Amazonの広告事業が加速、「熱視線」を向ける広告主たち

GoogleとFacebookの二大巨頭が独占するデジタルメディア業界で、Amazonが強力なライバルとして台頭するという見通しが、ますます現実味を帯びてきている。そしていま、世界の大手ブランドもAmazon向けの予算について検討しはじめている。

この動きが加速してきたのは、今年に入ってからだ。ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)グループでCMOを務めるデビッド・ウェルドン氏や広告代理店グループWPPを率いるマーチン・ソレル氏が、GoogleとFacebookによるオンラインメディアの完全支配を断ち切るために、このインターネット小売業者へ協力しようとしている。これは、Amazonの広告ビジネスが市場に競争力をもたらすという推測に基づくものだ。Amazonは広告主のため「広告プラットフォームのリーダー」になって「最高クラスのサービス」と「戦略的なコンサル」を提供すると誓い、その熱狂を盛り上げている。これらの情報は、その宣伝文句を耳にした多くのマーケティングおよびエージェンシー幹部から寄せられた。

かつては検索およびプログラマティックでは後進だったAmazonも、いまではパーソナルアシスタントのAmazonエコーやプライムビデオサービスを抱えていると話すのは、クリエイティブエージェンシーVCCPの最高デジタル責任者であるサム・フェントン―エルストン氏だ。彼によると、エージェンシーとAmazonセールスチームとの話し合いが12カ月前よりはるかに活発化したという。プログラマティックや検索を通じてGoogleから資金を移すことが話題の中心になっている、と彼はいった。

しかし、Amazonのセールストークの波及効果をもっとも速く感じられるのが、検索広告に投じられる予算だ。VCCPは、この9カ月間で広告主らがGoogleから「強固な投資収益率(ROI)」を有するオンライン小売業者であるAmazonへと検索広告費用を移し替えている光景を目にしているという。さらに、ブルームバーグ(Bloomberg)の発表によると、メディアグループのNBCユニバーサル(Universal)と生活用品メーカーのユニリーバ(Unilever)の予算を管理する広告エージェンシーのグループM(Group M)が2017年、広告主がAmazonの検索広告に費やす資金はどの月を見ても前年比で10から15倍だと話しているという。

しかし、検索広告費用が移行されることは、大がかりな計画の一部に過ぎない。Amazonは広告による収益額を公表していないが、リサーチ会社のeマーケター(eMarketer)は、今年は約3割増しの15億ドル(約1695億円)、そして2019年には24億ドル(約2712億円)に増えると予測する。一方のGoogleは2016年の売上が790億ドル(約8兆9000億円)以上、そしてFacebookは270億ドル(3兆5100億円)だと発表している。

広告主を呼び込む

ブランドもエージェンシーも同様に、Amazonは広告で「オールイン」方式をすすめようとしていると感じている。小売ビジネスにそこまで大きな成長は見込めない。また、小売り商品の利益率は5%程度だが、広告となるとそれが20から30%になる可能性があると、財務アナリストのスティーブン・マラース氏は話す。

Amazonとしては、世界最大手ブランドのハイレベルなマーケターを求めている。ユニリーバのシニアマーケターは昨年、Amazonの担当者と会い、広告主の懸念を伝えた。その結果、Amazonはユニリーバに、測定企業のモート(Moat)を使って、2016年最終四半期にユニリーバがAmazonサイトで購入したディスプレイおよび動画広告が、100%インビューであったことを認めさせた。

この試みは、Amazonがほかの広告主とともにイギリスで行った広範なベータテストの一環だ。これは、いまとなっては、予言のように思える。わずか数カ月後、ビューアビリティが業界全体の議論の中心となったことで、GoogleとFacebookがブランドに対し、独自に広告の測定基準を検証できるよう認めたのだ。しかし、そのようなライバル他社とは違い、Amazonは広告主に第三者のベンダーを選任してキャンペーンを測定、最適化することを許可している。現在承認済みのベンダーのリストはこちらだ。

