大手銀行は、なぜフィンテック新興企業を支援するのか?

金融テクノロジー(フィンテック)は大手銀行にとって破壊的な力になる言われてきたが、新興企業向けアクセラレータープログラムの成長を見ると、銀行がそういう見方を変えようとしていることがわかる。

「フィナンシャル・ソリューション・ラボ」(Financial Solutions Lab:略称フィンラボ[Finlab])は、JPモルガン・チェース(JP Morgan Chase)が資金を提供し、金融サービス・イノベーション・センター(Center for Financial Services Innovation)が運営する8カ月間の新興企業向けアクセラレータープログラムだ。金融サービスを十分に受けられない層に向けたツール開発を手がける新興企業を対象に、現在は3度目の募集を行っている。これは、銀行が新興企業と競い合うより、いかにしてパートナー関係を築こうしているかを示す例であり、ここ数年で急に強まったトレンドでもある。

サンフランシスコに本拠を置くプロペル・ベンチャー・パートナーズ(Propel Venture Partners)のパートナーであるライアン・ギルバート氏は、「何よりもまず、大手企業は新興企業とうまくやっていけること、新興企業の取り組みに直接的、間接的に投資していることを示す必要がある」と説明する。

現代的な蜜月関係

アクセラレータープログラムは、初期段階にある企業がアイデアを構想段階から先に進める手助けをする。こうしたプログラムの目標は、銀行が自力ではすぐに育成および開発するのが難しい外部の人材や新製品を育成することだ。バークレイズ(Barclays)やウェルズファーゴ(Wells Fargo)、シティバンク(Citibank)など、ほとんどの大手銀行は、独自のアクセラレータープログラムを用意している。JPモルガン・チェースにも、フィンラボのほかに「イン・レジデンス」プログラムなどがいくつかある。

「我々が企業として、保有する資産や専門家ネットワークを提供し、初期段階のフィンテック・イノベーターが次のレベルに進む手助けをするところに原動力がある」と語るのは、JPモルガン・チェースのコミュニティー・イノベーション担当エグゼクティブ・ディレクターであるコリーン・ブリッグス氏だ。銀行にとっては、技術に関して動きの素早い新興企業と密接に手を組んで仕事をすることもメリットだ。流動的な状態が続く業界に、新たな才能を流入させる好機となるからだ。

フィンラボがはじまったのは2年前で、選ばれると現金25万ドル(約2800万円)と個別指導や情報交換のチャンスが与えられる。毎回8~9社の企業が対象に選ばれている。選ばれた企業は、米国内の各地で開催される一連のワークショップに参加し、法規制についての勉強会など、ビジネスを大きくする方法を学んでいく。参加者たちによると、企業や行政、非営利団体などと接点ができることで恩恵を受けているという。

初期の成功事例

エバーランス(Everlance)の最高経営責任者(CEO)で、フィンラボの第2期卒業クラスのメンバー、アレックス・マーランテス氏は次のように語る。「銀行との関係が必要な場合、彼らとパートナーになるには1年半以上かかることもある――彼らは相手を綿密に調べ、リスクを背負う価値がある相手かどうかを見極めなければならない。このプログラムでは、そんな銀行とパートナーになれる。規制当局との話し合いのテーブルにつく手助けもしてくれる」。

代金支払いアブリ「プリズム(Prism)」は、第1期プログラムにおける初期の成功例のひとつだ。フィンラボ参加から1年たたないうちに、プリズムはペイニアミー(PayNearMe)に買収されたが、これは、プログラムが提供している個別指導制度が可能にした大きな出来事だった、とタイラー・グリフィン氏は言う。グリフィン氏は現在、金融サービス・イノベーション・センターのイン・レジデンス起業家となっている(グリフィン氏はプリズムの共同創設者だが、プリズムはすでに退社している)。

大手銀行はこうしたプログラムを支援し続けるだろうと、ギルバート氏は言う。関係作りのためだけでなく、新興企業は大手では対応できない領域の課題に取り組んでいるからだ。

「『このプログラムに関わりたい、新興企業のエコシステムを学び、我々がよいパートナーになれることを示す方法だ』という企業が、今後ますます増えるだろう」。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:ガリレオ)
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