マッカラン「ボットの発話は人間に似すぎてはいけない」

英スコットランドの老舗スコッチウイスキーブランド、マッカラン(The Macallan)にとって、デジタルは核となる信条だ。同社は、Facebookの新たな「Messenger(メッセンジャー)」チャットボットを使った実験が、マーケティング拡大における次のステップになることを期待している。

マッカランは9月中旬、ウイスキー分野で初のチャットボットをローンチした。Facebook上で利用できるこのボットは、「カスクって何?」といった問いに答えて顧客を教育すると同時に、正しいウイスキーの選び方を指南し、それを購入できる場所まで案内してくれる。

同社の担当者は、これは自然な進歩だと述べている。マッカランのソーシャルチャネルのうち、成長がもっとも速いインスタグラムのアカウントでさえ、ミレニアル世代、特にいままでウイスキーを飲んだことがないような人々に合わせて、ライフスタイルを提案するコンテンツ制作に注力してきた。なお、マッカランのインスタフォロワー数は、前の四半期だけで250%増え、7万3000人となっている。

このチャットボットは、Messengerで「Did you know?(知っていましたか)」シリーズを繰り返し表示する。そこでは、ウイスキーとよく合う食べ物や、ウイスキーの飲み方、英語のスペルは「whisky」と「whiskey」のどちらが正しいか(公式記録によると、スコッチウィスキーの場合はeがない)など、ウイスキーに関する疑問に答えてくれる。

「我々は、この分野において常に革新することを望んでいて、何者であるかを伝える技術をテストしている」と、同社は述べている。今回の記事では、マッカランがチャットボットの実験を通して、これまでに学んだことを紹介していこう。

オーディエンスにセールを案内することのメリット

チャットボットは、教育的な効果をもたらすと同時に、自分に合ったウイスキーを探している人を購入できる場所へと案内してくれる。ローンチから2週間で、チャットボットが獲得したエンゲージメントは1600件だ。「究極の目標は購入してもらうことだが、すぐに買ってもらえなくてもいい」と、マッカランのデジタルマーケティング部門を率いるサマンサ・レオッタ氏は語る。「我々はこれを使って、当社のほかのチャネルについても情報提供していく」。

ボットの発話は人間に似せるべきだが、似すぎは逆効果

レオッタ氏は、絶えずボットに調整と改良を加えていると話す。困難を極めたのは、ブランドのトーンに合う言葉遣いを決めることだった。「これは、我々のブランドにユーザーが期待することでもある。特に、このような1対1のやり取りでは大切だ」と、レオッタ氏は語る。

たとえば、ボットはユーザーに「マッカランの創業がいつか知っていますか?」と尋ねるかもしれない。ユーザーに選んでもらう回答の選択肢のひとつに、「I don’t believe so(知らないと思う)」がある。これはマッカランにふさわしい、比較的堅い表現だ。

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ボットはまた、あらゆる種類の質問を予想する必要がある。これまでに寄せられたボットに対する主な不満のひとつに、会話がぎこちない感じがする、というものがあった。

だが、レオッタ氏は、それで構わないと考えている。同氏がこれまでに学んだのは、顧客たちは自然な対話をしたがるが、ボットの話し方が人間に似すぎるのは嫌がるということだ。「ボットはフォーマルな話し方をしなくてはならない」とレオッタ氏。「話している相手が人間でないとわかること。それがいいのだ」。

シンプルに保つ

マッカランは、オーディエンスを混乱させすぎないよう、質問される内容を徹底的に予想している。「やり取りの筋道は、明快でなければならない。我々は徹底的にテストして、自然な会話のように流れることを確かめた。相手が質問を重ねるごとに、段階的に情報を明かすようにしたのだ。我々はまた、相手が途方に暮れたり、お手上げになったりしないようにする必要もあった」と、レオッタ氏は振り返る。

ブランドのボットにはブランドのストーリーが必要

パブリッシャーはボットを利用してコンテンツを提供できる。同様に、ブランドが伝えるべき明確なストーリーをすでに持っているなら、チャットボットは最高の働きをする。マッカランの場合、そうしたストーリーに該当するのは、スコットランドの豊かな伝統だ。

「マッカランには、ウイスキーの製法に関する豊富なストーリーがあり、人々は純粋に関心を示してくれる」と、レオッタ氏は話す。加えて、昨今はウイスキーの文化的地位がある程度高まりつつあると、レオッタ氏は感じている。

マッカランはウイスキー試飲イベントを英国内各地で開催。その参加者はミレニアル世代で、しかもほぼ半数は女性だという。ウイスキーに明るいことはクールなので、その世代の消費者にとって、すでに身近な媒体を通じて指南できるボットは、まさに理にかなっているのだ。

Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)