米トヨタのSnapchat戦略:フェス限定ジオフィルターとライブ・ストーリー

若年層から絶大な支持を得ているプラットフォーム、Snapchat(スナップチャット)との親和性が高ければ、スムーズにマーケティング活用できるブランドもあるだろう。その一方、活用法の見極めに慎重になるブランドもある。

米トヨタにとってSnapchat活用の課題は、適切なブランドメッセージを発信することだ。同プラットフォームの広告販売がますます盛んになりつつあるなかで、個々のブランドが集団のなかから頭ひとつ抜きん出ることが難しくなってきている。

米トヨタの考え方

8月の第1週、米トヨタはSnapchat上で、はじめてジオフィルター(自分のいる場所をスナップ写真で共有できる位置情報サービス)を利用。これはロック・フェス「ロラパルーザ」における、特設コンサートのパスとしても活用された。

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セルフィーが歌手レオン・ブリッジズのシークレットライブのVIPパスとして活用された。

米トヨタがスポンサードしたこのフェスティバルにおいてユーザーは、メインステージや人気急上昇中のアーティストをフィーチャーするステージ「トヨタ・ミュージック・デン」などで、このジオフィルターを利用できた。これらの場所でセルフィーを撮影し、その写真を左にスワイプすると、歌手レオン・ブリッジズによるシークレットライブのVIPパスが表示されたのだ。

米トヨタのソーシャルメディアマーケティングの責任者、フローレンス・ドラックトン氏は「キャンペーンがユーザーのフィードのなかに無遠慮に入ってくるのではなく、誠意があって信用できるキャンペーンでありたいと思っている」と語った。

2015年6月、米トヨタはSnapchat上のローカライズされたライブストーリーで、広告ユニットの試験運用を行なった。これは自動車ブランドでは初となる。ロサンゼルス地域をターゲットにしたいくつかの短い動画で、カムリやカローラといったモデルが登場。以来、米トヨタはSnapchatユーザーの利用に即した形のコンテンツ製作へと舵を切っているようだ。しかも、ただビュー数を追いかけるのではなく、エンゲージメントをメインの目標として据えている。

リスクを取って成功

米トヨタによると、件のジオフィルターは運用された3時間で5万ビューを獲得したという。「私たちはフェスティバルの参加者を驚かせるような、彼らのことを分かっているブランドであることを示せるキャンペーンを考えていた」と、ドラックトン氏は語る。

同氏によると、彼女のチームが提案するまで、Snapchatはこのような使い方を考えていなかったという。「それまで考えたことすらなかったのではないかと思う。今回、私たちのチームが働きかけることで、このようなキャンペーンを実施できた」。

このフィルターはライブストーリーユーザーによって発見されなければ意味がない、という点において、リスクをとったといえる。ユーザーたちによってこのコンテンツを見つけてもらえる保証はどこにもなかったし、事前に告知をしていなかった。しかし、その結果には満足しているという。この夏のほかのイベントや今後のキャンペーンにおいても、この事例を活かしていくつもりだ。

インフルエンサーに学ぶ

米トヨタはまた、Snapchatでは音楽とエンターテイメント分野のインフルエンサーとも取り組んできた。ミレニアル世代のラテン系アメリカ人をターゲットに据えて、5月に開催されるビルボード・ラテン音楽アワードと結びついたキャンペーンをローンチ。このキャンペーンでは、3人のミュージシャンたちに、彼らのSnapchatチャンネル上で、独自の短編映画を制作してもらった。

3つの短編映画は、異なる音楽スタイルをテーマに物語を描いている。アーティストGoyo(グループ・ChocQuibTown)はヒップホップ、歌手エル・ダーサはカントリー音楽、ナターリア・ラフォルカーデはポップ音楽を担当。ミュージシャンたちがそれぞれのチャンネルで入れ替わるごとに、トヨタのRav4がバックグランドに巧妙に配置されているのを確認できる。そして、#AceptaElReto(チャレンジを受け入れろ)というタグラインが最後に現れるのだ。

米トヨタはまだSnapchatというプラットフォームをどう効率的に活用できるかを学んでいる最中だ。そのことからも、インフルエンサーを起用することは理に適っているとドラックトン氏は考える。インフルエンサーたちは、すでに努力を積み重ねてフォロワーを増やしてきたわけで、ユーザーたちが何を欲しているのかを知っているからだ。「まだ我々は発展段階なのだから、ちゃんと研究してきたプロに頼らない理由はない」と、彼女は語る。

オーガニックリーチの拡大

しかし、プラットフォームであるSnapchatのサポート状態が万全というわけではない。現在のところ、米トヨタはインフルエンサーたち自身のアカウントからの指標を報告してもらい、それを信頼するしかない。「Snapchatはまだ測定方法に関しては取り組んでいる最中だ。改善の余地はあるだろう」とドラックトン氏。

2015年に開始された米トヨタのライブストーリーは進化している。ナレーションを入れて、走行する車のショットを見せ、幸せそうな夫婦が写る、といった従来のフォーマットではなく、インフルエンサーの手作り感が残りつつも、拡散力があるSnapchat独自のフォーマットに適応しようとしている。

Snapchatのペイドプレースメント広告を今回試したことで、ドラックトン氏が次回試みているのは、米トヨタ自身のチャンネルを通したオーガニックリーチの拡大だ。「全体のメディア戦略を理解したら、すぐに我々独自のものを展開していく。大事なのは完成作品ではなく、そのプロセスが面白いものであることだ」。

Image from TOYOTA
Grace Caffyn(原文 / 訳:塚本 紺)