直近3カ月で見つけた「かなり残念な広告」まとめ:失業中コピーライター(54歳)の告白

このコラムの著者、マーク・ダフィ(54)は、広告業界辛口ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人。米大手Webメディア「BuzzFeed」で広告批評コラムを担当していたが、2013年に解雇を通達された、業界通コピーライター。

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もう2016年なわけだ。大手ブランドで高給をもらっている、最高マーケティング責任者たちは、世界で一番賢いヤツらってことになってる。だから、まったくのゴミみたいな広告を作ったりはしないはずだ。

と思ったら、大間違いなんだよな。

3カ月っていう短いスパンで、ここまでたくさんの大手ブランドがダメな広告を出したのは、ハッキリ言って見たことがない。いいか、この広告、どれも見てはいけない。5秒も費やすのも、もったいないくらいだ。

GE「タコの雨」 by BBDOニューヨーク

「世界よ、君が投げかける、どんな試練にも私たちは準備ができている」。

…だからタコが降ってきても大丈夫と。

世界最大のエネルギー会社のひとつであり、アメリカ最大の環境汚染源と言われているゼネラル・エレクトリックによる広告だ。天からタコが降ってくるなんてことがもしあったとしたら、むしろその原因はGEかもしれない。そういう意味ではGEが準備できてて嬉しいよ、本当。一応このCMはユーモア作品として提供されてるみたいだけど、空から秒速9.8メートルの速度でタコが降ってきてんだから、すべて即死だ。そんな事が起きたら道路なんて、ワケの分からない液体まみれで、歩けたもんじゃないだろう。

コロナビール「ソファ」 by ザ・コミュニティ(マイアミ)

 

「ソファーへ、ちょっと話があるんだ」と、ナレーションが始まった瞬間に、もうオレは自分のラップトップに向かって叫んでた。

「やめてくれぇ!」

「ありきたりな日常に囚われてる気がするんだ…スウェットパンツ着て、TVのリモコン握りしめてさ…」だと? ありきたりな日常はソファーのせいなのか? 瞑想とかして人生の深い意味について考えたらいいんじゃないのか? コロナがその回答なのか? このコピー考えたのは誰なんだ? 見てて恥ずかしくなる、お子ちゃまな広告だ。

AXE「自分の魔法を探せ」 by 72・アンド・サニー(アムステルダム)

やったね! AXEが広告で女性を搾取するのを止めたぜ! 大きな前進!

と、思ったら、今度はミレニアム世代の脳みそが小さい男たちを搾取する方向性に切り替えたみたいだ。

はいはいはい、「多様性」ね。ごちそうさま。

「バキバキの腹筋なんて誰がいるんだよ?」から始まって、「頭脳があれば、見た目なんて関係ない」まで、とにかくコピーが陳腐だ。どっかで胡散臭い「オシャレな若者の気持ちを掴めます」詐欺師にひっかかったのかのかもしれない。

シュウェップス「ジョン」 by ACW グレイ(テル・アビブ)

「マーケティングが〜」なんて教科書知識に入れ込んだあげく、使えないコピーライターになってしまう人材は大量にいるけども、このCMもそんな人材によって制作されたみたいだ。

ジョン・ハーパーの人生は、いま大きく変わろうとしている。
これまでジョンは、うるさい音楽を気にせず聞いていた。
セルフィーだって普通に撮っていた。
へそピアスだって変だと思ってなかった。

でも気づいた。これ全部、もう卒業だ。

だから大人の飲み物「シュウェップス」を飲むと。とにかく商品を売るためのメッセージが、「もう分かったから」と言いたくなるくらい、何度も執拗にあからさまに繰り返される。

フォルクスワーゲン「パーフェクトなトラクション(静止摩擦)」 by No, No, No, No, No, Yes(イスラエル)

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トラクションが完璧な車だから、「安全に家に帰れる」と。

…あっよく見たら家の絵になってる!?

これは幼稚園児向けに作られた広告だと思うんだけど、幼稚園児って車の運転していいんだっけ? まぁ早い段階で商品を売り込むのはアリなのかな。

ダンキン・ドーナツ「#KEEPON(続ける)」 by ヒル・ホリデイ(ボストン)

ミレニアム世代の「応援歌」的なCMがまたひとつ。ミレニアム世代向けのCMは「#継続」して見続けないといけないのかもしれない。

このCMのメッセージはこうだ。これから君ら若者はどうするのかな? 勝ち「#続ける」のかな、負け「#続ける」のかな、でも最高だよね。だって毎日は、まったく新しい素晴らしいことを成し遂げることができる、ありがたい贈り物なんだから!

このコピーを考えたヤツは、ビデオで流れている、毒にも薬にもならない、イライラするほど無害で無意味でポジティブなを毎朝7時から11時まで聞き続けるの刑に処して良い。

何が信じられないって、この広告と歌は、世界中のどんなプロダクトサービスにも使いまわせるくらい具体性に欠けている点だ。葬式屋のCMにだって使えそうだ。

Facebook by エージェンシー不明

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「思い出の場所」「言葉が要らない場所」

最後に紹介するのはFacebookのこちらの広告。地球に良く似た別の惑星で掲載された広告だと信じたい。おそらくその惑星では人類によく似た、でも、もっと知能の低い動物が君臨しているのだろう。この広告写真はRedditとTumblrで見つけたもの。

スペースに限界があるので、劣悪なブランド広告の一つひとつを詳しく紹介することはできない。簡単に紹介すると、感心するくらい下らないホンダ・シビックの「正方形」広告(RPA)や、サムスンの「私たちは皆かたつむりだ」CM(レオ・ブルネット)、そして吐き気さえするこのプリウスのCM(H&Lパートナーズ)も忘れちゃいけない。このCMはこちらさんよりも、ひどくオタクを馬鹿にしてネタにしている。

【 マーク・ダフィ氏の連載<記事一覧>はこちら

Mark Duffy(原文 / 訳:塚本 紺)