データを渡さないAmazonにいら立つ小売業者たち

Amazonで支出される金額が昨年、米国の全オンライン売上の43%を占めた。こうなるとブランドが選ぶのはAmazonに協力するかどうかではない。どのような形で協力するかだ。そんななか、Amazonが小売業者に送り返すデータの種類――あるいはデータの乏しさ――に、大半のブランドは憤然としている。

マーケットプレイスイグニション(Marketplace Ignition)の最高経営責任者(CEO)、エリック・ヘラー氏は「Amazonで販売するのはわかりにくい。Amazonはふたつの異なる販売チームがあって、Amazon内で競争を生み出している」と語った。

ふたつのチームというのは、ベンダーセントラル(Vendor Central)とセラーセントラル(Seller Central)だ。ベンダーとはAmazon(ファーストパーティー)に商品を卸す販売業者で、セラーはAmazonを介して商品を販売するサードパーティにあたる。

Amazonへの直接販売を選んだある小規模な小売業者は、「Amazonは、素晴らしいパートナーとはいえない」という。「直接販売する場合、ベンダーセントラル内の一部ツールにいくらかアクセスできる。しかし、それ以上の高度なデータパッケージについては、お金を払う必要がある」。

Amazonでどのようにやっていくべきで、どんな戦略を採るべきかは、ブランドからすると非常に複雑な問題になった。複雑化した販売構造は、従来からある小売業のパートナーシップとは異なり、Amazonがこの分野でいかに巨大で強力になっているかを考えると、直接販売すべきか、それとも自社製品に対するコントロールを維持しておくべきかという問題に、ブランドはなかなか答えを出せない。

直接販売

Amazonでは、招待制のベンダーセントラルは、セラーセントラルと大きく異なる。ベンダーとして登録する場合、ノードストローム(Nordstrom)やメイシーズ(Macy’s)のようなところと小売業者が結ぶ従来型の関係に近く、Amazonがそのブランドの製品の流通をフルタイムで担当する(「Amazon.comが発送します」と表示される)。Amazonはその商品を買い取り、配送や返品を担当する。多くのブランドがこの直接販売を選んでいる。最近の例はナイキによる方針の大転換で、新たに5億ドル(約570億円)もの年間売上に貢献した。

ライフタイムブランズ(Lifetime Brands)にとって、Amazonでの直接販売は重要なものになった。ライフタイムブランズには、ファーバーウェア(Farberware)やキッチンエイド(KitchenAid)といった住宅や内装のブランドがある。「ライフタイムブランズがAmazonで自社ブランド商品を直販していないからといって、Amazonのサイトに我々のブランド商品がないわけではない。自ら名乗ってはいないというだけだ」と語ったのは、リテールダイレクトとeコマース担当のプレジデントを務めるジェフ・バーマン氏だ。

データ面で見るとライフタイムブランズは、入手できるデータのみに注目している。検索の関連度や自社ブランドと競合他社との比較などだ。「我々が学んだのは、これはAmazonの顧客だということだ。Amazonに売るのではない。AmazonはAmazonの顧客に売る機会を提供してくれるのだ」と、同氏は語る。

eコマースのデータに力を入れているブランドは、Amazonに直接販売するベンダーになると、基本的な分析データが手に入り、追加料金を払えば、いわゆる「バスケット分析」をもらえる。この分析を見れば、自社の製品を見た人がその後、何を買ったのかがわかる。

複数の幹部によると、Amazonが製品の出荷を担当するので、ブランドからは誰が顧客なのかが見えない。「多くの小売業者は、Amazonに販売する際、ベンダー関係を気にしている。それは明らかだ。出荷に関わっていないのだから顧客に関するデータが入ってこない」と、ヘラー氏は語った。

バスケット分析と卸売りのデータは限られている。小売業者は、基本的な情報はわかるかもしれないが、コンバージョン率がわからない。顧客関係を小売業者ではなくAmazonが握っているので、Amazonはメールアドレスの提供も、接触の許可もしないということなのだ。

かつてAmazonの高級品小売部門で責任者を務め、現在は、シアトルに本拠のあるeコマースコンサルティング会社クォンティファイド(Kwontified)を率いるエレイン・クォン氏によると、同氏がAmazonに在籍した頃は、売れている物と、米国の顧客の居住地について、大きなブランドから問い合わせの電話がひっきりなしにかかってきたという。「場合によっては、上司から許可を得てバイヤーが対応することはできる。オンラインで成長するには欠かせない部分だ」とクォン氏は語った。

