リーボック、そのデジタル戦略は パートナー連携 が基点:「我々は根っからのテック企業ではない」

デジタルフィットネスをめぐる覇権争いはヒートアップの様相を呈しているが、スポーツ用品大手のリーボック(Reebok)が近い将来、ナイキ(Nike)やアンダーアーマー(Under Armour)のようにテック企業として自社のイメージチェンジを図ることはなさそうだ。

「一部のライバル企業のようにテック企業になるつもりはない」と、リーボックのグローバルビジネスデベロップメント部門でシニアマネージャーを務めるエミリー・マリンズ氏は語る。「我々がめざすのはフィットネスアパレルとフットウェアのトップ企業になることだ」。

だからといって、アディダス傘下のリーボックが、デジタル分野で何の進歩もなかったわけではない。同社は2013年、フィットネス・インストラクターやトレーナー向けのプラットフォーム「リーボックワン(ReebokONE)」を発表。このプラットフォームの会員は、最新フィットネス製品へのアクセスを優先的に与えられ、新商品も大幅に割引してもらえる。また2016年には、「ハンドスタンド(Handstand)」と提携。「ハンドスタンド」は、煩わしいジムの会費や契約なしで、地元のトレーナーを顧客と直接つなげるアプリだ。

「ハンドスタンド」との提携

「ハンドスタンド」との提携は、先日はじまったリーボックのグローバルキャンペーン「ビー・モア・ヒューマン(Be More Human:人間を極めろ)」第3弾の中核でもある。同キャンペーンでは、顧客がボタンをタップするだけで、何千人もいる「リーボックワン」のトレーナーとの無料ワークアウトを全米の各都市で受けられる。

「ハンドスタンド」のユーザーは、ログインして「フリー・リーボック・ワークアウト(Free Reebok Workout)」オプションで、ワークアウトのタイプ(たとえばヨガやピラティスなど)を選択したのち、「フリーセッション(Free Session)」オプションをセレクトすると、近所のトレーナーとペアを組める。ただしユーザーは、ワークアウト後にインストラクターと握手している写真をソーシャルメディアで共有しなければならない。

また同キャンペーンには、テレビおよびデジタルの広告や、インフルエンサーによるテスティモニアル(証言)のオンラインコレクションも盛り込まれている。

自分たちのアイデンティティー

マリンズ氏は、デジタルフィットネスに対するリーボックのアプローチがライバル企業とは一線を画してきたことを認めた。アンダーアーマーは、買収によってデジタルフィットネスへの対応力を高め、総額で約7億5000万ドル(約850億円)を「マップ・マイ・フィットネス(MapMyFitness)」「エンドモンド(Endomondo)」「マイ・フィットネス・パル(MyFitnessPal)」などのアプリに投資している。

一方のナイキは独自のデジタルソフトウェアを開発し、そのソフトウェアを「Nike+ app」に統合することに力を注いできた。それに対してリーボックは、適切なパートナーとコミュニティーを見つけ出して、協力することを優先させているのだ。

「ブランドとしてのアイデンティティーをわざわざ作り直す必要はなかった」と、マリンズ氏は語る。「我々は自分たちのアイデンティティーにこだわりたかった。つまりそれは、すぐれたフィットネスコミュニティーを見つけ出して、その力を借り、そういったパートナーたちとともに、デジタルフィットネスを積極的に受け入れることだ」。

パートナーシップが鍵を握る

そのこだわりは、近年見られるプロフェッショナルパフォーマンス向けのフィットネスブランドとしてではなく、パーソナルなフィットネスブランドとしてイメージチェンジを図る同ブランドの試みとも結びつく。その鍵を握ってきたのがパートナーシップだ。

リーボックは、フィットネスプログラム「クロスフィット(CrossFit)」や総合格闘技「UFC」をはじめとするエンゲージメントの高いフィットネスコミュニティーと提携。また、プロのアスリートの代わりに、ファッションモデルのジジ・ハディット氏やオーストラリアのフィットネスプロ、エミリー・スカイ氏など、フィットネス界の指導者やスターから推薦の言葉をもらったりしてきた。

「既存アプリとの提携に対するリーボックのオープンソースなアプローチは異質であり、安上がりであることも確かだ」と、市場調査会社NPDグループ(NPD Group)でスポーツ産業アナリストを務めるマット・パウエル氏は語る。「現時点では、コネクテッドフィットネスを制覇するための必勝法は誰にもよくわかっていない。したがって、このアプローチがリーボックに良い結果をもたらす可能性もある。少なくとも金銭的な意味では」。

なんら脅威を感じていない

デジタルコネクテッドフィットネスの探求において鼻息が荒いのはナイキとアンダーアーマーかもしれないが、リーボックはなんら脅威を感じていない。コミュニティーと歩調を揃えて、フィットネスという名の長旅を楽にする伴侶になるという戦略が、コネクテッドフィットネスに対する同ブランドの取り組みだけでなく、リーボックというブランドを前進させるうえでも有効だとリーボックは確信しているのだ。コミュニティーに所属している人たちの方が付いてきてくれる見込みは高いと、マリンズ氏は語る。

すでにリーボックは、「リーボックワン」のインストラクターたちで構成されるネットワークと密接に連携して、たとえば同ネットワークから集まったデータから新製品のアイデアを見つけている。そしていま、リーボックは「ハンドスタンド」と共同で、大量のデータを使って顧客への理解を深め、提供するサービスの質を向上させる計画も立てている。

「我々は根っからのテック企業ではない。したがって、デジタルフィットネスに対する我々のアプローチは、優れたテック系パートナーを探し求めることだ」と、マリンズ氏は語る。「そして、適切な方法で適切な人たちに我々を認知してもらえるようになったら、次の目標はパーソナライゼーションとカスタマイゼーションを推し進めることになるだろう」。

Tanya Dua (原文 / 訳:ガリレオ)