モデル写真は「未加工」が最新トレンド?:ありのままで収益21%アップした下着ブランド

10代をターゲットにしたファッションブランドが利益減に苦しむなか、ランジェリーブランドのエイリー(Aerie)は好調が続く。ありのままの人々の姿を肯定的に捉えた結果だと、同社は分析しているという。エイリーが2014年から現在まで展開しているキャンペーンでは、ブランド画像、マーケティングで使用される画像のフォトショップ編集を禁止しているのだ。

「キャンペーンをローンチして以来、私たちの顧客からはポジティブな反応を受け取っている。その結果、売上と収益が急速に伸びている」と、エイリーのグローバル・プレジデントであるジェン・フォイル氏は、リファイナリー29(Refinery29)に語った。

2015年、エイリーの収益は20%上昇。親会社であるアメリカン・イーグルは、それに対して7%の伸びに留まった。同社の発表によると、2015年、エイリーのメディアインプレションはなんと40億に達したという。2016年の第三四半期の収益は、この11月30日に公開され、それは21%の増加と前年をさらに上回る勢いを見せている。一方のアメリカン・イーグルの増加率は、2%であった。ブランドごとの細かい売上のデータは公開されていない。

あらゆる体形を受け入れる

エイリーの成功からわかるのは何か。それはあらゆる体形をポジティブなものとして捉える「ボディ・ポジティビティ(Body Positivity)」というトレンドは、ブランドイメージだけでなく、収益の面でもメリットがあるということだ。カスタマーが本当に気にかけていることが何か、それをちゃんと特定し、そこに投資した結果、ブランドで溢れかえったリテール市場において、堅実な足場を確保したといえる。

マーケティングキャンペーンでよく使われる体形はサイズ0からサイズ4というのが典型的だが、現在のファッション業界では体形とサイズの多様性大きな議論のポイントとなっている。このポイントに上手く入り込む形で、エイリーは従来のランジェリーブランド(たとえばビクトリアズ・シークレット)との差別化を図っているのだ。

エイリーはモデルの体形をフォトショップなどで編集することを止めた。それによって、多くのポジティブなメディアからの注目を受け取っているが、実際はこれはもっと大きな問題に関連している。エイリーは変わりゆく消費者に対応しているのだ。ほかのブランドが画像編集をすぐに止めることはおそらくないだろう。しかし、それでもほかブランドがエイリーから学べることは多くある。

消費者中心のブランド運営

ニューヨークのエージェンシー・ケトル(Kettle)のシニア・ソーシャル・ストラテジストであるクリス・ギルバート氏は、「本当の責任はオーディエンスとより良くコネクションをつくることだ。そのために何が必要であっても。(あらゆる体形を)受け入れるポリシーを、ブランドの中核に据えているブランドは、その成果を得つつある」と語る。

かつて、何がトレンドかはファッションブランドが決めていた。しかし、それは変わりつつある。いまでは消費者自身が、ブランドの注目をどんどんと集めるようになっている。しかし、この消費者を中心に据えたブランド運営は、ファッション業界が長年取り組んできた「あこがれ」を売る、という理念とぶつかる。ラグジュアリーブランドであればそれは顕著だ。

「フォトショップやレタッチを止めるのは、主流のアプローチではない。ファッションは『あこがれ』を売るものである。なので現実より良く見せるのは問題ないとされている。あこがれのイメージへとつながるのであれば、必ずしも嘘偽りにはならない」と、エージェンシー・ロニー(RONY)のファウンダーであるロニー・ザイダン氏は語る。

ブランドとユーザーの断裂

いわゆる消費者に向けて夢を描く、もしくは消費者データを分析するという、従来通りのファッションマーケティングがいまだ堅実だ。「あこがれ」が収益につながるという考えを多くのブランドが信じている。ソーシャルメディアがどんどんと民主主義的なアプローチを見せてきているものの、特にラグジュアリー・ブランドはまだその考えを固くもっているとギルバート氏はいう。

