新生グッチ、初の動画シリーズで訴えたかったものは何か?:コンデナストと協働で若者に訴求

レイヤーを持ったフリル付きのスカート、鮮やかな色彩感、ヘビの刺繍のアクセント。クリエイティブディレクターのアレッサンドロ・ミケーレが手がけたこれらのデザインは、グッチ(Gucci)の個性として認識されるようになった。

グッチの最新PV(記事中段に掲載)にも、これらのデザインは命を吹き込んでいる。2016年プレフォールコレクションのプロモーションとなっている、このビデオのコンセプトは、ギリシャ神話のオルフェウスとエウリュディケの恋を、現代のニューヨークで再現するというものだ。

ジア・コッポラ監督(フランシス・フォード・コッポラの孫)とコンデナスト(Condé Nast)のコンテンツスタジオ「23ストーリーズ(23 Stories)」がタッグを組んで制作にあたった、このビデオシリーズ。オルフェウスとエウリュディケの物語を4つの章に分けて展開している。結婚、幸福、エウリュディケの死、そしてハーデースを訪れるオルフェウスだ。舞台は古代ギリシャから、現代のマンハッタンのブラウンストーン住居、セントラルパーク、そしてナイトクラブに移されている。もちろん、ビデオに登場する人物たちが身に着けているのは、グッチの最新コレクションだ。

複数回に渡るビデオシリーズは、グッチのブランドコンテンツ戦略としては、初の試みとなる。4本のビデオは、それぞれ2分半ほどの長さで、Gucci.comと同様に「ヴォーグ」「ニューヨーカー」「ヴァニティフェア」といったコンデナストの6つのメディアで展開された。

若者を狙った長期戦略

23ストーリーズのマネージングディレクターであるジョシュ・スティンチコム氏は次のように語る。「グッチはとても強い個性を持っている、それを私たちは北極星のように扱った。コンテンツを作っているとき、いつでもそこに振り返ることができる。その点でグッチというブランドはストーリーテリングに最適だ」。

このビデオによって若者たちにおけるカルチャー面の盛り上がりを長く続くブランド力へと変換することがグッチの狙いである。ミケール氏の強い個性を反映させてグッチというブランドを築いていきたいと考えており、ネイティブコンテンツやソーシャルメディアを用いて、現在のブランドの潮流を長期のブランドロイヤルティへと変えて行く。そんな戦略が去る6月3日のブランドプレゼンテーションで発表された。

ラグジュアリーブランドを取り巻く状況を考慮しても、この戦略はタイムリーだ。クリエイティブディレクターたちは、3年から4年ほどで、ブランドを離れるようになった。ミケーレ氏は2015年1月に現在の役職に就任したが、業界関係者たちは彼がどれだけ長くグッチに留まるのか注目している。ちなみに2015年のグッチの売上は、2014年の39億ドル(約4017億円)から大幅に増えて、44億ドル(約4593億円)となった。

商品への導線も抜かり無く

クリエイティブエージェンシー、キングアンドパートナーズ(King and Partners)の創設者トニー・キング氏は、次のように語る。「(ミケール氏は)自分の美的感覚を全体的なライフスタイルとして位置づけようとしている比較的新しいクリエイティブディレクターだ。その点で(ビデオは)ただ衣服を見せるだけでなくどうやって着こなすか、コレクションのインスピレーションが何であるかまで見せることができる素晴らしいやり方だろう。ストーリーテリングや物語性について語るブランドは多いけれど、本当にやってしまうブランドはなかった。グッチはそれを上手くやってのけた」。

ただ見せるだけではない。ビデオで使われているプロダクトはすべてリストに挙げられ、購入できるショップへのリンクも掲載してある。もちろん、ビデオのオーディエンスがグッチの1万9000ドル(約198万円)のヘビの刺繍の入ったドレスを購入することはおそらく無いだろう。しかし、グッチがターゲットにしているミレニアル世代の消費者は、620ドル(約6万5000円)のスニーカーであれば購入するかもしれない。まだ成果を判断するには早い。「ヴァニティフェア」や「ヴォーグ」から、ハイファッションではない「GQ」や「ピッチフォーク」といったメディアまで抑えることで、グッチのブランデッドコンテンツは通常の広告キャンペーンが及ぶ範囲を越えて、認知度を高めてくれるだろう(もちろん購入するためのリンクも広がる)。

舞台裏写真、#GucciStories:「オルフェウスとエウリュディケの神話」by ジア・コッポラ(@mastergia)。エウリュディケ(@loudoillon)はハチ、鳥、花の刺繍の入ったオーバーサイズのカーディガンを着て、オルフェウス(@marcel.castenmiller)は #GucciPreFall16 の花柄のプリントとスタッズのついたTシャツを着ている。#AllesandroMichele バイオ欄のリンクから「至福」のエピソードを視聴下さい。

計画的なブランディング施策

短くカットされたバージョンや写真もグッチとコンデナストのソーシャルメディア上でプロモーションされた。それはグッチが頻繁にシェアする、キュレートされたビデオコンテンツとも調和している。多くのブランドは、Snapchat(スナップチャット)やPeriscope(ペリスコープ)、そしてFacebookのライブ動画といったプラットフォームのビデオ形式にも積極的に取り組んでいるが、グッチはそうではない。

インスタグラムのマーケティングプラットフォームであるダッシュハドソン(Dash Hudson)の共同創立者でありCEOのトーマス・ランキン氏によると、「(グッチは)プロデュースされたものであるとひと目で分かる物を出す傾向にある。ほかのブランドがやっているような、『撮影舞台裏』のような物ではなく、時間をかけてグッチのイメージにぴったりと合う物を作る」という。

ダッシュハドソンのデータによると、グッチのフォロワーにおけるビデオ視聴率は、12月の2.3%から5月の1.9%に減少した(グッチは900万のフォロワー数を持つ)。また6カ月前と比べると平均投稿数も少なくなっている。Snapchatでグッチは年に数回、ファッションショーを開催するときしかフォロワーのフィードに登場しない。最近ではシンガーのSoKoがグッチのSnapchatアカウントを担当し、「グッチ2017リゾートコレクション」を盛り上げた。

「多くの人々が新しいグッチに大変興味を持っている。これまでよりずっと長いビデオのおかげで、ブランドの全体像についてより理解することができる。Snapchatやインスタグラムではそれはあまりできない。人々はそれらのプラットフォームでブランドを何度も何度も見ることに飽き飽きしはじめている」と、キング氏は語った。

Hilary Milnes(原文 / 訳:塚本 紺)