eスポーツ組織をブランドに仕立てた、ゲーマーCEOの1日:「我々はゲーマー心を理解している」

スティーブ・アーハンセット氏は異色の経歴の持ち主だ。彼はプロレベルのゲーマーであると同時に、米経済界においてファイナンシャルプランナーとして10年間過ごした。

「私はプレイヤーとして、ゲームで名人の域に達するために何が必要かを理解している。チェスで10人相手に同時対戦する、というようなことだ」と、彼は話す。しかし、多くのゲーム仲間と同氏が違う点は、ビジネスチャンスをも見出だせることだ。

アーハンセット氏は、チームリキッド(Team Liquid)という、eスポーツ組織の共同CEOを務めており、同チームは賞金が数十万から数百万ドル(数千万から数億円)ともいわれる、ゲームトーナメントへスタープレイヤーを送り込む。さらにチームリキッドは、チーム関連商品や自社メディア制作部門も有しており、自らをブランドとして確立している(ヨーロッパのサッカーチームのように)。

アーハンセット氏は語る、「共同CEOとは何なのか、Googleで調べないといけなかった」

アーハンセット氏は語る、「共同CEOとは何なのか、Googleで調べないといけなかった」

アーハンセット氏はサンフランシスコにある組織本部で、数々の強豪チームを所有。それぞれが、「リーグオブレジェンド(League of Legends)」や「コールオブデューティ(Call of Duty)」といった異なるタイトルをプレイしている。ここでは、「キャンディクラッシュ(Candy Crush)」の話は出てこない。これはバスケットボールやフットボール、ラグビーチームを同じ屋根の下で抱えているのとたいして変わらないと、彼は説明した。

そして、それまで関連性の低かったブランドが、徐々にeスポーツへの関心を高めるころにアーハンセット氏は、スポンサーやパートナーと有益な取引を行うようになっていた。台湾の携帯メーカーHTCや清涼飲料水のモンスターエナジー(Monster Energy)の2社が、すでに取引相手となっている。

eスポーツ広告塔の上位にいる彼の1日を紹介しよう。この日、彼はロサンゼルスのステープルズセンターで行われた「リーグオブレジェンド」のワールドチャンピオンシップ2016に参加していた。内容を一部読みやすく編集している。

◆ ◆ ◆

07:00 am 目覚ましが鳴り響く。私はサンタモニカにある、当社のゲーム施設内で生活し、仕事をしており、起床後すぐに、だいたい10フィートほど先のリビングまで歩いて行って、コンピューターにかじりつく。当社はオランダにもオフィスがあり、向こうではすでに1日の半分が過ぎているので、緊急の要件がないかどうか確認。忙しいときは目が覚めた瞬間から水中にいるような感覚をおぼえる。朝食にはベーグルをトーストして、低脂肪のクリームチーズを添える。そしてスターバックスに電話して、クアッドグランデ・アイスバニララテを注文しておく。そうすれば車で立ち寄ってハザードを出し、すぐに受け取れる。

08:00 am 忙しくなる前にメールを確認。我々の業界では、特にチーム関係はたいてい夜間に動くので、朝は静かだ。メディアデッキで、我がチームの最新の統計やリーチ数(現在SNSでは620万)も確認。のちほど、いくつかの外部スポンサーとミーティングの予定を抱えているからだ。

09:00 am 共同CEOのビクター・グーセンズと、我々にちょうどいいスポンサー数を相談し、決定した。大きな戦略を決めるとき、我々はいつも話し合う。この職に就く以前、私は共同CEOについてGoogleで調べなければわからなかったのだが、本当に素晴らしく機能している。ビクターは(マイヤーズ・ブリッグスの性格診断で)ISTJ型(まじめでコツコツしている)で私はENTP型(生まれながらの起業家)の性格、これは思いがけないことだと、相性の診断結果も示している

