危険サイトの「ブラックリスト」入りを望むブランドたち:対応に追われるエージェンシー

トランプ大統領の側近、スティーブ・バノン氏が会長を努めていた、極右ニュースサイトの「ブライトバート(Breitbart)」に新たな注目が集まるなか、各種ブランドがさかんに同サイトを広告ローテーションのブラックリストに載せるよう、取引先のメディアバイイングエージェンシーに求めている。

米メディアエージェンシー、メディアスミス(Mediasmith)でインサイトおよびテクノロジー部門のバイスプレジデントを務めるマーカス・プラット氏は、「クライアントのなかにはブライトバートや特定のウェブサイトに広告を載せないと保証できるかと尋ねてくる企業がある。その他の企業に対しても当社には特異性のあるものをブロックするオプションがあり、また当社のブラックリストの見直しも可能だと、積極的に伝えている」と話した。

メディアスミスはブラックリストアプローチを望むクライアント向けに、ブラックリストを作成した。そこに記されたサイトについては最新リストを参照してほしい。リストにはブライトバートや多数の「フェイクニュースサイト」、さらには保守系ニュースサイト「ドラッジ・レポート(Drudge Report)」までも含まれている。むろん、クライアントは、このセレクションをカスタマイズできる。

あおられるブランド各社

こういった動きが見られるようになったのは数カ月前。DIGIDAYでも報じたが、ブライトバートに広告掲載されたブランドがTwitterなどのソーシャルメディアで非難されはじめたころからだ。これを受けて、オールステート(Allstate)やモドクロス(Modcloth)といった大手の広告主をはじめ、多くのブランドが広告を引き上げた。

このケースでは、多くのブランドは複雑なデジタル広告のエコシステムがリターゲティングやオーディエンスターゲティングを通じて、彼らの広告をブライトバートに載せているとは考えてもいなかった。さらに踏み込んで、その点を指摘する企業も多かった。たとえば、オールステートはある苦情に対するTwitterのメッセージで「残念だが、インターネット購買システムというものの常で、我々の広告が掲載されるサイトをすべて開示してもらうことはできない」と述べている。

しかし、元ブライトバートのチェアマンであるスティーブ・バノン氏がドナルド・ドランプ政権の最高幹部を務めるなど、いまブライトバートにメディアの注目が集まっていることを認識するブランド各社は攻勢に出ている。同サイトに関するニュースの嵐はおさまらず、ブライトバートの元ニュース編集者であるマイロ・ヤノポロス氏もまた小児性愛者に理解を示すといった挑発的な言動でニュースを騒がせている。

注目される危険なサイト

ブランドがエージェンシーのバイヤーに直接働きかけるケースもある。

「なかには、ブライトバートや同様のサイトについて具体的に尋ねてくるクライアントもいる」と話すのは、デジタルメディアエージェンシーのエッセンス(Essence)でグローバルディレクターを務めるオスカー・ガーザ氏。エッセンスのクライアントはヒューレット・パッカード(HP)、ターゲット(Target)、ビザ(Visa)などだ。「話し合いはこのままいけば、いずれヘイトスピーチにカテゴライズされるといったようなものだ。ブランドのなかには非難されないような姿勢を取っているものある」。

先日、BuzzFeed Newsは、米広告会社のオムニコム(Omnicom)の子会社、OMDのオーストラリア店からeメールが届いたと報じた。その内容は、同社の世界的なクライアント(マクドナルドやApple、ユニリーバなど)からブライトバートをブロックするよう求められたことを伝えるものだ。境界線はあいまいなのかもしれない。たとえば、メディアスミスのブラックリストには、風刺のきいた極右のフェイクニュースサイト「ボロウィッツ・レポート(Borowitz Report)」や保守派層向けの「レットステート(RedState.com)」なども含まれる。

メディア投資会社のグループM(GroupM)のブランドセーフティ部門トップのジョン・モンゴメリ氏はブライトバートをはじめ、右派左派ともに政治的に危険なサイトへの注目が高まっていることは明白だという。彼は週に5、6回は世界的なクライアントとブランドの安全性を維持するためになされていることについて話し合っているという。「認知度が高まっていることは疑いようもなく、多くの場合、風評被害はより緊急性を伴っている」。

これはひとつの出発点だ。以前は、エージェンシーに対し、あまり好ましくない場所で自身の広告を見たと伝えてくるのは、クライアントやCMOが多かった。

公平性を求めるエージェンシー

ガーザ氏は、エージェンシーが公平性を求めているといった。ひとつには、エージェンシーが「不当にパブリッシャー罰する」ことは避けたいということ、そしてふたつ目には彼らが効率性を求めているということだ。

通常、大手ブランドには2種類のメソッドが提供される。ひとつは事前に認可された一連のサイト(数千に及ぶ)にのみ広告が掲載されるホワイトリストアプローチ。バイヤーによると、これはスケールが制限されコストが増えるが、安全な手法で、比較的効率性が低いという。ブランドに与えられるもうひとつの選択肢は、特定のサイトをブラックリストに載せられるブラックリストアプローチだ。これは効果が低く、不完全だ。

エッセンスのガーザ氏は、このように彼らが「耳をそばだてる」ようなケースでは、エージェンシーが社内で関係するエグゼクティブ間の会議を発動する。話の内容は基本的に「こちらが、彼らが考慮していかなければならないことのリストだ」というものだ。直近の話題は、中東での厳しい政治的なニュースにまつわるもの、その前はアメリカの政治ニュースについてだった。狙いはアイデアを書きとめ、クライアントに披露することだ。

グループMのモンゴメリ氏は米大統領選挙の後、同エージェンシーがダブルベリファイ(DoubleVerifi)とインテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)に赴き、ブラックリスト候補の危険サイトの新カテゴリを作成した。「マスコミがブライトバードを叩いたとき、シニアメディアクライアントは、『我々が行っていることはどうだ? 我々は安全か?」といったと、彼は述べた。マネジングディレクターからこんな問い合わせの電話が来ることを望むCMOはいない。

ガーザ氏によると、自分の嫌いなサイトにどんな広告が登場するかという消費者の注目度が増すなかで、さまざまな行動が生まれているという。初期に見られた行動の多くは「Sleeping Giants」というTwitterアカウントにあおられたものだ。このアカウントでは、ブライトバートの広告をスクリーンショットで撮影し、それをブランドにメンションすることを人々に促していた。同アカウントによると、これまでに1131ものブランドが、ブライトバートをブラックリストに載せたことを表明したという。

SHAREEN PATHAK(原文 / 訳:Conyac
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