「ついで買い」の減少、チョコメーカーが挑む解決策:セルフレジ普及のあおりを受けて

セルフレジを設置するスーパーやコンビニが増加してきた。それが、チョコレートメーカーであるザ・ハーシー・カンパニー(The Hershey Company:通称ハーシーズ)商品の「ついで買い」の大幅な減少につながっている。

「衝動買い」はハーシーズにとって欠かせない収益源だ。リーセスピーナッツバターカップ(Reese’s Peanut Butter Cups)やアーモンドジョイチョコレートバー(Almond Joy chocolate bars)といったヒット商品のメーカーである同社は、次の一手を模索すべく、オンラインでお菓子の衝動買いを誘引しようとしている。

消費者のほとんどは、お菓子売り場でその購入を決めているが、いまだに支払いの際、レジ横に並べられたお菓子を手にする消費者は一定数いる。そんななか、有人レジが減少している事実について、ハーシーズのリテールエボリューション部シニアディレクター、ブライアン・カバナー氏は、「消費者に『衝動買い』をさせるチャンスの減少に直結する」と語る。同氏によれば、かつてすべての購入商品の決済がレジで行われていたが、現在は商品購入の60%がセルフレジで行われており、さらにその10~15%がモバイル端末で行われているという。

VRで「衝動買い」を誘発

7月に発表された四半期の収益報告では、eコマースの売上はひと桁であるものの、ハーシーズにとっては成長事業であることがわかる。ただし、オンラインでレジ横の「衝動買い」を再現することは簡単ではない。カバナー氏は、ほぼすべてのオンラインショッピングが検索からはじまる一方で、消費者は意図的にお菓子を検索しない傾向にあると話す。

そこでハーシーズは、ショッピングを楽しんでもらうためにバーチャルリアリティ(VR)などの新技術の活用を考えているという。先日、同社のイノベーションセンターはオンライン小売業者とコラボした実験を開始。どのオンライン小売業者かについて名前を公開していないが、同社の「ショッピングはどこでも出来る」という発想に基づいたこの実験では、VRヘッドセット「HTC Vive」を装着して、リビングルームなどあらゆる環境でさまざまなブランドや商品カテゴリーを見て楽しむことができる。そしてビューワー(消費者)がブランドや消費カテゴリーをクリックすれば、ペットボトルの紅茶やリーセスピーナッツバターカップなどのオプションが表示されるVR体験となっている。

カバナー氏は、購入検討する際に活用できる選択ツールとして、バーチャル体験が可能な ショッピングアプリの可能性に注目している。消費者がVRゴーグルを装着し、バーチャルの店舗を歩き回ってショッピング体験をすることで、自身では意図的に検索しないであろうハーシーズのお菓子がVR体験で偶然、消費者の目に入る可能性が高まると期待を寄せている。

VRが秘めている可能性

VR広告プラットフォーム、オムニヴァート(OmniVirt)の共同設立者マイケル・ラッカー氏は、VRは小売ブランドには大きな可能性を秘めているという。たとえば、消費者はVRを使って店舗に在庫がない新商品を試すことができる。そして小売ブランドは、VRを使って消費者が探している靴の色や、実際に購入を決めるまでに商品を吟味する平均時間を把握できる。

「VR経由で取得できるデータ量は膨大で、VRが小売にもたらす可能性は非常に大きい」と、ラッカー氏。

しかし、いまのところ、VRは消費者にさほど普及しておらず、没入型のVR体験を開発するためにブランドが負うコストは高額となるだろう。そのため、しばらくは実態よりも誇大に宣伝されている技術となりそうだ。

VR以外の技術にも注目

VRとは別にカバナー氏のチームは、あるスーパーマーケットチェーンとコラボし、チェーン店のWebサイト上で、季節に合わせた売り場を展開する取り組みを実施した。これにより、訪問者はWebサイトで商品を検索する代わりに、イースターなどテーマごとに整理されたオンライン売り場を体験できるようになった。

また物理的な制限がないため、サイト上では要冷蔵の商品とそうでない商品を並べることができる。カバナー氏によると、この取り組みの結果、消費者は自分では検索しないような商品が目に留まることで購入額が通常の3倍となり、売上アップにつながったという。

またチームは、モバイル端末で注文し、店頭で商品を受け取る消費者に、リマインダー送信するサービスの試験的な実施を、小売業者と共同で計画している。たとえば、消費者が小売のアプリ経由で商品を注文した場合、決済するときに以前購入した商品を追加するかどうかを尋ねるリマインダーがアプリから送信される。

実店舗も見捨ててない

デジタルを重要視する一方で、ハーシーズは実店舗のお菓子売り場をさらに魅力的にするため、小売業者とともに取り組みを続けている。カバナー氏は、人目を引くデザインの売り場では、消費者は買い物リストにないお菓子を購入することがハーシーズの自社実験で明らかになったという。

「実店舗はまだまだ終焉を迎えたわけではない。だから店舗販売からの撤退は考えていない。私たちは小売業者とともに、これまでと同じ長さ60フィート(約18メートル)の売り場で、消費者を惹き付ける取り組みにも邁進していく」と、カバナー氏はコメントした。

Yuyu Chen(原文 / 訳:SI Japan)