ラクロアの成功に学ぶ「マイクロインフルエンサー」活用術:より小さい魚を追い求めること

「ラクロワ(LaCroix)」は、競争が激しいスパークリングウォーター(炭酸水)市場への参入にあたり、デジタルマーケティングにもまったく新しいアプローチをとった。

近年のラクロワ人気の上昇の背景には、そのネオンカラーのパッケージや、飲料業界全体の状況の変化とともに、通常とは異なるマーケティング戦略がある、と専門家たちは言う。ラクロワは、ネスレ(Nestlé)の「ペリエ(Perrier)」やペプシの「アクアフィーナ(AQUAFINA)」のような競合製品とは違って、テレビ広告を一切出さず、代わりにソーシャルメディアで一般参加型のキャンペーンを実施し、「信頼性と発見」を求めるミレニアル世代のハートをガッチリつかんだ。

巧みなソーシャル戦略

エージェンシーのPMデジタル(PM Digital)でソーシャルメディアおよびコンテンツ担当ディレクターを務めるトニー・ボックス氏は、「この製品はネオンカラーのパッケージングによって、瞬く間に人気が出た。インスタグラムのようにビジュアル中心のソーシャルプラットフォームで、人々がこれを手にポーズを取るのも当然のことだ」。

たとえばラクロワは最近、「Whole30(ホール・サーティー)」プログラムに肩入れしている。Whole30は最新流行のダイエット法で、1カ月間のクリーンイーティング(食生活改善)プログラムだ。ラクロワは「#Whole30approved」というハッシュタグを使って、プログラムを実戦している愛好者たちの写真をクラウドソースで掲載している。

ラクロワはさらに、ラクロワを使ったカクテルやモクテル(ノンアルコールカクテル)のレシピを広げる場として、ソーシャルメディアを利用し、「#LaCroixlove」や「#LiveLaCroix」というハッシュタグを使うようたびたび推奨もしていると、ボックス氏は述べた。ライフスタイルをメインに扱うブロガーたちも、「Pinterest(ピンタレスト)」にラクロワを使ったオリジナルレシピを投稿し、共有している。

より小さい魚を追い求めること

ラクロワの前デジタル戦略担当者だったアルマ・パンタローカス氏は、自身のLinkedInプロフィールで、ラクロワは特にインスタグラムに着目してきた、と述べている。ラクロワはインスタグラムというプラットフォームについて、「エンゲージメント率の高いミレニアム世代」の利用が多く、「生活のさまざまな段階や場面で我が社の製品を使うようインスパイアできる」というふうに考えているそうだ。こうした重点があるからこそ、ラクロワはインスタグラムを非常に魅力的なプラットフォームと捕らえ、2015年の8カ月だけでそのベースユーザーを4000人から4万人にまで増やしていった。

フォロワー数の多少に関わらず、ブランドにタグをつけてくれる人々と関わっていくことは戦術のひとつだ。2016年5月、プロのマーケターであるケリー・フォックス氏は、2500人いる自身のフォロワーに向けて、ラクロワの缶を写した写真を数枚投稿して、ブランドのタグをつけた。するとラクロワはすぐに、数ケース分の製品引換券をフォックス氏に送った。

「これは純粋に、私が製品の支援者になったことに対する報酬だと思う。私は、大勢のフォロワーがいる有力なインフルエンサーのように、ほかのいろいろなブランドのために、こういう投稿はしない。大きな魚ではなく、より小さい魚を追い求めることは、ブランドにとって賢い戦略だ」と、フォックス氏は語った。

乗り変えたら事業に失敗する?

業界の専門家たちもこの意見に賛同する。ラクロワは、製品と魅力ある「草の根の」インフルエンサーへのアプローチをブレンドする賢い方法を見つけたと、PMデジタルのボックス氏は言う。「何万というフォロワーがいるようなインフルエンサーを追うのではなく、ラクロワは、150人ほどしかフォロワーがいないようなインスタグラムユーザーのコンテンツを、同社のフィードで積極的に共有している。こうした行為は、ブランドに信頼性とコミュニティーベースの感覚を与えている」。

スパークリングウォーターは米国において成長中の市場で、ウォールストリート・ジャーナルは、ベバレッジ・マーケティング(Beverage Marketing Corp)の調査結果として、2015年に26%成長したと報じている。そのなかでもラクロワは、無糖飲料ブランドとしてもっとも早いペースで成長しており、市場調査会社のユーロモニター・インターナショナル(Euromonitor International)によると、ラクロワの売上は過去2年で2倍以上の2億2557万ドル(約240億円)にまで伸び、3億3940万ドル(約360億円)のネスレのペリエに次いで2位につけているという。

誕生から30年を迎えるラクロワは、健康志向の強い人はもちろん、シリコンバレーのヒップスター(流行に敏感な人たち)に選ばれるブランドになった。サンフランシスコのベイエリアに住み、米大手チケット売買サイト企業スタブハブ(StubHub)で働いているエレイン・ストラウス氏は、「最近では、炭酸水をラクロワから『トーキングレイン(Talking Rain)』に変えたら、そのスタートアップ企業は事業に失敗する、というジョークをよく耳にする」と、教えてくれた。

宝くじに当たるようなもの

だが、ネスレはフレーバーを増やしているし、ペプシやコカコーラも低カロリーの炭酸飲料への投資を増やしているので、競争はますますヒートアップしている。インフルエンサー・エージェンシーのバイラル・ネイション(Viral Nation)で最高経営責任者(CEO)を務めるジョー・ギャリーゼ氏によると、このことは、ラクロワがオーガニックなエンゲージメントを超えて考えていく必要があることを意味するという。

ギャリーゼ氏は、「これはユニークなやり方だ。ラクロワが実施しているオーガニックなリーチは、ソーシャルメディアの宝くじに当たるようなものだ。いままでは弱い立場が有利に働いてきたが、ここから先は、この勢いを利益につなげていく必要がある」と述べた。

Tanya Dua(原文 / 訳:ガリレオ)