CVRが80%も向上? 美容系「拡張現実アプリ」が急速に拡大

コスメ専門の小売ブランドであるセフォラ(Sephora)が、同社のモバイルアプリにAR(拡張現実)を採用した。アプリ「バーチャルアーティスト(Virtual Artist)」を利用すれば、口紅の購入を検討しているときなどに、ARを通してスマホ画面上の自分の顔で確認できる。

拡張現実テクノロジー企業モディフェイス(ModiFace)によって運営されるこのアプリは、ユーザーに商品を試してもらうことを目的に、2016年1月にローンチされた。先述のAR機能はアプリのホームページに用意されていて、ユーザーはデバイスのインカメラを通してさまざまな口紅の色を「試す」ことができる。AR機能を使用していても、ユーザーは自由に顔を動かせるが、試しているコスメも追従して表示。また、「買い物カゴに入れる」ボタンもスクリーンの上部に配置されている。

8週間で4500万人がトライ

セフォラはこの新たなAR機能を単なる仕掛けや仕組みとは考えていない。ユーザーが購入を決断する際の材料ともなり得るからだ。

「ARを通してユーザーが商品を試すことで、その商品をいかに使えば良いかが分かり、自信につながるため、購入の手助けとなる。また、商品の開発理由や開発方法もユーザーに伝えることができる」と、セフォラのイノベーション研究所を統括するブリジット・ドラン氏は、「モバイルコマースデイリー(Mobile Commerce Daily)」に話している

セフォラはコンバージョンを開示するにはまだ早すぎるというものの、ローンチから8週間で、すでに4500万人がAR機能を「試した」という。

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セフォラのアプリ「バーチャルアーティスト」

米コスメブランドの72%が活用

しかし、ARを利用しているのはセフォラだけではない。企業向けクラウドコマース企業、デマンドウェア(Demandware)の調査によると、アメリカのコスメブランドの72%が販売促進のために、ARなどを含む「ガイド付き販売」形式を試している。

世界最大の化粧品企業ロレアル(L’Oreal)も、ARで商品を試せる「メイクアップジーニアス(MakeupGenius)」というアプリを2015年にローンチしていて、すでに630万件のダウンロードを獲得。同年の5月にも、アメリカの化粧品企業ベネフィットコスメティクス(Benefit Cosmetics)が「ブロウジニー(Brow Genie)」というアプリをリリースしている。このアプリはARを使って、眉をどのように整えれば良いかを教えてくれるものだ。

米化粧品ブランドのエリザベス・アーデン(Elizabeth Arden)も、リアルタイムでデバイスの画面に映ったユーザーの顔に口紅やアイライン、マスカラなどのメイクを施すことができるアプリ「YouCam」とタッグを組んでいる。こちらもユーザーは商品を自由に仮想空間で試すことができ、購入も可能だ。ちなみに、「YouCam」には1億人ほどのユーザーが存在する。

「店舗に来店し、店員から購入することを好む顧客もいる」と、エージェンシーのサピエントニトロ(Sapient Nitro)のエクスペリエンス&イノベーション戦略部門を統括するザック・パラディ氏は指摘する。「しかし、小売企業は常に新しい購入方法やエクスペリエンスを提供しなければならない。特に化粧品や美容業界では、ARがもっとも強力な方法だ」。

進歩し続けるAR技術

一方、成功するためには、テクノロジーの進歩が必要だ。

「これらAR機能が装備されているアプリにとって、現実主義になることが重要だ」と、モディフェイスのパーラム・アーラビ氏は話す。同社はセフォラ以外にも、ロレアルやほかの化粧品ブランドのAR機能を作成している。「質感、光の反射やユーザーの肌の色合いなど、さまざまな条件下で色がどう映るか、常に向上させている」。

実は、アーラビ氏はトロント大学の元教授。彼は、ボトックス注射を受けた人の顔がどのようになるか予想するシミュレーターを開発し、モディフェイスを設立した。現在では65社ものブランドが、スキンケアやヘアカラー、メイクアップをシミュレーションするために同社のARを使用している。

アーラビ氏によると、モディフェイスはARがコンバージョンに及ぼす影響を「細部に至るまで」調べているという。AR技術が正しく使われないと、ブランドに悪影響を及ぼす可能性があるためだ。

「もしARで映し出された色がピエロのように見えてしまえば、売り上げに悪影響が出てしまう」と、アーラビ氏は言う。また、商品と同じ色で映らなければ、消費者は商品とブランドそのものに興味を失ってしまうとも付け加えている。

CVRは80%、来店率は30%も向上?

モディフェイスはブランドに対し、正しくAR技術が使われればオンラインやモバイルのコンバージョンを80%ほど向上させ、店舗への来店率も30%向上させることができると説明。アーラビ氏は、ユーザーが体験するARエクスペリエンスは、コンバージョンと同時に、AR技術そのものにも影響を及ぼすと話している。表現方法や購入方法の簡易化で、商品の売れ行きが決まるからだ。

パラディ氏は最初にAR技術を導入したブランドは、賞賛に値すると話している。

「5年前までAR技術にはオモチャっぽさがあったが、現在ではかなり進化している。すでに役立てる領域に達している」と、パラディ氏は語る。「購入する際の決断の手助けとなり、小売企業は差別化を図ることができる。また、ARは楽しいことも重要な要素だ」。

Hilary Milnes(原文 / 訳:BIG ROMAN)