10:00 am 従業員が出社してくる。HR(人事)の改善策を立てている経理担当者と法務や会計についてミーティング。組織が成長するにつれ、スタッフを増やしてきたが、自然と苦労も増えてくる。いまは大まかに50名の正社員と100名のそれぞれ契約を結んだスタッフがいる。

11:30 am 最低でも週4回は家から1ブロックほどのクロスフィットへと走る。そこでは高負荷のインターバルトレーニングを行うが、終わるころには吐きそうになったり、気絶しそうになってしまう。かなり楽しい。

01:00 pm オペレーションディレクター、ゼネラルマネジャーと車でロサンゼルスのダウンタウンに向かい、当社のパートナーのひとりとL.A.ライブでランチミーティング。Q1・2017のプランを練ったり、現在準備中のマジック・ジョンソン氏とのパートナーシップについて話し合う。

02:00 pm 「リーグオブレジェンド」の当社チームのゼネラルマネジャーと会う。いま、「リーグオブレジェンド」はオフシーズンで、プレイヤーのトレードに関する動きが活発だ。

私たちが興味を持っているプレイヤーが1名おり、投資面でパートナーにどのように関わってもらうか話し合った。これはある種の求愛活動だが、最近ではエージェントや法律家と関わらなければならない。契約にはマーケティング時間の設定や当社の厳しいブートキャンプやトレーニングスケジュールの見込みなども含まれる。当社のプレイヤーには、通常1日10から12時間の訓練が行われ、休日は1週間に1日だ。

04:00 pm ステープルセンターで借りている特別室へ向かう。我がチームは今シーズンはじめに敗退してしまったが、それでもワールドチャンピオンシップは現在のパートナーやプレイヤー、そしてスポンサー候補とつながりを持ち、ともに祝うイベントとなり得るのだ。

06:00 pm チームへの採用を考えているプレイヤーと会い、主要条件について話し合う。次に、別のチームオーナーとそのチーム所属プレイヤー1名の買収について話す。また、我々が参加するスカウティンググラウンドで将来有望な選手を見つけた。我々はこの方法を通じて、16歳にオファーを出した。

08:00 pm 時間を見つけてこのイベントを30分ほど観覧。全体では5ゲームが行われ、5時間を要した。そして別の特別室に向かい、あるメディアパートナーとチームリキッドの10話に及ぶドキュメンタリーシリーズの制作について話し合う。1アップスタジオがチームリキッドのフルサービスプロダクションになっており、彼らは皆ゲーマーだ。イベントを訪れるクリエイティブエージェンシーは「これはキーボードオタクじゃないか、何を撮影すれば良い?」と考える。しかし、我々はストーリー展開も、人々が見たがるものもわかっている。

10:00 pm イベントをもう少し見て、HTCとロサンゼルスライブのKATSUYAで夕食。ユーチューブチャンネルに載せた動画、ブレーキングポイントについての事後分析を行う。サブスクリプション促進のため、1週間前にリリースされたこの動画は最初の24時間で35万ビューを獲得し、Facebookライブでは30万ビューを得た。これほど上質な動画制作が行われたのはeスポーツ史上初ではないかと考えている。彼らは食べ物を頼みすぎて、私は今日3杯目となるコーヒーを追加。もしかしたら私はカフェイン中毒かもしれないと、いまは思う。

10:30 pm 緊張感のあるゲームコンプレックスに戻る。当社の「カウンターストライク」グローバルオフェンシブチームにプレイヤーの動態についていくつか話をする。もうこういったことから身を引きたいのだが、いまだに調整役をこなしている。私があまり手を出さずに良くなるところまで基盤を作っているところだ。

02:30 am やっと話し合いが終わった。ここまでくると疲れて意識朦朧としてくるが、1日の興奮がさめないので冷蔵庫からIPA(インディア・ペール・エール、イギリスビールの一種)を取り出して1時間ほど「リーグオブレジェンド」をプレイ。いまも私のゲーマータグは、Liquid112 だ。1時間後、就寝。

Grace Caffyn(原文/ 訳:Conyac
Flickr image via SteelSeries