プログラマティックの内製化に成功したスタブハブの事例:「我々は少数派だ」

英最大手エージェンシー、WPPのCEO、マーチン・ソレル氏を含む広告業界の著名な役員たちの多くは、ブランドが社内にプログラマティックバイイングを導入することは一時的な流行と考えている。しかし、米大手チケット売買サイトを運営する、スタブハブ(StubHub)は違う。まだまだ現場主義を貫き通す腹積もりのようだ。

2016年3月第2週、同社のペイドメディア部門を統括するリー・エンゲル氏は、米DIGIDAYの取材に対し、プログラマティックを社内に導入することによってチケット市場に関する機密データを保護しつつ、有効活用することができるようになったと話している。また、エージェンシー費用も削減することができ、ビジネスチャンスをリアルタイムに捉えられるようにもなったと語っている。

「我々は毎秒1枚のチケットを販売している。すべてがもの凄いスピードで動いている」と、エンゲル氏。「もしどこかのエージェンシーにプログラマティックを依頼するならば、電話してスケジュール調整をしてもらっている段階ですでにビジネスチャンスを逃している」。

独自技術を磨いてきた

エネゲル氏は、独自のプログラマティック技術を開発するため、2012年にスタブハブへ入社。それ以来、同社業務の運営効率を上げている。

例として、スタブハブのWebサイトに何かのイベント情報が掲載されたとしよう。すると、それに関連性の高いディスプレイ広告が同時に表示されるのだが、ここで独自プログラマティックが活きてくる。ユーザーがサイトで最後に閲覧したイベントの情報をもとに、プログラマティックがオススメのイベントを表示してくれるのだ。

「これは新しいリターゲティング技術だ。過去4年間、さまざまなテクノロジーを使用して、我々は自らのデジタルマーケティング技術を磨き続けてきた。パフォーマンスを極限まで高め、ビジネスを向上させるためだ」と、エンゲル氏は付け加えている。

内製化は向き不向きがある

もちろん、すべての企業がプログラマティックバイイングを社内に導入するべきだということではない。スタブハブは電子取引を行っているため、それに要する膨大な情報量をすでに所有している。さらには、「非常に俊敏」でなくてはならず、意思決定も素早く下す必要があった。同社にとっては、プログラマティックを社内に導入する方が適していたのだ。

仮に、eコマースは行っていないほかの企業が、エージェンシーと契約せずにプログラマティックに手を出すとしよう。すぐに、さまざまな難問が生じ、プログラマティックに投資した意味がなくなってしまうはずだ。

「我々はおそらく少数派だ。プログラマティックを社内に導入する方が適切な企業もあるが、多くの企業にはそれは当てはまらない」という。「そもそも、専門家や経験のあるスタッフを雇わなければならないので、導入するのも簡単ではない」と、エンゲル氏は指摘する。

重要なのはバランス

現在、エンゲル氏のチームはGoogleが運営しているDSP「ダブルクリック・ビッド・マネジャー(DoubleClick Bid Manager)」と、DMP「ダブルクリック・オーディエンス・センター(DoubleClick Audience Center)」のみを使用しているが、これからはさまざまなプログラマティックツールを試していくという。

多くの課題はあるが、エンゲル氏はプログラマティックの外部委託をまったく考えていない。それどころか、データ、技術やオートメーション、さらにはスポーツ、コンサートやエンターテインメントに情熱をもつプログラマティックの専門家を常に探している。

「近い将来にエージェンシーとプログラマティックに関して共同作業をするつもりはないが、絶対ないとはいえない」と、エンゲル氏。「重要なのはバランスだ。エージェンシーには一緒に働きたいと思う専門家たちが大勢いる。現在は、エージェンシーとは、プログラマティック以外の仕事で協働している」。

Yuyu Chen(原文 / 訳:BIG ROMAN)
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