「ファッションにおける従来的な考え方と、民主主義的なソーシャルなスペースはちょっとした断裂を生み出している。ミレニアル世代がリーダー的な地位へと上っていくなかで、そのシフトはさらに進化するだろう。彼らのブランドは古くから続くブランドとは違った方法で経営されるはず。そういった意味での政権交代は今後起きてくるだろう」。

エイリーは10代や20代の女性をターゲットにしている。ソーシャルメディアを通してそうした若いカスタマーとの会話を続けた結果、ありのままの自分を反映しているブランドを求めているということに気づき、モデルのフォトショップを止めることにしたという。

「リアルさ」を売るアプローチ

オンラインのファッションリテールであるモッドクロース(Modcloth)はあらゆるサイズに対応したコレクションを展開しており、キャンペーンではモデルではなく「リアルな人々」を中心に据えている。モデルを前面に出す場合は体形はさまざまであり、フォトショップ編集は行われていない。

モッドクロースは2014年に1500人のアメリカ人女性を対象にアンケート調査を行ったと、共同創設者であり最高クリエイティブ責任者であるスーザン・グレッグ・クローガー氏はいう。その結果、67%の回答者が、リタッチやフォトショップを限定的にのみ使う会社から買うと答えていた。

「業界では比較的まだ珍しい取り組みだ。視覚的にも私たちのブランドは、それによって差別化ができていると思う」。あこがれを売るようなブランドにとっては、この「リアルさ」を売りにするアプローチは機能しないかもしれない。しかし、カスタマーと繋がりをもつ方法はほかにもある。

カスタマーと繋がる方法

「あこがれや夢を描くこういったブランドにとって、エイリーが築き上げてきたカテゴリーは矛盾するように見えてしまう、ラグジュアリーブランドが『リアルさ』の流れにシフトしない理由はそこにある。しかし、ブランドの考える『多様性・いろいろな要素の受け入れ』の定義は、カスタマーはブランドにどんな部分を反映して欲しいのかを学ぶなかで広まりつつあるのだ。それは年齢かもしれないし、人種かもしれない」と、TDA_ボールダー(TDA_Boulder)の戦略ディレクターであるコンスタンス・デチャーニー氏は説明する。

デチャーニー氏によれば、ファッションブランドは、身体的スタイルが皆「同じ」であることでマーケティングするブランドも存在し続ける一方で、その考えに真っ向からぶつかるブランドもまた歓迎されるだろうということだ。それは30歳以上のモデルを起用するということかもしれないし、欠点を写真から消すことをしないということかもしれない。

欠点を受け入れて見せるという考えは、ファッション業界ではまだ議論を呼ぶトピックだ。「特にビューティファッションのカテゴリーはあこがれや、私たち女性が手に入れたいと思っている理想の形を基礎に作り上げられている」とデチャーニー氏。

真実を悟ったわけではない

しかし、多様性やありのままの自分らしさを謳ったマーケティングは、響きが良くてもそれは利益のために行っているという点で注意が必要だ。いまでは成功しているように見えるエイリーも、大きめの体形向けの服を実際の店舗で売っていないとして批判を集めたことがあった。

エイリーのプラットフォームが「すべての体形を祝福する場所」であると定義付ける(これはフォイル氏の言葉だ)ことで、本格的に大きなサイズのラインを展開することを避けている(エイリーのブラジャーは一番大きいのがサイズ40Cとなっている)。エイリーはこうした戦略で上手く経営されている。

ブランドたちが真実を悟ったというわけではない。いま起きているのは、ブランドが『ボディ・ポジティビティ』をマーケティングチャンスとして、競合他社との差別化を図ることができる絶好の機会と捉えているだけだ」と、ランジェリー・ムーブメント・ブログ(The Lingerie Movement blog)の創設者であるコーラ・ハリングトン氏は説明した。

Hilary Milnes(原文 / 訳:塚本 紺)