Snapchatは「無のブラックホール」:指標不足で広告効果は闇の中

トップクラスのプラットフォームを目指すSnapchat(スナップチャット)は、その長所をブランドに理解してもらおうと奮闘している。

だが、米DIGIDAYが取材した複数のブランド幹部にとって、現在のSnapchatは受け入れがたい状況だという。いわく、マーケティング業界が(表向きには)測定指標とその透明性を厳しく求めるなか、FacebookやGoogleが提供しているような計測サービスをSnapchatは提供しないため、広告主を困らせているというのだ。

ある小規模な企業のマーケターは、Snapchatの測定方法がないため、そこへの支出を上司に納得させるのは大変なことだと、こぼした。別のマーケターも、Snapchatに予算を出すくらいなら、その紙幣に火をつけて、Facebookのライブ動画で中継すべきだと、ジョークを飛ばした。「少なくとも、そのライブ動画の測定は得られるだろう」。

現在、Snapchatは位置情報は提供している。ただし、広告効果を示す、クリック数などの指標については、一切提供していない。ブランドによる一定ユーザーの追跡を可能にするような、ファーストパーティーデータも当然、提供されていないのだ。

Snapchatに当惑するマーケター

匿名希望のとあるメディアバイヤーによると、Snapchatは測定指標の改善を行ったが、合格点には遠く及ばないという。エンゲージメントを測定できる従来のやり方になじんだブランドは、Snapchatのやり方に当惑しているのだ。

「Facebookが提供しているようなデータが、Snapchatにはまったくない。彼らがFacebookのような深いデータを用意することは決してないだろう。だから、あのような深さが必要なら、マーケターはサードパーティーデータをかぶせる必要がある」と、匿名のバイヤーは話す。そのような手間のかかることは、ブランドには難しい選択だ。

「ブランドもエージェンシーも、広告が一定の結果を出していることを証明する必要がある」と、エージェンシー、RPAでデジタル戦略マネージャーを務めるマイク・ドセット氏は語る。同氏によると、エンゲージメントや購買意思についての問い合わせは、「バイヤー側が当初からSnapchatなどのプラットフォームに求めているものだ」という。

一方で、Snapchatの広報担当者は、同プラットフォームが、ほかのどの会社よりも迅速に、測定指標を構築してきたと反論する。同社はモート(Moat)、イノヴィッド(Innovid)、ニールセン(Nielsen)の「モバイルデジタル広告視聴率(Mobile Digital Ad Ratings)」、Googleのダブルクリック(DoubleClick)など、パートナー11社を通じて、測定レポートを提供しているという。たとえば、購買意思はミルウォード・ブラウン(Millward Brown)とオラクル(Oracle)の「データ・クラウド(Data Cloud)」によって提供されている。

Snapchatのオーディエンスの内訳

懸念材料はほかにもある。Snapchatはユーザーに関するデータを、どこまで共有する気があるのかという問題だ。Snapchatが実施したニールセンの調査に基づき、同社は米国の18~41歳の41%にリーチしていると主張。さらに、ユーザーの過半数が40歳未満だとしている。

しかし、それ以上詳しいことは明らかにされていない。ブランド側のある幹部によると、Snapchatに内訳を尋ねたところ、そうしたユーザーの90%近くが14~22歳で、ブランドが狙いたい層とは少し違っていたという。この幹部は、Snapchatを「無のブラックホールだ」と表現した。

Snapchatは当初、年齢の内訳を明かすことを拒否した。しかし、本記事の掲載後、Snapchatの広報担当が米DIGIDAYに、オーディエンスの内訳は13~17歳が21%、18~24歳が32%、25~34歳が28%だと伝えてきた。米国では、新規ユーザーの約半分が25歳以上だという。

マクドナルドのジオフィルター事例

Snapchatが前進しているのは事実だ。マクドナルド(McDonald’s)がジオフィルターを使って実施した2015年のキャンペーンは、視聴単価(CPV)に基づいて販売されたという。しかし、いち早く開始された有料ジオフィルターキャンペーンだったにも関わらず、目標CPVは未達成だったという。

