「衝動買い」を広告で狙い撃つスニッカーズ 〜消費者の気分をターゲティング

アメリカの食品製造企業、マース(Mars)は、ターゲティング広告をさらなる高みに引き上げようとしている。理解しようとしているのは、ユーザーの機嫌だ。人々の行動データからチョコレートを無性に食べたくなる瞬間、いわゆる楽しい時、退屈な時、またはイライラしているタイミングを、広告で狙い撃とうと考えている。

「人々はある特定の気分、時間帯、環境を体験している時に、衝動買いをする傾向が高い」と語るのは、マースのスニッカーズ(Snickers)部門でグローバル・ブランド・ディレクターを務めるダン・バーデット氏。「我々の目標は、スニッカーズの認知度を向上し、商品について多くの消費者に理解してもらうことだ」。

消費者の気分をマーケティング

Googleが提供するアドサーバー、DoubleClickは、サーバーが保持するパッションポイントというデータをエージェンシーに提供している。それらは、食べ物、スポーツ、ビジネスなどのカテゴリーにおいて、ユーザーのWeb行動から取得されたデータだ。

スニッカーズは、そのパッションポイントのシグナルを変えることで、ユーザーの気分とチョコレートの衝動買いについての関連性を理解しようとした。ユーザーが楽しいのか、退屈しているのか、落ち込んでいるのか、ストレスを感じているのかという視点でパッションポイントをカテゴリー化し、状況に応じたメッセージを発信するという実験を行っている。

もちろん、このようなデータによるターゲティングには、よりファーストパーティーのデータを集めるべきなのは間違いないだろう。「我々、チョコレートを作るブランドは、これまでデータを集めることをしてこなかった」と、バーデット氏は語る。

確たるエビデンスはまだない

コミュニケーション企業、スターコムメディアベストグループ(Starcom Mediavest Group)で、オーディエンスに関する問題解決を担当するディレクター、シモン・スタンフォース氏によれば、「クライアントはユーザーの気分をデータ化してターゲティングするというマーケティング手法にとても興味を示している。しかし、そこに確固としたエビデンスを見つけるにはまだ至っていない」と語る。

スタンフォース氏は続けて、「いくつかある課題のひとつは、クライアントを教育することだ。多数のターゲティング技術があるなかで、エージェンシーはクライアントとともに実験を行い、学んでいく作業をしていくべき。また、広告でユーザーに関連のあるメッセージを届ける責任もある。我々が届けるメッセージが適切で、かつ商品を受け入れてくれるユーザーへ確実に広告が届くよう保証しなければならないし、押し付けがましくなってもいけない」と、コメントした。

ユーザーの心象を損ねるリスクも

こうした意見に対して、メディアエージェンシーのセブンスターズ(The7Stars)でストラテジストを務めるディノ・マイヤーズ・ランプティ氏は、反対意見を呈する。同氏は、Appleがユーザーの気分を察知して広告を打つシステムについて、2014年に特許申請のPRを大々的にしていたが、その後はぱったりと静かになっていることについて指摘した。

「こうした技術をもった企業は、いかにして世間にターゲティングの技術を公表するのかをもっと慎重に検討しならなければならない。ユーザーはインターネットでの自身の行動をもとにターゲティングされていることについて好ましいとは思わないからだ。機嫌が悪い時にそのような事実を公表されるのは避けるべきだろう」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:中島未知代)
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