが、効果が実感できる影響力のあるメディアにしていきたいです。

コンテンツの側面については、AbemaTVならではのヒットを生み出すことです。ネットサービスでありながら、テレビ並みのクオリティを実現できたのは、サイバーエージェントだけでは難しく、テレビ朝日の制作ノウハウによるものだと思っています。

一方で、この先ネットでのスーパーヒットコンテンツを生み出すには、テレビのコンテンツ作りとは違う何かも必要だと思っています。もちろん、テレビのコンテンツは非常に高いレベルですが、インターネットの世界ではまた別の基準があるとも感じています。AbemaTVから、世の中のトレンドを作るようなコンテンツを生み出したいですね。

 

digiday2016_2513_fin▼小池 政秀
株式会社サイバーエージェント 常務取締役

 

1975年静岡県下田市生まれ。萩島商事株式会社(現:アイア株式会社)、リンクメディアを経て、2001年にサイバーエージェント入社。以来、メディア事業の立ち上げに継続的に関わり、2007年にAmeba事業本部ゼネラルマネジャー、2011年には株式会社AMoAd代表取締役就任。2012年に同社取締役、2014年から常務取締役就任。株式会社AbemaTVの取締役も務める。

 

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Written by 仲里淳
Photo by 渡部幸和