メディア関与を強めるブランドたちの現状:要点まとめ

2017年前期に猛威を振るったブランドセーフティ問題は、自社のメディア投資の現状についてほとんど理解していない広告主が多いことを浮き彫りにした。しかし現在、それまでエージェンシーに任せていたメディア管理の仕事に乗り出す広告主たちが増えているようだ。

独自のアドネットワークを構築するハイネケンから、独自の「信頼できるメディアオーナーのマーケットプレイス」をまとめるディアジオ(Diageo)まで、大手の広告主たちは、自社のオンライン予算の使い途について理解を深めている。広告において、メディアに関する専門知識は、「あればそれに越したことはない」ものから、欠かすことのできないものになった

この記事では、ブランドがメディア予算の使い方の判断において、より積極的に関与しようとしている現状を紹介しよう。

数字

  • 世界広告主連盟(WFA)が2017年5月に多国籍企業35社に関して実施した調査によると、この1年間に、メディアの透明性を中心とする問題に関する理解を深め、プログラマティックの責任者を雇うなどしたブランドは65%に上る。
  • 同じ調査によると、広告主の55%が、オープンなアドエクスチェンジで買う広告数の制限を実施している。
  • WFAによると、広告主の89%が、中立的な検証が行われていないアドネットワークへの支出を制限しているか、制限を予定している。
  • WFAによると、2016年には広告主の70%以上がメディア契約を変更し、リベートやデータの所有権といった、争点になりそうな点を明確にする具体的な条項を追加している。
  • フォルクスワーゲンは、メディアの見直しに続けてハイブリッドモデルの構築を進めているが、WFAによると、こうしたハイブリッドモデルを通してプログラマティックを契約面からコントロールすることを選んだ広告主は4分の1(24%)に上る。加えて41%が、この動きに続くことを計画している。
  • WPP傘下のメディアエージェンシーであるグループM(Group M)によると、Facebook、Google、YouTubeといった大手デジタルプラットフォームの英国における支出は、11%増の105億ポンド(135億ドル)となり、15%増という事前予測を下回った。グループMはこれを、広告主がYouTube広告のボイコットをきっかけに引き上げた支出を再投資していないためだとしている。
  • 広告調査会社のメディアレーダー(MediaRadar)によると、プロクター・アンド・ギャンブル(The Procter & Gamble:以下、P&G)は、2017年1月から5月のあいだに978のサイトで広告を実施したが、この数字は前年同時期の1459サイトから33%の減少だった。また、ユニリーバ(Unilever)は1月から5月の広告実施が540サイトで、2016年同時期の606サイトから11%の減少だった。

マーケターの見方

WFAでメディアとデジタルマーケティングのグローバルリードを務めるマット・グリーン氏は、広告主はビューアビリティ(可視性)、アドフラウド、および透明性に対する、これまでになかった「さらなる洗練」による取り組みに「力を入れている」と語る。同氏はさらに、多くは2016年はじめから構築が進んでいるとしながらも、YouTube広告ボイコットや、機能していない広告に対するP&Gの締め付けといったことが火種となり、ほかの広告主による計画の再検討を後押ししていると述べた。

化粧品のロレアル(L’Oral)は、メディア取引にさらに関与する試みの一環として、CRMから人工知能まですべてに渡るマーケティング専門家チームの構築を進めている。ロレアルは、エージェンシーと実施するプログラマティックプロジェクトでの主導権を強めており、メディア専門知識の内製化は同社の優先事項だと述べる。英国とアイルランドのロレアルでデジタルディレクターを務めるニック・バックリー氏は、「いまはまだ、必要なスキルを見直して状況を慎重に見渡している段階。注目するべき重要な取り組みを判断するのは簡単ではないためだ」と語った。

エージェンシーの見方

ブランドがデジタルメディアスキルのさらなる内製化を試みていることは、業界筋からすると驚きではない。ほとんどのキャンペーンの成功にはデジタルが不可欠だ。実際の作業だけでなく、細分化したサプライチェーン全体の責任までアウトソースするのは持続可能とは言えない。インベントリー(在庫)の計画と購入にAIを駆使するメディアエージェンシーのブラックウッド・セブン(Blackwood Seven)で英国のマネージングディレクターを務めるエリオット・パーカス氏は、問題は、いま内実が明らかにされつつある値上げ分を正当化できるだけの付加価値を、エージェンシーがクライアントに提供しているかどうかだと語った。

しかし、その答えによって、広告主がメディアエージェンシーに背を向けるということにはならないだろうと語るのは、マーケティングとメディア分析を専門に行うエビクイティ(Ebiquity)で最高戦略責任者を務めるニック・マニング氏だ。ブランドが予算支出のあり方と対象の見直しを進めるなかで、コンサルティング企業や、Googleのような技術プラットフォーム、あるいは新興企業によるエージェンシーの中抜きの話題が息を吹き返している。しかし広告主の「圧倒的多数」は、それでもエージェンシーと仕事をし続けるだろう、とマニング氏は語る。

「ブランド側がメディアへの関与を拡大させるというトレンドは、すべてのプランニングから実施や測定まで、プロセス全体へのブランドの関与が強まるということを意味する」とマニング氏。「かつて広告主は、こうしたすべてのタスクを自動的にエージェンシーに委ねていた。しかしいまは、ビジネス統制の問題においてメディアが重要になりすぎている」。

Seb Joseph (原文 / 訳:ガリレオ)