広告がより安全なプラットフォームに移行するなか、Amazonはブランドが「リスクあり」と判断するコンテンツのない環境を広告主に提供できるため、その立場は安定している。しかし、問題はAmazonが「ウォールド・ガーデン(壁に囲まれた庭)」の外にあるオープンな広告取引所で購入した広告はどうなるか、ということだ。あるエージェンシーの情報では、これには依然としてリスクが残るという。数年前から顧客向けにAmazonで広告を購入している、そのエージェンシーは、次のように語る。「Amazonが自社サイトで顧客のための広告を出す場合、彼らは本当にいい仕事をしてくれる。しかし、それらの広告がサイト外に表示された場合、ほかの広告ネットワークと同様、疑念とともに扱われるべきなのだ」。

パブリッシャーへの脅威

クリエイティブブティックのジェリーフィッシュ(Jellyfish)でグローバルディスプレイ担当シニアバイスプレジデントを務めるジェームス・ボルネール氏はこの点を広くとらえ、Amazonがサイト外広告に参入することで、パブリッシャーの広告シェアが奪われるのではないかと案じている。 「Amazonは大掛かりな手法で裁定取引(アービトラージ)モデルを再燃させるのだろうか? 彼らが可能な限り安い価格で入札者からインプレッションを購入するため、コンピューティングとデータ力を投入する見事な手腕を発揮することは間違いない。これが伝統的なパブリッシャーにとって真の脅威となるのか?」。

スピリッツやビールを製造する酒造メーカーのディアジオ(Diageo)は、「信頼できる市場」と呼ばれるインベントリーもまたAmazonの信用の象徴だと考えている。ほかの大手広告主と同様、スミノフを所有する同メーカーはメディアオーナーに対し、独自の検証を導入するよう求めた。その一環として、Amazonをはじめ複数のパートナーに、自身のメディア予算と引き換えに9つの要件を飲むよう伝えた。

本気で広告収入を伸ばすなら、Amazonはファネルの下部に位置するメディアバイイングから、ブランドがより多額の予算を抱える上端に向かう必要があると、VCCPのフェントン―エルストン氏は述べた。Amazonではサイトとアプリの両方で検索やディスプレイの機会を提供しており、端末間のマッチングも可能だが、ボルネール氏はそれでもAmazonにとってのスイートスポットはファネルの中間から下部なのだという。それでも、同小売業者の過去の購入データは、買い物客の興味や、収入もある程度把握できるもので、ブランドの広告主にとって役立つものであると、彼はいった。

データのファクター

いずれにしても、Amazonが広告の分野に進出するのであれば、同社にとって切り札となるのはデータだ。アメリカのオンライン買い物客の55%が同サイトで商品の検索をはじめることが明らかになったあとなら、なおさらだ。Facebookは誰がどんな人で、何に興味を持っているかを知っており、Googleは人々が積極的に探しているものが何かを把握している。しかし、人々が何を買うか、というデータを持っているのはAmazonだけだ。

つまり、オンライン消費で投資対効果を優先する広告主なら、FacebookやGoogleよりもAmazonのメディア商品の方が優れたパフォーマンスを得られるということだ。しかし実際には、同小売業者から購入したキャンペーンの結果には、さまざまな要素が混在している。情報提供者はAmazonの広告商品全般を扱う専門家を自社内に有するエージェンシー、ロースト(Roast)のマネージングディレクター、ガレス・オーウェン氏だ。彼は、Amazonのアカウントチームからもっと多くのフィードバックを得られれば役立つと付け加えた。

Amazonの広告ビジネスの成長を阻んでいるほかの要因は、ディスプレイ広告とペイドサーチインベントリの複雑さ、アカウント管理の問題、そしてレスポンスタイムの遅れなどがあるとオーウェン氏はいう。

「ここでもっと積極的に行動すれば、Amazonはこの分野でさらにスピーディに成長できるだろう」と彼は語った。

Amazonがデジタルおよびプログラマティック専門家雇用に努める様子を見ると、同社がオーウェン氏の見解に気づいていることが窺える。Amazonの最高財務責任者(CFO)であるブライアン・オルサブスキー氏は、7月27日の業績発表の際、同社の広告およびAmazonウェブサービス部門の営業担当者数は全体平均の42%以上の速さで増えていると発表した。さらに、イギリスのAmazonメディアグループでは広告の上級職に複数の空席があると発表している。

Seb Joseph(原文 / 訳:Conyac