広告分野に急襲を仕掛ける、ウォルマートの内情

ウォルマート(Walmart)は、メディアプラットフォームとして自身の立ち位置を確立することで、広告ビジネスで成功しようと躍起になっている。ウォルマートの売りは顧客のトランザクションデータを制御していることであり、ブランドはこれによってターゲティングをWalmart.com以外の場所でも行えると、この件に通じた人物は語る。

ここで売り込まれている、ほかと大きく違う要素は、ウォルマートの実在する店舗だ。オフラインとオンラインを繋ぐことができるという、リテールメディアとの大きな約束を実現している。そして、ウォルマートは熱心にそれに取り組んでおり、Amazonとの差別化において、スケールのコンビネーションやオフラインの顧客データがあることを声高に主張。それを実践するため、ブランドやエージェンシー向けに開催している勉強会やサミットなどでも、多くの取引先と会合を行なっている。

証券取引委員会への申告内容によると、ウォルマートは5000以上の店舗を保有しており、第2四半期のeコマースの成長率は対前年比で50%を超えている。オンラインの売上は年商4860億ドル(約55兆円)のごく一部ではあるものの、Jet.comやボノボス(Bonobos)、ムースジョー(Moosejaw)やモッドクローズ(ModCloth)といったeコマースサイトを買収したことでウォルマートは、広告分野での勢力を一層強めて行くだろうと広告バイヤーたちは語る。

小売での購入は多くの場合オンラインでの検索からはじまる。そして、ウォルマートがより多くの検索(クエリ)を得ることができれば、非常に貴重なサーチトラフィックを牛耳ることができるのだ。「Walmart.comがバックエンドでJet.comとともに広告プラットフォームをもう一度立ち上げることができれば、それは大きな力となり、いくらか余裕もできるだろう」と、あるバイヤーは予測している。

ウォルマートは、この件に関するコメントの依頼に答えてはくれなかった。

バイヤーたちの反応

ウォルマート・エクスチェンジは、実店舗での販売データを統合したプログラマティックなインフラを利用しており、取引はプライベートなマーケットプレイスとアドエクスチェンジを通じて行われる。小売店は、デスクトップやモバイル、そしてタブレット上でのディスプレイメディア、そしてさらに買物中に表示されるネイティブ広告を提供している。

それに加えて、ウォルマートの提携ブランドの広告を通じた「オーディエンス拡張」と連動させた、昔ながらの広告連動型検索や商品リスティング広告を使うことも可能だ。つまり、ブランドはWalmart.com上、およびオフラインでの広告を通じて、買い物客の行動をターゲティングすることが可能となるのだ(Amazonは「オーディエンスマッチ」という同様のプログラムを7月に提供し始めている)。

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ウォルマートのアドプラットフォームへの反応はさまざまだ。あるバイヤーはROIが横ばい、または減少傾向にあり、バックエンドは洗練さを欠いたままだという。また、いくらか効果的ではあったというバイヤーもいる。だが、広告を効果的にするためには、たとえば棚スペースといった何か別の件について話し合う必要があると、ウォルマートからはブランドにさりげなく伝えられているようだ。

エージェンシーのトップによると、ウォルマートはバイヤーやブランド向けのトレーニングに代わる、招待客限定のサミットを開催しているという。ブランドやエージェンシーなどのパートナーは、「WMXサミット」と呼ばれるこうしたサミットに招待されるが、そこではウォルマートの広告担当の重役が新しいツールを紹介する。また、卸売商も経営者や重役向けのセッションを開催しており、集まった人々は商品ラインナップの変更やバックエンドのツール、そして広告について話し合っている。

残された大きな疑問

「この関係性を最大限に活用できていることを確信するためには、ものすごく積極的でいなければならない」と、ショッパーマーケティング・エージェンシーのカタパルト(Catapult)のバイスプレジント兼シニア・グループディレクターのハイジ・フロセス氏は語る。

バイヤーたちによると、そのプラットフォームの売り込みをウォルマートが直接かけてくることはないという。それを担当しているのはイギリスの広告代理店最大手、WPPグループの一部であるトライアドリテールメディア(Triad Retail Media)。ウォルマートとサムズクラブ(Sam’s Club)の広告販売や製品プロモーションを運用し、ウォルマートの卸売業者とのあいだで行われる、すべての商品資産の取引を管理している。

フロセス氏によれば、大きな疑問は、次の動きを決定するうえで、バイヤーとブランドはどのようにウォルマートと交渉しているかだという。「これは契約の一部に含まれている。自分たちの分野で成長するための手法や、パートナーシップを結んで何を得ることができるかということを知るうえでは、誰もが独自のやり方を見出す必要がある」と、彼女は語る。「eコマースであれ実店舗であれ、顧客のトラフィックがどこに存在しているかを把握することだ。そのデータを手にしたあとは、広告の活用方法を見つけ出すのだ」。

足並み揃える競合たち

ウォルマートが躍起になって立ち上げようとしているような小売メディアは、2016年から頭角を表してきている。ウォルマート以外では、Amazonのような大企業はもちろん、クロガー(Kroger)やノードストローム(NordStrom)のような企業も小売メディアに参入している。オーバーストック(Overstock)のような、Amazonやウォルマートの影に隠れてしまうような企業もメディアを立ちあげ、それを利益率の高いシステムだと認めている。その売り込みの内容は似ており、ブランドは人々が何を検索して何を購入しているかを知ることができる。つまり、このアドプラットフォームは、より洗練されたターゲティングとアナリシスを提供できるのだ。

「あらゆる小売業者がベンダーマーケティングのプラットフォームを構築している」と、小売業者の手助けを行う企業のスポットフロント(Spotfront)の創設者のアレックス・シャーマン氏は語る。同氏は、ウォルマートをクライアントとしては考えておらず、課題は、ウォルマートとどのように差別化するかを見極めることだという。「日用品のアドネットワークから、顧客も広告主も利益を得ることができるプレミアムなチャンネルにシフトすることだ」。

Shareen Pathak(原文/訳:Conyac