セラーになる

Amazonはブランドに渡す顧客情報を出し渋るとして評判がよくない。セラーセントラルとして知られるサードパーティ販売を選べば、Amazonが提供する情報は増える。Amazonでサードパーティ販売を行うブランドには、製品を買っている人とコンバージョン指標に関するデータが入ってくるのだ。ヘラー氏によると、ブランドが製品ページのコンテンツと文章を改善するにはこれが欠かせないという。また、レビューと製品の紹介の仕方が極めて重要になった。いまではオンラインショッピングのための検索は半分以上がAmazonからはじまるので、製品ページの画像や動画の見え方と反応を把握できることが、顧客のために欠かせない。「製品一覧からはじめて『A+』のページを作り、それから先取りプログラムの『Amazon Vine』に登録してレビューを書いてもらう。成功の公式がある。その公式に従う必要がある」と、ヘラー氏は語った。

また、サードパーティ販売では、ブランドが価格をコントロールできる。また、ブランドには発送と販売をAmazonに管理してもらうオプションがあるほか、セラーセントラルは商品のリスティングに柔軟性がある。クォン氏の話では、Amazon自身も資金の割り振りを見直し、直接の卸売り(ベンダー)のチームよりサードパーティのマーケットプレイスのチームに配分する額を増やしている。ブランドの数もセラー側に使えるツールもこちらのほうが多く、200万を超えるサードパーティセラーが、まるで証券取引所のようにアルゴリズムを使って価格を上げ下げしている。

フィットネス用品を手がけるタフマダー(Tough Mudder)は現在、Amazonと共同でブランデッドコンテンツに取り組んでいて、オリジナルコンテンツを制作すると同時に、タフマダーの顧客がレースやイベントで必要になるような製品を、既存のベンダーに販売させている。タフマダーによるとAmazonは、たとえばページに掲載する消臭剤のブランドについても、まずタフマダーからの承認を求めるという。しかし、タフマダーで事業開発担当のバイスプレジデントを務めるケビン・ベント氏によると、実際の製品を購入している人に関するデータは、Amazonから提供されないという。「我々のサービス担当チームは、ページのトラック量を監視して数字を推測しているが、そこまでの精度にはまだ到達していない。柔軟性のあるパートナーを得たが、まだ新しいということだ」。

マーケットプレイス、すなわち、Amazonのサードパーティセラーたちは、現在、Amazonにとって直接販売に次ぐ収益源になっている。CBインサイト(CB Insights)によると、Amazonは4月、セラーサービスだけで1200人の求人を出していた。

販売業者が卸売りに移行すると、価格決定権をすべて捨てることになる。クォン氏によると、それはブランドを損なうことにつながる可能性がある。「Amazonにシューズを100足販売すると、Amazonが実績に基づいて価格を上下させて売ることになるだろう。Amazonはまた、ほかの小売業者の価格もそこに揃える」。そして、プライムデーやホリデーシーズンなど、季節的な値引きもあるだろう。「短期的にはいいかもしれないが、Amazonは競争が激しい構造なので、最終的には卸売価格を下げることが必要になるだろう」と、クォン氏は語った。

クォン氏の会社が数字を分析したところ、今年は、米国のeコマース売上の53%を占めるなど、Amazon自身のeコマースの数字は増えても、どのカテゴリーでも直接販売の大手ブランドは販売売上を減少させていることがわかった。原因のひとつは価格のカニバリゼーションだ。

ベンダーセントラルは、待望の選択肢としてAmazonから登場した。ブランドには、従来型の小売のように、自社を担当する専任のバイヤーがつく。また、専用のブランドストア、製品の露出の増加、および製品ページの拡充によるマーケティングも提供される。すべての検索の55%がAmazonから、Amazonによる結果の表示からはじまるのだから、ブランドとしては、ほかのセラーに対して優位に立てるものは何であろうとあったほうがいい。

多くの施策は結局、ブランドを保護することになる。先日のナイキとの契約では、Amazonが同プラットフォームのグレーマーケットにいる無許可の取扱業者や偽物業者を根絶することが約束された。これが実現できるなら、それだけでもおそらく骨を折る価値がある。

Shareen Pathak (原文 / 訳:ガリレオ)