リオ五輪をめぐる、ブランドの「勝者」と「敗者」はどこか?

リオデジャネイロオリンピックで「金」を競い合ったのはアスリートだけではない。

オンラインでの観戦時間がかつてないほど伸びたなか、大小各種ブランドが、エンゲージメント率の高い、世界中のセカンドスクリーンオーディエンスから、注目を集めようと奮闘した。

米DIGIDAYでは今回、リオ五輪の勝ち組ブランドと負け組ブランドを選んだ。

Winners / 勝者たち

アンダーアーマー : 公式スポンサーにならなくても(つまり、何千万ドルものスポンサー料を払わなくても)、オリンピックの恩恵は得られる。それを誰よりもよく知っているのが、スポーツ用品ブランドのアンダーアーマー(Under Armour)だ。

リオ五輪に先立つ3月にスタートしたエモーショナルな「Rule Yourself(自分を支配する)」キャンペーンは、五輪公式スポンサー以外の広告行為を一切禁ずる「ルール40」の規制を完全にクリアしたもので、オリンピックの知的財産は一切使用していない。

だが、アンダーアーマーは確実に視聴者の目に留まるよう、水泳のマイケル・フェルプス選手(同キャンペーンではスポットで登場)らアスリート250人のスポンサーを務める。また、リオにある複数の野外ジムを借りてマーケティング拠点とし、会期中は観戦客向けに毎日ワークアウト教室を開催した。

そうした取り組みが奏功する。モバイルアドテク企業アモビー(Amobee)によると、Twitterにおけるアンダーアーマー関連デジタルコンテンツのエンゲージメントは、リオ五輪の開幕以降83%増加したという。功績の大部分は純粋にフェルプス選手との提携によるもので、8月5日~17日の全エンゲージメントの実に45%がフェルプス選手関連だった。

「オリンピック選手とスポンサー契約を結ぶことは、大会公式スポンサーになるのと同じくらい効果を発揮する可能性がある。ただしブランドの予想が正しく、卓越したアスリートと提携できればだが」と、アモビーの主任ブランドアナリスト、ジョナサン・コーエン氏は語る。

コカ・コーラ : アンダーアーマーは法外な五輪スポンサー料を回避したが、公式スポンサーにはやはりそれなりのメリットがある。ソーシャルメディア分析をおこなうシソモス(Sysomos)によると、公式スポンサー各社の先頭を走ったのは、清涼飲料メーカーのコカ・コーラ(Coca-Cola)。大会最初の1週間で最多のメンションを獲得した。約4万7000回というその数字は、2位の家電大手サムスン(Samsung)の2倍以上だった。

コカ・コーラはリオ五輪に際して大々的なグローバルキャンペーンを打ったが、その大部分は日本からもたらされた。同社は、日本向け公式アプリ「Coke ON」(コーク オン)と同社公式Twitterアカウントを連動させて、金メダル獲得の瞬間のリツイート数だけ商品が当たるキャンペーンを実施。これが莫大なエンゲージメントを生み出した。

GE : コングロマリット企業ゼネラル・エレクトリック(GE)は、Facebook上でノスタルジーに訴える作戦に出て、オリンピック視聴者の心をつかんだ。GEは、1990年代にブラジルで人気を博した子供向け番組『カステロ・ラ・ティン・バン(Castelo Ra-Tim-Bum)』のキャラクターを起用した動画シリーズを公開

また7月には、この動画シリーズをFacebookのライブ動画でも配信すると発表した。さらに、リオ五輪のインフラ建設に協力したGEの研究員にインタビューしながら、ブラジルのGE研究室内を360度見渡して紹介する動画も配信。このライブストリーミングは約25万回視聴された。GEは同シリーズをFacebookやインスタグラムでも宣伝した。

