18カ月でエンゲージメントを8000%成長させたリーボック。そのSNS運用の秘訣

2015年10月、スポーツ用品大手のリーボックが、新たなソーシャルキャンペーンを展開し、話題を集めている。その内容はTwitterのフォロワーたちに、「#MoreThanTape」というハッシュタグつけて、総合格闘技「UFC」女子バンタム級王者であるロンダ・ラウジー選手への応援メッセージの投稿を促すものだ。

ラウジー選手は元柔道家で11戦無敗、全試合1ラウンドノックアウトの「美しすぎる人類最強女子」。彼女の自叙伝に関する映画にも主演が決まるなど、モデル・女優活動も活発な大人気選手だ。リーボックは3000の応援メッセージが印刷されたハンドラップ(グローブの下に装着する、拳を固定する布)を彼女に贈った(下写真)。ラウジー選手が実際に試合で使用することになるため、ファンは大喜びだ。

You sent us over 3,000 inspiring quotes for @rondarousey. Well, we printed them and put your words on her fists. Her face says it all! You also have the chance to win your very own roll of her #MoreThanTape athletic tape, as well as an autographed photo of her prepping for #UFC193. Visit reebok.com/morethantape #LinkInBio #contest #win #Reebok #RondaRousey #Rowdy #RouseyFans #UFC #MMA #ArmBarNation #DNB #MyFightYourFight

@reebokが投稿した写真 –

3000のメッセージが印刷されたハンドラップを手にするラウジー選手。

ブランド企業のソーシャルマーケティング展開を支援するVenables Bell & Partnersがこの「#MoreThanTape」キャンペーンを制作した。ソーシャル上で得たインプレッション(表示)は、すでに数百万件。インスタグラムに投稿されたキャンペーンの投稿は、1万4000件の「いいね」を獲得し、第2四半期におけるリーボックの投稿なかで首位になっている。

このように統制の取れたキャンペーンが実施できるとは、数年前のリーボックの事情を思うと、見違えるようだ。なにしろ当時は、各国のソーシャルメディアのチャンネルやマーケティングマネージャーが「混線」していたのである。

というのもリーボックに関する600ものアカウントがあり、その多くがファンによって取得されたものだった。そのため、リーボックが自ら管理できず、ソーシャルメディアをカスタマーリレーションに活用することを怠っていたのだ。

インスタグラムに資源を集中

「確かに私たちは靴を売る業界にいる」と、リーボックのソーシャルメディアマーケティング部門長のベン・ブレイクスリー氏は話した。「しかし、ソーシャルを靴を売るためだけに利用するのはやめた」。

現在、リーボックは投稿の量より質に重きを置いている。18カ月前にオーディエンスと関係を築くことを優先するようにしてから、エンゲージメントが8000%も成長したという。インスタグラムだけを見ても、2年前はフォロワー数が2000人以下であったが、現在は50万人以上に増えている。

インターネット調査企業アンメトリック(Unmetric)が米DIGIDAYに提供したデータによると、リーボックは2015年1月から10月初旬までの間に、インスタグラムのフォロワー数を163%も伸ばした。競合の間でももっとも高い数字である。

2015年1月1日から同年10月現在のインスタグラムのフォロワーの成長率。業界最大手のナイキよりも鋭いリーボックの伸び。(出典:Unmetric)

意外なことにFacebookは、リーボックにおけるソーシャルリレーションの成長にあまり貢献しなかった。ブレイクスリー氏はアルゴリズムの変化のため、Facebookでのマーケティングを積極的に活用しなかった、と語った。リーボックやその他関連企業は、Facebookでのオーディエンスのリーチが非常に小さいからだ。「オーガニックチャンネルとして、私たちとFacebookは合わない。単なる有料メディアチャンネルだ」と、彼は話した。

その代わり、インスタグラムに注力しているという。メインのアカウント「@Reebok」では53万件の「いいね」を獲得。そこで、外部のブランドとも積極的に交流している。

UFCとリーボックの共催イベントで、ファッションブランドの「アルヤンドロペラザスタイル(alejandroperazastyle)」と「ビーシービージーマックスアズリア(bcbgmaxazria)」を着用するラウジー選手。4ブランドのアカウント名がメンションされ、それぞれのアカウントに投稿される。それを通して互いのフォロワーが交流し、ブランドへの関心を広げていくインスタグラム・マーケティングだ

リアルイベントと連動させる

ブレイクスリー氏はリーボックのインスタグラムコミュニティーを3つに分割した。「クラシック」「女性」と「ブランド・コミュニティー」だ。現在、彼の一番のお気に入りは「女性」で、流行のライフスタイル映像や、全米最大級のスポーツジム「クロスフィット」によるフィットネス選手権、過酷な障害物レース「スパルタンレース」やUFCなど特定のスポーツイベントとのタイアップを重視している。

Twitterにおいては、オーディエンスと「会話」をすることを重視しているが、その方法が変わっている。これにはUFCのロンダ選手のキャンペーンも含まれるが、他にもVenables Bell & Partnersによって企画された「Twitter人間配達サービス(Twitter Human Dispatch Service)」も含まれる。この企画はニューヨーカーたちが自身の靴のサイズと住所をツイートすると、街にいるランナーたちによって走って届けられるイベントだ。このイベントでは1億9500万件のTwitterインプレッションを獲得した。ほかにも、パレオダイエット(旧石器時代の食事法によるダイエット)を実施している人たちにベーコンを届けるイベントを開催し、2570万件のインプレッションを獲得した。

「Twitter人間配達サービス」。ランナーが注文した靴を走って持ってくる。

「閉鎖的」なソーシャルは避ける

すべてのソーシャルチャンネルを効率良く活用することは大変難しい。リーボックはTwitter、インスタグラムやピンタレスト(Pinterest)で活動を続けるが、ブレイクスリー氏によると、彼が「閉鎖的」なソーシャルプラットフォームと呼ぶ「ワッツアップ(WhatsApp)」、「ウィチャット(WeChat)」や「スナップチャット(Snapchat)」では活動しなくてもいいと語った。「スナップチャットのアカウント運営をしていないので、その場で我々の話題が上がっても、特に気にしない」。スナップチャットから他のソーシャルへの拡散があまり見込めないと考えているからだ。

Shareen Pathak(原文 / 訳:小嶋太一郎)
Image courtesy of Reebok