NetflixのSFドラマ広告がスゴい:インプ測定と引き換えに、アドブロック利用者を狙い撃ち

技術の進歩は素晴らしいが、それを悪用する人間も必ず存在する。ダークなSFドラマ「ブラック・ミラー(Black Mirror)」をNetflix(ネットフリックス)で視聴した人なら、その意味がよくわかるだろう。

Netflixと同社のエージェンシーであるマレンロー・メディアパブ(MullenLowe Mediahub)は11月、そうしたドラマのテーマを巧みに利用し、新シーズンを宣伝するスマートな方法を編み出した。それは、アドブロッカーをターゲットにするというものだ。

アドブロッカーをインストールしている人が、たとえば米テックメディア「ザ・ネクストウェブ(The Next Web)」にアクセスすると、次のような警告メッセージを伴う広告が表示される。「ハロー、アドブロッカーのユーザー。あなたには広告が見えない。だが、広告にはあなたが見える」(以下、Tweetを参照)。

これは、現代テクノロジーをダークに風刺するドラマの雰囲気によく合う。一方、アドブロッカーを利用していない人がアクセスすると、「ブラック・ミラー」を宣伝する通常の広告が表示される。どちらの広告でも、サイト訪問者がクリックすると、同番組を視聴できるNetflixへ誘導されるのだ。

広告ブロックを愛用している私だが、この広告は素晴らしいと思った。こんな広告を打つ企業が増えたら、広告ブロッカーは不要になる

実施した企業は3社

「我々の望みは、リーチが難しいオーディエンスをターゲットにして、彼らの関心を喚起するクリエイティブな方法を見つけることだ」と、マレンロー・メディアパブのデジタルメディアおよびイノベーション担当エグゼクティブディレクター、ショーン・コーコラン氏は語る。「広告をブロックしている人に、直接語りかけるのは面白いと思う。それに、ドラマのテーマに合わせて、誰も完全には逃げられないと知らせているのだ」。

マレンロー・メディアパブは、この広告キャンペーンの実施に向けて多数のパブリッシャーに接触したが、合意したメディア企業はわずか3社。スレート(Slate)、マッシャブル(Mashable)、そしてザ・ネクストウェブだ。

ザ・ネクストウェブのパートナーシップ担当ディレクター、レイ・カースベイ氏は、Netflixが的確にアドブロッカーを検知する方法を説明した。大多数のアドブロッカーはJavaScript変数「window.noBlocker」を設定している。パブリッシャーがこのコードを検知すると、それに応じて背景が変化し、Netflixのバナーを表示するという。

「背景の変化はミリ秒単位で起きるので、ユーザーはまず気づかない」と、カースベイ氏。

インプの測定は不能

ザ・ネクストウェブは、独自開発したシステムを通じて「キャンバス広告(Canvas ads)」を提供している。これはフルページの広告フォーマットだが、簡単に広告を隠したりほかのページに移動したりできるので、さほど押しつけがましくない。

CEOのボリス・ベルトハウゼン・バン・ザンテン氏によると、同サイトがキャンバス広告を表示するのは、通常1日あたり1回かそれより少ない頻度で、広告費も割増料金だという。だが、ザ・ネクストウェブはアドブロッカーをターゲットにするために、Netflixのキャンバス広告をハードコードで書いて自社コンテンツ管理システムに組み込み、ユーザー体験を損なわないようにする必要がある。

ただし、これを実行するにはひとつ問題がある、とカースベイ氏は説明する。同氏いわく、ザ・ネクストウェブはキャンバス広告のインプレッション数を直接測定できないという。インプレッションを追跡するコードを埋め込むことは、実質的に、アドブロッカーにキャンバス広告の存在を知らせることになるからだ。

UXは損ねてはいけない

ザ・ネクストウェブはそれでも、このキャンペーンについてCPM(インプレッション単価)でNetflixに課金している(標準的なバナー広告の通常料金の3倍から4倍の料金になる)。同サイトでキャンペーン実施中に発生したインプレッション数を推計するために、独自のウェブ分析に基づき、アドブロッカーを使用しているユーザーの人数を割り出し、「経験に裏付けられた推測を行う」と、カースベイ氏は説明する。

コード中のリクエストが増えると、そのぶん処理に要する時間も増えるため、ページの読み込みも若干遅くなると、カースベイ氏は付け加える。「我々は、速度とサイトの読み込みを改善するため、サイトに対して多数のテストと改良を行う」とカースベイ氏。「サイトのほかの部分で行った改善に照らして、読み込み時間のわずかな増加は、十分許容できると判断した」。

「ブラック・ミラー」のキャンペーンはスマートだったが、カースベイ氏はほかのパブリッシャーに向けて、無駄に押しつけがましくならないようにと釘を刺す。「我々はクライアントのために、広告ブロッカーをターゲットにする選択肢を残しておく」と、カースベイ氏は語る。「だが、再度行うなら、そうすべき理由を明らかにする必要がある」。

Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)