シモーネ・バイルズ選手とそのスポンサー : 女子体操で金メダル4個、銅メダル1個を獲得したシモーネ・バイルズ選手は、リオ五輪で一躍スターになった

五輪出場時点でのスポンサー料は総額200万ドル(約2億円)と報じられ、プロクター・アンド・ギャンブル(The Procter & Gamble)の洗剤「タイド(Tide)」、ユナイテッド航空(United Airlines)、チョコレートメーカーのハーシーズ(Hershey’s)、プロテイン飲料のコアパワー(Core Power)、体操用品のGKエリート・ジムナスティクス(GK Elite Gymnastics)などが後援に名を連ねている。これらのブランドがスポンサーシップで得た利益の大きさを考慮すれば、バイルズ選手のスポンサー料は上昇の一途だろう。

前述のアモビーによると、ケロッグ(Kellogg)がシリアル「スペシャルKレッドベリー(Special K Red Berries)」のパッケージにバイルズ選手を起用すると発表した途端、同商品に関連するデジタルコンテンツのエンゲージメントが37倍になったという。また、8月5日~15日における同ブランドへの全メンションのうち、90%がバイルズ選手に言及していた。

さらにナイキ(Nike)にとっても、彼女はデジタル認知度の点で最重要アスリートとなっている。同じ期間に、リオ五輪に関連した同社の全デジタルコンテンツが獲得したエンゲージメントのうち、18%がバイルズ選手に言及していた。これは、リオ五輪中にナイキと契約していたアスリートのなかで最多であり、テニスのセリーナ・ウィリアムズ選手や、バスケットボールのケビン・デュラント選手をも上回った。

Losers / 敗者たち

ブラジル : リオ五輪により、ブラジルの暗部にも光が当てられた。景気後退、ジルマ・ルセフ大統領の弾劾、ジカ熱の流行、治安の悪さ、水質汚染といったものだ。

オンラインでもその傾向は顕著で、アモビーによると、ブラジルに関連するデジタルコンテンツのエンゲージメントで、「犯罪」への言及は大会期間中に147%増加(8月5日~18日と、7月22日~8月4日の比較)。ジカ熱も大きな話題となり、オリンピック期間中のブラジル関連デジタルコンテンツのエンゲージメントで、約9%がジカウイルスに言及していた。

ライアン・ロクテ選手 : その一方、ブラジルの印象を相対的に良くした人物がいるとしたら、それは間違いなく、競泳男子米国代表のライアン・ロクテ選手だ。バイルズ選手のブランド力が急騰する一方で、ロクテ選手のそれは暴落した。

リオで強盗被害にあった話をでっちあげたロクテ選手とチームメイト数人。この件は、8月14日以降メディア各社のトップニュースで報じられた。シソモスによると、ハッシュタグ「#ロクテゲート(#LochteGate)」(ニクソン米大統領が引責辞任に追い込まれた陰謀「ウォーターゲート事件」に引っかけた造語)は8月17日からトレンドに登場。これまでに14万5000回以上ツイートされたという。

「ライアン・ロクテ選手はもしかしたら、自らのウソで『ブラジルは安全だ』と、逆説的に証明する偉業をやってのけたのかもしれない」と、アモビーのコーエン氏は皮肉まじりに語る。

エージェンシーのウォルトン・アイザックソン(Walton Isaacson)でシニアバイスプレジデントと戦略責任者を兼任するクリスティン・ビラヌエバ氏も同意見だ。「水泳選手たちの名声は沈んだままに見える。米国メディアでさえ、これまでのところ中立の論調がせいぜいだ」。

NBCとそのコメンテーターたち : NBCに関連するデジタルコンテンツのエンゲージメントは、大会開幕から46%増加した(8月5日~10日と、7月30日~8月4日を比較)。だが、NBCは批判にもさらされ、ツイートの25%はネガティブなものだった。

「複数の女性アスリートたちに関してNBCが性差別的なコメントを連発したことに対し、否定的な報道とソーシャルメディアの反応があった」と、ビラヌエバ氏は指摘する。「事態はおおむね沈静化したようだが、これからも失言を聞き逃さないつもりの人もいるだろう」。

Tanya Dua(原文 / 訳:ガリレオ)
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