このことは、マクドナルドがSnapchatユーザーの行動を理解できていなかったことをうかがわせる。Snapchatでは視聴を構成するものを把握することが困難なため、現在はCPVを指標として使うことをほぼあきらめ、インプレッション単価(CPM)で広告を販売している。

マクドナルドでアメリカのソーシャルエンゲージメントを統括するポール・マトソン氏は、ジオフィルターは従来型の店舗で小売を行う同社に、体験を追加する手段として活用できると説明する。「我々は一番に乗り出たブランドだったため、未知のことを学べるという付加価値があった」と、マトソン氏は振り返る。

同社はジオフィルターキャンペーンを継続しているが、測定データを確実に得ることを最重視するようになってきた。具体的には、ユーザーがジオフィルターを使ったか、何に使ったのか、最終的に「ビッグマック(Big Mac)」がより多く購入されたのか、といったデータだ。

「いまは重要な成長段階」

Snapchatはブランドに味方になってもらう必要がある。報道によると、親会社のSnap(スナップ)がIPOの準備を進めており、早ければ2017年3月にも実施する可能性があるからだ。

「Snapchatは成長期の重要な段階にある。拡大を続けて巨大な存在になるか、落ち目になるか、どちらも可能性がある」と語るのは、TBWA\シャイアット\デイ(TBWA\CHIAT\DAY)ロサンゼルス支社のデジタル戦略ディレクター、ロヒト・タワニ氏。同社は、ゲータレード(Gatorade)と共同でSnapchatの「ディスカバー」のゲームに取り組んだ

そうしたプロセスは、ブランドとの近い距離を必要とする。Snapchatは広告販売チームを増強し、クライアントにサービスを提供するカテゴリー別のグループを作り、エージェンシーの人材を引き抜いてきた。

また、広告プロダクトがブランドにとって一層魅力的なものになるよう、販促資料を作った。なかでも、非常に高額な広告プロダクト「スナップ・トゥ・アンロック(Snap to Unlock)」は、四半期支出が75万ドル(約7500万円)を超えている広告主が利用できるというものだ。大手ブランドならどうにかなる金額だが、中小のブランドは尻込みをする。

極めて秘密主義のSnapchat

ブランドからよく聞かれる別の不満は、Snapchatが極めて秘密主義で、往々にして変更を伝えてこないというものだ。たとえば、「ストーリー」に自動生成が導入され、広告の表示方法とタイミングが変わったが、事前の注意喚起はどこにも提供されなかった。「あの変更は、ブランドの理解を助ける形では行われなかった」と、あるメディアバイヤーは語る。

また、より一体化された広告販売体験を構築する試みとして、Snapchatは最近、パブリッシャーに広告料を前払いし、マージンをSnapchatが確保する新しい広告取引を導入した。

「これはブランドにとっては補助輪を取り外すことになった。なぜなら、ブランドは、ハースト(Hearst)のようなパートナーパブリッシャーにSnapchatの方から事前に取引してもらい、ブランドコンテンツの制作を頼めるからだ」と、あるバイヤーは話す。「いまや、ブランドは直接、Snapchatに依頼できるようになったということだ」。

TBWAのタワニ氏にとって、ディスカバーは以前から新しい広告主がSnapchatに踏み出す場になっている。「Snapchatがプラットフォームの変更を連絡しないのは間違いないが、その理由はたぶん、まったくその必要がないからなのかもしれない」と同氏。

結局のところ、Snapchatをうまく使いこなせないことを、マーケターたちが認めたがらないのは、Snapchatを馬鹿にするようなマーケターに誰もなりたくないからだと、あるマーケターは語る。「あとで吠え面をかくことになるだけだが」。

Shareen Pathak (原文 / 訳:ガリレオ)