ビットコイン、小売業界で普及しないのはなぜか?:「受け入れは実質的にほぼゼロ」

ビットコインの価格が4000ドルにまで上昇したことで、投資商品として人々の興味を惹き続けている。その一方でビットコインが苦戦を強いられているのは一般小売分野だ。その理由として、ビットコインという仮想通貨を獲得するためのいくつかの面倒な作業、カスタマー体験における困難、そして小売業者が負わなければならない余分な作業などがあげられる。

「参入するのが非常に難しい」

「ビットコインを強く推しているが、アメリカの小売産業に関しては現実的にならざるを得ない。小売産業はビットコインが参入するのが非常に難しい分野だ」と語るのはシリコンバレーを基盤にするベンチャーキャピタル、プロペル・ベンチャー・パートナーズ(Propel Venture Partners)のパートナーであるライアン・ギルバート氏だ。

モルガン・スタンレーが先日公開したレポートも、ビットコインが決済手段として小売に受け入れられるスピードの遅さを指摘している。そこでは「受け入れは実質的にはほぼゼロであり、縮小している」という。世界のトップオンライン販売店のうち3店舗のみがビットコインを決済手段として受け入れているとのことだ。しかし、マイクロソフト、ニューエッグ(NewEgg)、ビデオゲームプラットフォームであるスチーム(Steam)といったグローバルブランドによる取引10億ドル(約1000億円)以上を処理したと、ビットコイン決済プロセッサーであるビットペイ(BitPay)は述べている。

もしも小売業者たちがダイレクトにビットコインを決済手段として受け入れた場合、ビットコインの価格が急激に上昇もしくは下落したときの税金処理を自らで判別しなければならないというリスクを背負うことになる。「ビットコインを受け入れると、ビットコインを集めることになる、けれどもリテーラーとしては米ドルで必要な支払いを行わないといけないわけで、価格上昇や価格下落にどう対処するのか? また税金申告という側面は常に関わってくる」と、ギルバート氏はいう。

「大きな摩擦が起きている」

小売で仮想通貨を受け入れるところは少ないため、ブランドが利用しようとする場合は、コインベース(Coinbase)やビットペイ(BitPay)、ゴーコイン(GoCoin)といった第3者の決済業者を使わないといけない。ビットペイは、ビットコインを使ってビザのプリペイドデビットカードに金額を入金できるデビットカードシステムを提供している。

オンラインでの消費者向けブランドで、ビットコインを決済手段として受け入れているのはエクスペディア(Expedia)、オーバーストック(Overstock.com)そしてショッピファイ(Shopify)などのストアだ。報道によるとオーバーストックは1週間に10万のビットコイン取引を行っているという。これは3年前に決済手段として受け入れを開始した当時の3万と比べると大きく増えている。2014年にビットコインを決済手段として利用開始したエクスペディアはコインベースを使っている。コインベースはカスタマーによるビットコイン取引を米ドルへと変換している。

ビットコインによる決済をダイレクトに受け付けないかぎりは、カスタマー体験はスムーズにはいかないようだ。オンライン掲示板レディット(Reddit)ソーシャルメディア上ではカスタマーたちがその不満の声を書き込んでいる。エクスペディアからはこの件に関してコメントを得られなかった。

「非常に大きな摩擦が起きている。人々はビットコインは資産になると考えているだろうが、そうした基準は政府の規制団体の判断をもとに考えるべきだ」と、ギルバート氏は語る。

「海外送金に勝ち目がある」

ビットコインは利用するのも獲得するのも高価だ。そのため消費者は決済手段というよりは投資商品として考えている。「貨幣として使用されるには利用がよりシンプルになる必要があるし、使うこと自体が高コストではないと感じられるようにならないといけない」と、取引コストについて語ったのは、セレント・リサーチ(Celent Research)のディレクターであるブラッド・ベイリー氏だ。

ビットコインが従来の銀行と比べて比較優位を維持しているのは国境を越えた決済が発生する場合だろう。これは従来の決済手段を用いてもそのコストが高いためだ。「送金には、ビットコインの勝ち目が存在している。国境を越えた取引は非常に高く、ここでビジネスを行っているマネーグラム(MoneyGram)やウェスタン・ユニオン(Western Union)と競争すれば、ビットコインははるかにシンプルで簡単だ」と、ギルバート氏はいう。

さらに米国外にいる消費者にとっては、ビットペイのクレジットカードが必要ない形態は非常に有り難い。「現在はクレジットカードを持っていない消費者が決済しなければならない状況でビットコインがグローバルに活用されている。その場合、金融機関での取引と比べて安く、早い。しかし、アメリカではほとんどの消費者がクレジットカードを持っているため、ビットコインが大多数の消費者の現実的な課題を解決するところまでは来ていない」と、ビットペイの最高コマーシャル責任者であるソニー・シンフ氏は述べた。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:塚本 紺)
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