広告主が「働き方」改革に着手、JAAが「行動指針」を発表:依頼業務の適正化をめざす

世論の流れには、広告主といえども逆らえない。

公益社団法人日本アドバタイザーズ協会(以下、JAA)は18日、2017年度の事業説明会を開催。同協会の伊藤雅俊理事長(味の素株式会社 代表取締役 取締役会長)らが、本年度に予定されている取り組みについて説明を行った。

今回提示された主なトピックは、1.デジタルの取り組み 2.働き方改善 3.グローバル視点の強化の3点。特に注目は、昨年12月にJAA内で発足した、働き方改善プロジェクトだ。昨今、いたるところで話題になるワークライフバランス、そして政府や経団連が主導するプレミアムフライデーなどの動きを受けて、発注者側からの解決のアプローチが示された。

この事業説明会に合わせてJAAは、「働き方改善へ向けたアドバタイザーの行動指針」を発表。広告会社や製作会社を「イコールパートナー」と表現し、「広告業務に携わる様々な人が健康に働ける環境づくり」に取り組んでいくと宣言している。

「お互いに同じステージで」

「これまでは、取引先とは、こちらが依頼主・お得意先という関係で、お互いに相容れる環境がなかった。それが書面などで、さまざまなご意見をもらえるようになっている」と、JAAの働き方改善プロジェクトのリーダー、名久井貴信氏(味の素株式会社 広告部 兼 グローバルコミュニケーション部 クリエーティブ統括部長)は説明する。「そうした関係を継続させて、お互いに同じステージで話し合えるようにしたい」。

また、同資料においてJAAは、具体的な働き方の改善策として「標準的な契約書・オリエンシートの策定による、依頼業務の適正化」を行うとし、「適切な業務日程の確保、作業着手後の頻繁な変更の撲滅」に務めると明示した。その項目について名久井氏は、「今後、各業界団体と協働し、本来あるべき業務プロセスの適切な日程などをまとめていく」と、補足する。

なお、ここにおける広告とは、マスおよびデジタルを含む、すべての広告のことを指す。だが、名久井氏は「デジタルにおいては、別の問題も積み残しとして存在する」という。「別の問題」については、この場で明らかにされなかったが、おそらく取り引きの適正化および透明化のことだろう。

問題視される業界の働き方

ちなみに、JAAは明確に関連付けていなかったが、こうした取り組みの背景には、昨年9月に過労死認定された電通のインターネット広告担当社員の存在が挙げられる。同社はその後、残業抑制策として22時消灯を実施。さらに、その過労死した社員の上司が労働基準法違反の容疑で書類送検された責任を取り、当時の石井直社長が辞任することになった。

1月に新任した電通の山本敏博社長は、「不適切な労務管理の根絶」を優先課題に掲げる。朝日新聞のインタビューには、「使命は働き方改革の断行だ。2年でやるのが私の責任。やれなければ会社(の存続)自体難しい」と語っていた。

また、電通は昨年9月、デジタル上の運用型広告において「不適切」な業務が行われていたことを明らかにし、大きな話題となった。急成長を遂げていながら、人手不足であるこの分野は、常に働き方の問題がつきまとう。事実、2016年にはじめて1兆円を越し、1兆378億円となった日本のインターネット広告媒体費のうち、7383億円は運用型広告費だ。その額は、インターネット広告媒体費全体のおよそ71%を占める。

Written by 長田真
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