1日で1.8兆円!:アリババ「独身の日」、いかに巨額を売り上げたか?

アリババグループ(阿里巴巴集団)にとっては良い1日となった。

この中国の大手eコマース企業は、毎年大規模な購買合戦が繰り広げられる、11月11日の「独身の日」、最初の20時間でいとも簡単に1200億元(約1兆8000億円)を売り上げたのだ。この時点ですでに前年の売上912億元(約1兆3700億円)を超えており、2015年のサイバーマンデー(アメリカのホリデーシーズンセールの開始日)において、アメリカ人がオンラインで消費した額、30億ドル(約3000億円)の4倍になっている。

「独身の日」は2009年、バレンタインデーに対抗する形で作られた記念日だが、アリババはそれをショッピングイベントへと変貌させた。冬のはじまりとともに沸き起こる、孤独な気分を弄ぶようなPR合戦の生みの親ともいえる。「寄り添う相手がいないなら、自分にご褒美をあげよう」。アリババの「独身の日」の売上高は、毎年のように最高記録を更新している。

今年、アリババは「独身の日」セールにバーチャルリアリティや「see now buy now(いま見て、いま買う)モデル」、そしてO2O要素といった新戦略を投入し、さらなる規模拡大を図った。本記事では、そうした新アプローチの手法を分析していく。

グローバルマーケットに向いた目

「独身の日」には、1万4000を超える海外の業者が、アリババ所有のオンラインストアであるTモールとタオバオに参加した。アリババによると、同社が「独身の日」1日で計上した売上のうち、両ストアでの海外商店の収益は、全体の30%以上に上った。今回初出店した企業は上海ディズニーランド、バーバリー、セフォラ、ターゲット、マセラティ、アップル、ビクトリアズシークレットなどだ。

また、アリババは今回はじめて台湾や香港の消費者にもイベントを開放し、来年は東南アジアにも「独身の日」を広めようと計画している。

さらにアリババは「独身の日」をよりグローバルなイベントだと印象づけるため、多くのセレブを呼んで盛り上げた。セレブの顔ぶれは、コービー・ブライアント氏、スカーレット・ヨハンソン氏、デビット&ビクトリア・ベッカム夫妻(すでにTモールでストアを所有)といった具合だ。

アリババのプレジデント、マイク・エバンス氏は「これは、ただ世界中のブランドが中国で商品販売を行うというだけでなく、中国の企業が彼らの商品を世界中の消費者に販売する、ということでもある」と、ブルームバーグへのインタビューで話した。

また、上海に拠点を置くエージェンシー、チャイナスキニーのマネージングディレクターであるマーク・タナー氏は、今年のイベントはより「エキサイティングなグローバルブランド」の購買力に焦点が置かれていたと洞察した。今年は大幅な値引きをするほうがレアだった。

「売り手にとっては、こちらのほうが持続可能であり、成果を出せる」と、彼は語る。「しかし、アリババは将来的に、中国の消費者を惹きつけるために、同じように大幅なディスカウトをしなければならず、悪戦苦闘することになるかもしれない」。

新たなマーケティング戦略

今年、アリババは消費者とブランドのインタラクションを提供するため、AR(拡張現実)やバーチャルリアリティ、ライブストリーミングなどの新手法を試験的に導入した。「過去に挑戦したことのない手法を網羅した」とエバンス氏はいった。

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中国の消費者はこのARゲームのことを「Tモール・ゴー」と呼んでいる。

「独身の日」の1週間前、アリババはあるファッションショーのライブストリーミングを行った。これは上海で開かれたもので、80もの国際的ブランドが8時間に渡って行うファッションショーだ。ショーの最中、視聴者はキャットウォークに登場する、バーバリーなどのラグジュアリーなファッションブランドのデザインを予約注文することができた。さらに同社は「ポケモン・ゴー」のようなモバイルゲームも開発。プレイヤーはゲーム上で、さまざまなブランドの「Tモールキャット」のマスコットを捕まえ、それを景品や割引券と交換できるのだ。

アリババの「Buy+VR」プランでは、消費者はVRヘッドセットかVRカードボード(Googleカードボードに似た商品だが、その価格は格安の約15セント)を装着し、VR環境で浮遊する「Buy(購入)」を見つめることで商品購入できる仕組みだ。

しかし、「独身の日」の売上が、実質どの程度、ARやVR戦略によるものなのかは不透明だ。アリババはまだ数値について検証中とのこと。しかし「バズ(口コミ)」は良いブランド戦略だったとオブザーバーらは語った。

「アリババは今年、多くの口コミチャンネルを組み入れた。毎年新しいものを渇望する消費者のため、彼らは11月11日がエキサイティングであり続けるようにしているのだ」と、タナー氏は語る。

オンラインとオフラインのギャップをつなぐ

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WeChat(微信)のユニクロ「独身の日」広告

「独身の日」セールは、オンラインだけでなくオフラインでも行われた。タオバオとTモールは、「独身の日」のデジタルクーポンを多数配信したが、これらのクーポンは参加ブランドの実店舗でも利用可能だったのだ。

たとえば、ユニクロは限定デザインの50%ディスカウントをWeChat(微信)に掲載したが、これはTモールと店舗の両方で利用できるものだった。中には「独身の日」終了後でも利用できるものがある。

中国に主力を置くエージェンシー、ラブランドのマネージングディレクター、デニス・サベット氏は同手法を実店舗に客を誘導するための賢い戦略としながら、一方でアリババやTモール、タオバオと提携していないブランドでもこの購買口コミに便乗し、自社店舗での「独身の日」商法を提供できると指摘している。

「これはブランドにとって、eコマースの大手プラットフォームを利用するだけでなく、『独身の日』のトラフィックをより自社に引き込むための試みとなるかもしれない」と、サベット氏は語った。「ブランドは基本的に自身のブランドを構築するため、口コミや『独身の日』の文化的適合性を巧みに利用しているのだ」。

Yuyu Chen(原文 / 訳:Conyac