プログラマティックチームの内製化、人材探しに右往左往:「考えて動ける人を見つけるのが難しい」

ロサンゼルスを拠点とするチケット販売会社、チケットマスター(Ticketmaster)でデジタルメディアおよびプログラマティックメディア担当のディレクターを務めるゴシャ・カチュア氏。プログラマティックの社内チームを構築するにあたってトレーディングの責任者を雇おうとしたところ、同地域では適切な候補者が見つからず、結果、ほかの都市、さらには海外でも探すことになった。最終的にはロンドンで見つかり、ロサンゼルスへの引っ越しを手伝ったが、採用までに約3カ月を要したという。

人材確保が難航する理由

「ロサンゼルスは米国で2番目の大都市だが、それでもここでは同等の能力のある人材を見つけることはできなかった」と、カチュア氏は述べる。最終的な候補者は、以前にチケットマスターの得意先としてエージェンシーで働いていた人物で、スピードの速いダイレクトレスポンスのキャンペーンを管理した経験がある人材だと、同氏は説明した。何の準備もなしに、この業界に入ってきたら、かなりのペースでさまざまなことを学ばなければならなかったという。

カチュア氏のこのようなリソース確保に関する体験は、データ管理プラットフォーム(以下DMP)とデマンドサイドプラットフォーム(以下DSP)の内製化や、戦略から実行まですべてを内製化しようと、アドテクノロジーに大きな投資をしたことがあるブランドではよくあることだ。そのような企業は、プログラマティックを本当に理解していて、かつメディアプランニング分野で幅広い経験のあるアドテク人材を見つけるのに苦労することになる。

企業によっては、社内問題が課題となる場合もある。消費者向けパッケージ製品の大手企業に勤める匿名のメディア責任者は、プログラマティックの統合をうまく進めるのは、会社が小さいほど容易かもしれないという。この責任者が働いているような巨大複合企業だと、説得して引き込まなければいけない人数があまりに多く、既存のメディア戦略を変えるのに何年もかかることになるからだ。加えて、プログラマティックの専門家は現在、働き口の選択肢が多く、需要と供給のバランスが少し崩れていると、この人物は語る。

「考えて動ける人」が少ない

一方で、課題はむしろ、職務を遂行する人材の枯渇という企業もある。チケットマスターのカチュア氏は、DMPやDSPの使い方を知っている「動ける人」を見つけるのは難しくないと考えていた。何しろ、プログラマティックは大規模に導入されて4~6年経っているからだ。しかし、全体を考えられ、さまざまなマーケティング戦略のニュアンスを把握している「考えて動ける人」となると、見つけるのは難しい。

カチュア氏は、「プログラマティック畑にいる人材の多くは、サイロ化された環境に閉じ込められており、全体的なメディア戦略を効果的に構築する方法を教えられていない。メディアエージェンシーの人が通常かかわるような、クロスチャネルのメディア計画や売り込みを経験したことがないのだ」と説明した。

戦略的に考えられる、会社のプログラマティックを率いる適任者が見つかれば、あとはおのずと解決するとカチュア氏は語った。ソフトウェアの使い方の訓練や会社の方針の教育はすぐに可能だという。

地理的な条件も問題になる

もうひとつの障害は居住地。アドテクは人材がニューヨーク、ロンドン、シカゴに集中しており、そのため、チケットマスターのような西海岸地域のブランドは地元で人材を見つけるのが難しいことがある。

メディアエージェンシーのグッドウェイグループ(Goodway Group)で最高執行責任者(COO)を務めるジェイ・フリードマン氏はこの意見に同意し、ブランドがダラスやアトランタにある場合、プログラマティックを責任者レベルで担当できる人材は市内全体でもおそらく3~5人しか見つけられないだろうと述べた。そのため、プログラマティックのキャンペーンを実施でき、同時に従来のメディアプランニングの仕組みを把握している人を探すとなると、想定していた額をはるかに超える給与を求めてくるという。

「それに、エージェンシーで働いていればアドテクの人々に囲まれ、知識を広げられるのに対し、ブランドで働くことになるとひとりになってしまう可能性が高い」とフリードマン氏。

クライアント側の仕事の魅力

しかし、クライアント側の仕事に魅力がないというわけではない。エージェンシーの元幹部で、現在はプログラマティックのコンサルタントとして独立しているタイラー・パイツ氏は、ブランドがニューヨーク、サンフランシスコ、シカゴ、ロサンゼルスのような「中核ハブ」から人材に来てもらうのは難しいと考える。

その一方で、任される責任も大きくなるという。また「時代遅れのエージェンシーモデルや競合する利害」に縛られることが少なくなることを理由に、もし自分だったら、そうした転職を受け入れる可能性はあると述べた。

パイツ氏は次のように述べている。「私なら新しい場所に移ることもいとわないが、もちろんそれは条件次第だ。私なら、会社の人と組織そのものをもっとも重視する。自律的な決定を迅速に行える会社なのか。また、変わる準備ができているのかだ」。

Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Getty Images