ベライゾン、通信費をブランドが支払う新料金体系を導入

多くのデータ量を求める顧客が増えるなか、ベライゾン・ワイヤレス(Verizon Wireless)は、コンテンツを提供するメディア企業が通信費を負担する、新たな料金体系をトライアルとして導入した。

2016年1月19日、ベータ版としてローンチされたこの新たなサービスは、「フリービーデータ(FreeBee Data:「FreeBee」は無料提供という意味)」と呼ばれる。このベライゾンのプランに参入している企業のコンテンツにアクセスをすると、その通信費用はコンテンツ提供企業が負担するというもので、ユーザーのデータ通信費には一切課金されないという。

この新たなサービスにより、「コンテンツのストリーミングやダウンロード時に、さらなる柔軟性を顧客に提供できる」と、ベライゾンは説明する。しかし、トライアル期間中のコンテンツ提供社は、ハーストマガジン(Hearst Magazines)とベライゾンが所有するAOLの2社しかいない。

ベライゾンはブランド企業やパブリッシャーに対して、クリックベースでの課金を実施。最大30秒までの動画のスポンサー契約や、30分までのオーディオストリーミングなど、ほかのオプションも用意している。バナー広告と同様に、コンテンツにアクセスしたユーザーは、コンテンツを見る前に「スポンサーメッセージ」がポップアップで表示され、また、コンテンツの視聴中には企業からのメッセージが書かれたバナーが表示される。

なお、米DIGIDAYは携帯電話にアドブロックをインストールしている場合、このサービスを利用できるのかを問い合わせたところ、ベライゾンは回答しなかった。

「不公平」が存在するとの声も

「現在のデジタル経済の世の中で、この新たな『フリービーデータ』は、これまでのワンパターンなマーケティング手法からの決別だ」と、ベライゾンは発表時に声明をだし、「消費者の日常に価値と有益性を与えられるこの機会は、今後ブランド企業やパブリッシャーたちが、どう顧客と向き合っていくのかを根本的に変えることになるはずだ」とコメントした。

このベライゾンの新たな試みは、日常的に同サービスのスポンサー企業のコンテンツを視聴している消費者にとっては有益に聞こえるが、一部の評論家の間ではネットの中立性を損なうとして批判の声が挙がっている。これは、ユーザーが使用したサービス通信費用を支払うことができないブランドやパブリッシャー企業にとっては不公平だからだ。

この試行的なトライアルは「ゼロレーティング」とも呼ばれていて、通信キャリアが特定の記事へと通信する場合、キャリアのデータキャパシティーが消費されないことをいう。たとえば、米大手通信事業、Tモバイル(T-Mobile)が音楽ストリーミング配信サービス「スポティファイ(Spotify)」と映像ストリーミングサービス「ネットフリックス(Netlix)」のコンテンツをユーザーに通信費無料で提供する「ブリングオン(BingeOn)」を発表した際、大きく話題になった。

ネットの中立性を保つため

「このベライゾンの新たな試みは、資金が潤沢な企業だけに好まれるシステムだ。大学、コミュニティーグループ、ファンクラブ、自己啓発型ディスカッショングループやWikipediaなどの非営利型のメディアやパブリッシャーにとっては、競争面での大きな障壁となる」と、デジタルでの自由な言論の権利を主張する非営利組織、エレクトリックフロンティアファウンデーション(Electronic Frontier Foundation)のシニアグローバルアナリスト、ジェレミー・マルコム氏は、米DIGIDAYに語っている。

事実、FCC(連邦通信委員会)は、2015年に米政府がネットの中立性を確保することに対して支持する姿勢を示したことから、Tモバイルやコムキャスト(Comcast)など、通信費無料のサービスを展開している企業を招集し、「何が起こっているか、把握しておくため」と、各企業に通達しているという。

Jordan Valinsky(原文 / 訳:BIG ROMAN)
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