「変化の激しいデジタルで、リスクには冒す価値がある」:ウイスキー「ジェムソン」のソーシャル戦略

近年、アメリカ人の愛飲家たちの間でアイリッシュウイスキーが流行している。アイリッシュウイスキーの風味の軽さや甘みが、スコッチのスモーキーな味わいやバーボンのまろやかさよりも好まれているからだ。

そして、この流行の波に乗るのが、ワインとスピリッツの製造と配給を専門とするフランス企業、ペルノ・リカール(Pernod Ricard)によって製造されているブレンデッドアイリッシュウイスキーのジェムソン(Jameson)だ。

ジェムソンはレディー・ガガ(Lady Gaga)やリアーナ(Rihanna)などの著名人たちからも支持を得ている。レディー・ガガはジェムソンのアイリッシュウイスキーのことを「長年のボーイフレンド」と呼び、リアーナは曲の歌詞にジェムソンを登場させた。それからというもの、アメリカのバーでは定番となっている。米投資銀行バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(Bank of America Merrill Lynch)によると、2014年のジェムソンの企業価値は9億9000万ドル(約1080億円)で、世界で12番目のウイスキーブランドだった。

若い世代や女性にウケている

「若い世代や女性、ラテンアメリカ系の消費者の増加により、ウイスキーは復活しはじめている」と、ペルノ・リカールUSAにてジェムソンのブランドディレクターを勤めるソナ・バジャリア氏は話す。「そのため、マーケティング戦略においてソーシャルやデジタルが適切かつ最適な方法で使えているかを注視している」。

1988年にペルノ・リカールがジェムソンを買収した際、その当時の戦略はウォッカやホワイトラムの愛飲家たちがターゲットだった。アイリッシュウイスキーとしてマーケティングするのではなく、カクテルと同様に、口当たりが軽く、それだけで快適に飲める酒として売り出したのだ。

ソーシャルメディアが発達した現在、ジェムソンのマーケティング戦略も進化させなくてはならない。Facebook、インスタグラム、Twitter、YouTube、最近ではSnapchatなど、さまざまなプラットフォームで長短問わずコンテンツを配信している。すべてのプラットフォームで共通していることは、配信しているすべてのコンテンツに「シネ・メトゥ(Sine Metu:ラテン語で、恐れることはないという意味)」というスローガンが掲げられていて、ジェムソンの200年を超える歴史を讃えていることだ。

The #Jameson family crest. The inspiration behind Jameson Irish Whiskey, past, present and future. #SineMetu. It means Without Fear.

Jameson Whiskeyさん(@jameson_us)が投稿した動画 –

「お酒の初心者であろうと、長年愛飲していた人たちであろうと、皆がジェムソンの物語を聞きたがっているということを学んだ」と、バジャリア氏は言う。「人々はブランドの秘話が好きだ。私たちは配信するプラットフォームやターゲットに適合させるために、コンテンツをカスタマイズしているだけだ」。

「ブランドの秘話」が好きかどうかは人によるだろうが、安価で飲みやすいウイスキーで酔っ払うことは誰しも好きなようだ。市場調査企業IWSR(International Wine & Spirit Research)が行った2013年の調査によると、アメリカ国内で生産されたウイスキーが2400万箱も消費されている。10年前と比べて、30%も増加しているのだ。

2種類のマーケティング戦略

しかし、ウイスキーはアメリカ人の全年齢層によって愛飲されているため、ジェムソンは2種類のマーケティング戦略をとっている。たとえば、年長者を対象とした長編動画シリーズの「ジェムソンの飲み仲間たち(Jameson Drinking Buddies)」を見てみよう。この動画は、ジェムソンがアメリカ国内の5つのクラフトビール醸造所とパートナーを組み、ビールやウイスキーの品質や職人の熟練の技を紹介する内容だ。

ひとつのエピソードでは、パートーナーシップを交わしているビール醸造所のスタッフをジェムソンのアイルランド工場に連れて行き、ビールを熟成させるためにジェムソンウイスキーの樽をプレゼントしている。これらの様子はすべて撮影され、一部はFacebookで配信された。

このように年長者をターゲットにしているジェムソンだが、成人を迎えるミレニアル世代たち対しても魅力をアピールしている。

アイルランドの祝祭日である「聖パトリックの祝日」では、米デジタルマーケティングエージェンシーである360iとタッグを組み、Snapchatのジオフィルター機能(写真を撮った場所や位置に応じて、フィルターやスタンプを追加してくれる機能)を利用したキャンペーンを展開した。このキャンペーンは21歳以上のSnapchatユーザーを対象としたものだが、このキャンペーンのおかげで2015年の「聖パトリックの祝日」キャンペーンは成功を収めている。

ほかにも、バーテンダーがショットグラスをバーカウンターの上で滑らせる3D動画の自動再生広告をFacebookとインスタグラムの両方のプラットフォームで配信した。キャンペーンの成功についてジェムソンは、「視聴回数が予想の3倍にまで達し、目標値を大きく上回った」と発表している。

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適切に「楽しむ(craic)」ことが大事

「つまりは、私たちが適切に『楽しむ(craic)』ことが大事なのだ」と、バジャリア氏は話す。「私たちは現実的で見栄も張らないが、楽しみ方は知っている」。

意欲的なマーケティングにより、ジェムソンはデジタル分析企業L2が発表した2015年度のスピリッツ部門で、トップクラスのデジタルマーケターとしてランクインを果たした。インスタグラムには5万7300人以上のフォロワーを擁し、YouTubeでは4万1500人のチャンネル登録者を擁している。また、Facebookでは200万件以上のいいね!を獲得しているのだ(しかし、L2の発表によるとジェムソンのデジタルIQは113のため、デジタルIQが130である競合企業マッカラン[Macallan]と比べると、まだ成長の余地はありそうだ)。

「試行錯誤して学び、毎日進化して最適化させるのがデジタルだ」と、バジャリア氏は語る。「業界を取り巻く環境が激変しているため、リスクには冒す価値がある」。

これからも新たなチャンネルを探す

予算の正確な金額は教えてくれなかったが、バジャリア氏によると、デジタルやソーシャルに費やしている費用はコミュニケーション部門の予算のほとんどだという。ジェムソンには両方のエージェンシーと、Facebookとインスタグラムの社内コンテンツマーケティングチーム、さらにそれらと共同作業を行うスタッフが5人から10人いるため、今後も拡大し続けることだろう。

「私たちはこれからも新たなチャンネルを探すが、現時点においてFacebookとインスタグラムが私たちのソーシャル戦略の柱となっている」と、バジャリア氏はコメントした。「彼らのターゲティング能力は素晴らしく、また、彼らの社内マーケティングチームとパートナーを組んで新たな物を作る機会もあ流ため、私たちはとても助かっている」。

Tanya Dua(原文 / 訳:BIG ROMAN)