サヨナラ、ミレニアル:台頭するZ世代向けエージェンシー

史上もっとも綿密に調査されているといわれるミレニアル世代。彼らの躍進を前に、1990年代半ばから2000年代初頭生まれのZ世代(ジェネレーションZ)はスポットライトを浴びることなく、マーケターのターゲットオーディエンスとして軽視され、挙句の果てにはミレニアル世代とひと括りにされてきた。

しかし、状況は変わりつつある。Z世代の多くが大学生となり、マーケターはいま、彼らがミレニアル世代とはまったく異なることに気づきはじめている。現在では、Z世代にリーチしようとする小規模企業が増え、彼らをターゲットとする広告展開も活発になってきた。ザ・パイナップル・エージェンシー(The Pineapple Agency)やリフューエル(Refuel)といったエージェンシー、ユースロジック(YouthLogic)やゼブラ・インテリジェンス(Zebra Intelligence)といったコンサルティング会社、またオウサムネスTV(AwesomenessTV)のようなメディア企業も、インターネットなき世界を知らない世代に焦点を当てるようになっている。平均アテンション持続時間がわずか8秒間という彼らは、2020年には26億人に増え、年間購買力は合計440億ドル(約4兆8000億円)に達する見通しだ。

設立から5年を迎えたオウサムネスでブランドパートナーシップ担当バイスプレジデントを務めるハーレイ・ブロック氏は、次のように語る。「若い世代の人たちはひとまとめに『ミレニアル世代』と呼ばれることが多い。しかし最近は変化が起こりつつあり、Z世代の存在感がより際立ってきた。ミレニアル世代とZ世代、それぞれの平均年齢を考えてみると、両者がまったく異なるライフステージにいること、まったく違うものに関心を抱いていることがわかる。それゆえ我々も別々のプログラムを考え、別々のコミュニケーション手法を採らなければならない」。オウサムネスではこれまで、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)やコールズ(Kohl’s)、オールド・ネイビー(Old Navy)、カバーガール(CoverGirl)など多くのブランドがコンテンツを展開してきた。

Z世代運営のエージェンシー

Z世代に注目するエージェンシーのなかには、まさにZ世代によって運営されているところもある。起業家でZ世代とのつながり方を紹介するガイドブック『BrandZ(ブランドZ)』の著者である18歳のコナー・ブレイクリー氏は、高校時代に宿題代行サービスを開始。見つかって危うく停学処分になりかけた経験をもつ。ブレイクリー氏は大学1年のとき、自分たちの世代がマーケターから軽視されていることに気づいたのを契機に、マーケティングコンサルティング会社ユースロジックを興した。「10年後にもブランドが成功を収めるには、もっと若いブランドイメージを構築する必要がある」と、同氏は指摘する。

大半のブランドはY世代とZ世代をひと括りにし、テクノロジーとの関わり方の違いを考慮していない。しかしZ世代には、幼少時からインターネットとデジタルコンテンツにアクセスできたという顕著な特色がある。「情報とテクノロジーにあふれた世界に生きている僕たちは、ゴミを簡単に見分けられる」と、ブレイクリー氏は語る。「だからこそブランドは、『本物』でなければ勝てない」。

またZ世代は、古い世代とは違う視点で世界を見ている。「1996年以降に生まれた僕たちの世代は、911(米同時多発テロ)の影に脅かされ、親が不況に苦しみ、やりくりする姿を目の当たりにしてきた」と、ブレイクリー氏は続ける。「僕たちの購買行動や将来への見通しは、こうした社会的、文化的な背景による影響を無意識のうちに受けている」。

20歳になる若き起業家、ティファニー・ツォン氏は経営するコンサルティング会社ゼブラ・インテリジェンスの名前の由来について、Z世代は「(ゼブラ=シマウマのように)黒でも白でもないから」だと語る。ツォン氏はポストメイツ(Postmates)のようなブランドとティーンエイジャーのフォーカスグループを結び付け、消費者の意見を反映したマーケティングキャンペーンの開発を支援してきた。「Z世代は大人になったばかりで、買い物習慣もまだできあがってはいない。5年後、はじめてのボーナスを手にし、バッグを買いに行く彼らが、いったいどんなバッグを手に取るのか?」と、彼女は語る。「選ばれるのは、彼らにもっとも鋭くターゲットを絞り込むことができたブランドだと思う」。

大人たちももはや見逃せない

もちろん、こうしたエージェンシーやコンサルティング会社を経営するのはZ世代ばかりではない。38歳のジャスティン・モス氏は2014年、実験的なエージェンシー、ザ・パイナップル・エージェンシーをコロラドで設立した。若い世代にパイナップルがデザインモチーフとして人気なこと、Snapchatでパイナップルが「複雑な関係」を意味することから、この果物を社名に選んだそうだ。同社はVR(仮想現実)や各種イベント、音楽フェスティバルなどを活用し、バドライト(Bud Light)やラングラー(Wrangler)といったブランドのプロモーションを展開している。テクノロジーに精通しているZ世代についてモス氏は、ブランドにとっては、メッセージをスピーディに送り届けられるというメリットがあると指摘。「Z世代は最速で仲間とコミュニケーションできる。彼らをブランドロイヤルティの高い顧客に育てることができれば、ブランドについて仲間たちに広めてくれるはずだ」と説明する。

全世代を等しくターゲットとしているエージェンシーでも、ブランドとZ世代とのつながりを強化するようなサービスを開発してきた。たとえばデイ・ワン・エージェンシー(Day One Agency)は先ごろ、Z世代とのホットライン「ASK GEN Z」をローンチ。同社のCEO、ジョシュ・ローゼンバーグ氏によれば、Z世代が政治観や余暇の過ごし方について、さまざまな質問に答えるサイトだという。

大手ブランドが、Z世代に関する知識を社内に蓄積していくケースも出てきた。ユースロジックのブレイクリー氏は携帯大手スプリント(Sprint)のために、若手スタッフを集めた社内マーケティングチームを結成。数週間後には、キャンペーンをスタートする計画だ。NFLはオウサムネスTVと協働し、若いファンに試合の舞台裏を紹介するプログラムを展開している。「若いファンは、いままでとは違う新しい方法でNFLとつながろうとしている。彼らがどこにいてもリーチできるような環境を構築したい」と語るのは、NFLのマーケティング&ファン獲得戦略担当バイスプレジデントを務めるジョアンナ・ファリーズ氏だ。

ソニー・ミュージックエンターテインメント(Sony Music Entertainment)も、Z世代をターゲットとする独自の動画制作会社アストロナウトウォンテッド(Astronauts Wanted)を2013年に設立した。アストロナウトはブランドパートナーシップを通じてデジタルインフルエンサーと協働しており、今年はデジタルメディアイベント「ニューフロンツ(NewFronts)」でのプレゼンテーションもはじめて行った。同社のブランデッドエンターテインメント担当シニアバイスプレジデントを務めるクリスティン・マーフィ氏は、Z世代の独自性についてニューフロンツでこう語った。「ある意味、直感に優れた世代だといえる。彼らは社会のできごとに敏感だ。ミレニアル世代は不機嫌な大人世代への皮肉を込めて『大人は敏感だ』などという。だがZ世代は、本当の意味で敏感で進歩的なのだ」。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:SI Japan)
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