KFC、「チキンフレーバーの日焼け止め」でメディアを扇動:バズネタ誕生の背景

ファストフードチェーンのKFCは8月22日(米国時間)、フライドチキンの香りがする日焼け止めを発表。たった3時間で「品切れ」となったという。この話題は、いかにも楽しそうな見出しや大きな文字の見出しとともに、次々と報じられていた。

「Google News」でざっと検索してみると、この宣伝目的(そして計算ずく)の製品を取り上げたニュースサイトの数は95にのぼった。米国では、「ハフィントン・ポスト(The Huffington Post)」と、「ピープル(People)」が米国東部時間の正午ごろに初めて取り上げ、その後、「エリート・デイリー(Elite Daily)」や「デイリーメール(Daily Mail)」といったサイトに広がっていった。

23日朝には、英国メディアもこの話題に飛びつき、「マリクレール(Marie Claire)」のほか、「ザ・テレグラフ(The Telegraph)」や「イブニング・スタンダード(Evening Standard)」といった英国生まれのメディアなど、あらゆるメディアがこの製品に関する記事を掲載している。

ピープル」など一部のメディアは、製品を実際に手に入れ、「実に不快な」においだと報じたが、ほかのメディアは、KFCが公開したノスタルジーを感じさせるマイクロサイトの情報を利用しただけだった。

制作されたのは3000本

この大騒ぎのなかで見逃されがちなことは、無料で配られたこの製品の数が3000本しかなかったことだ。たとえ、これが入手困難な製品であったとしても、KFCにもたらされる宣伝効果は、まさに本物なのである。

現在、上記マイクロサイトには次のように書かれている。「『KFC Extra Crispy Sunscreen』は期間限定で提供しておりましたが、すべて品切れとなりました。この素晴らしいWebサイトはまだご覧いただけますが、このような形でのお詫びになりますことをご了承ください」。

この戦略的なPRは、まさに宣伝目的だ。ネタに飢えているメディアに目を向け、カーネルの策略にまんまとはめたのだ。ニュースが不足しがちな夏は、誰もがノドから手が出るほどネタを欲しがっている。このPRは、「有名+奇抜」という理想的な条件をまさに満たしているのだ。

餌に飛びついたメディアたち

この日焼け止めは、22日にインターネットで公開されて以来、ソーシャルメディアで1万1000回取り上げられていると、ソーシャルメディア分析企業ブランドウォッチ(Brandwatch)のアナリストであるケラン・テリー氏は述べている。「感情」に分類されるコメントの75.9%が好意的なものだそうだ。

「KFCは、この新しい広告キャンペーンを活用して、広告とソーシャルの両方で成功した」と、続けてテリー氏は語る。この日焼け止めの広告は、KFC同様にワイデン・アンド・ケネディ(Wieden and Kennedy)のクライアントで、男性用化粧品を手がけるオールド・スパイス(Old Spice)が使ったのと同じ手法を利用したものだ。「不適切で型破りだが、人々は見かけたときに笑ってしまうような広告を見るのが大好きだ。このようなタイプの広告は、複数のプラットフォームで成功するように作られている」。

そして、メディアは餌に飛びついた。規模を拡大しなければならないというパブリッシャーに対するプレッシャーがますます強まるなか、BuzzFeedなどのデジタルパブリッシャーが状況を変え、事態は緊急性を増した。また、Facebookが支配的な地位に立っているという状況もあって、メディアもシェアする価値のあるコンテンツを探している。つまり、KFCにとっては楽勝だった。

ほとんどのサイトはシェアの数を公開していないが、ハフィントン・ポストの記事は2200シェアを獲得している。

メディア利用がうまいKFC

KFCには、メディアをうまく活用してきた長い歴史がある。この日焼け止めは、KFCが香港で5月に発表した2種類の食べられるマニキュア(「オリジナル」と「ホット・アンド・スパイシー」の2色)に続くものだ。ただし、これらのマニキュアは一般には販売されず、BBCと「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」のオフィスに届けられただけだった。「Google News」でこの記事を検索すると、300を超える検索結果が表示される。

また、フライドチキンの形をしたキーボードとマウスが日本で発表されている。ただし、これも非売品だった。

ワイデン・アンド・ケネディがこの日焼け止めのために制作したレトロな雰囲気のインフォマーシャル動画は、22日にYouTubeに投稿されて以来20万ビューを獲得。KFCのFacebookページでは5万1000ビューを獲得している。

そして、この記事が公開されれば、この話題を扱ったメディアのリストにもう1つのパブリッシャーが加わるというわけだ。なんとも皮肉なことだが。

Grace Caffyn(原文 / 訳:ガリレオ)