ユーザーの「潜在要求」に着目した、化粧品ブランドの挑戦 〜YouTube動画を軸に「リアル店舗」を設計

フランスのモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンの傘下で、化粧品や香水を専門的に扱うブランドのセフォラ(Sephora)。YouTubeで人気となったメークアップ動画をリアルに体験できる、新しい店舗を作った。

早くから自社化粧品にまつわるハウツー動画を、モバイルサイトやオンラインストアにて配信してきたセフォラ。その店舗は、それら動画コンテンツとユーザー体験の架け橋となろうとしている。

2015年11月20日、サンフランシスコに新たにオープンした店舗では、「美容ワークショップ(Beauty Workshop)」というスペースを確保。カスタマーがチュートリアル動画を見たり、セフォラのスタッフからメークアップのレッスンを受けたり、その様子をオンライン上でシェアすることもできる。

「美容ワークショップ」は、商品を試したいカスタマーにとって来店動機となっている。セフォラにとっては、美容業界の流行を提供しつつ、直接カスタマーと会話をもてる良い機会だ。新しい店舗はこうした取り組みを中心に設計されており、一度に12人のカスタマーが利用可能だという。

Sephora_Powell_2-285「美容ワークショップ」のデスク。

きっかけはソーシャルメディア

セフォラの社長兼CEOのカルビン・マクドナルド氏は、たとえば「コントゥアリング(ブロンザー、コンシーラーやハイライターを使用してはっきりと輪郭を際立たせるメークアップ方法)」動画の人気が、同社にとって、その専門分野を活かすチャンスになったと指摘する。

「ユーザーたちは、コントゥアリングの動画を観て、興味をもっても、実際に自分で行う手順がわからない」と、マクドナルド氏は話す。そして、多くのユーザーは自信をもって自ら実践できるまで、コントゥアリングに必要な多くの化粧品やブラシを購入しない。セフォラはソーシャルメディアを通して、それらの事実に気づいた。

「そこで、我々、セフォラがユーザーの潜在要求に応えるべきだと思った」と、マクドナルド氏は話す。「不安材料さえ取り除けば、人々の購買意欲は沸き立つ。女性がより美容にエンゲージするようになり、多くの商品の購入につながる」。

アジア系モデルのコントゥアリング方法。

プロダクト、サービス、空間の共有

また、「美容ワークショップ」の隣にはセフォラのデジタルビューティーボードが設置されている。そこに商品を購入できるモニターがあり、流行にあわせつつ、ユーザーの好みにも合わせた内容の商品のリストを再生してくれる。

カスタマーが自身のインスピレーションに沿ったメークアップ動画を見つけ、実際に動画で使用された商品を購入することが可能だ。ほかにも、カスタマー自らのメークアップ方法や、使用している商品をシェアすることもできるという。「People Like Me(自分に似た人)」という機能では、コンテンツを精査し、自分の肌色や髪質に合った商品リストを見せてくれる。

「デジタルだけれどデジタルではない」と、マクドナルド氏は言う。「プロダクト、サービス、そして空間の共有という組み合わせが、顧客の要望を満足させることに繋がる」。

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体験を求めるカスタマーを見極める

この新たなサンフランシスコの店舗には、さらに多くの機能が備わっている。たとえば、香水の匂いを判別できる「InstaScent(インスタセント:以前はPoofと呼ばれていた)」。カスタマーがどの匂いにもっとも魅力を感じ、反応しているのかを教えてくれる(マクドナルド氏によると、香水部門はあまり成績の良くない部門だという)。ほかにも、「Digital Trend Tables(デジタル流行テーブル)」と呼ばれるものがあり、リアルタイムで人気商品やベストセラー商品を教えてくれるそうだ。

セフォラのマーケティング部長であるデボラ・イェ氏によると、重要なことは体験を求めてくる顧客と、単に買い物に来た顧客を見極めることだと言う。

「販売スタッフはどのカスタマーが知識を求めていて、どのカスタマーが単なる買い物客かを見極めることができる」と、イェ氏は話す。「テクノロジーは販売スタッフのように顧客を見極めることはまだできない。しかし今後、不可能でもないだろう」と語ってくれた。

Hilary Milnes(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Photo from 米DIGIDAY